文化

2014.07.10

他の言語で読む
近現代の西洋美術史に大きな影響を与えた作家らの作品を鑑賞できる2つの展示が、芸術の殿堂のハンガラム美術館で開かれている。ノルウェーを代表する画家、エドヴァルド・ムンク(Edvard Munch、1863~1944)の回顧展と、印象主義から新現実主義(ヌーヴォー・レアリスム)までの作品を網羅した展示「20世紀、偉大な画家たち」は、19世紀末から現代に至るまでの美術思潮を理解するのに役立つはずだ。

展示「エドヴァルド・ムンク‐霊魂の詩」は、韓国で開かれる最初の回顧展だ。表現主義美術の先駆者、ムンクの秀作を集めた今回の展示では、傑作「叫び(The Scream)」や石版画のほか、「生命のダンス(The Dance of Life)」や「マドンナ」「接吻(The Kiss)」など計99の作品が公開される。

10月12日まで開かれる今回の展示では、世界中に5点しか残っていない石版画の「叫び」の1つが展示されている。原作カラーは、盗難されて取り戻されたため、搬出することができない。太い線で表現された空の下、橋の上で空気の抜けた風船のような顔をした男が悲鳴をあげる「叫び」のイメージは、不安な現代の象徴とされてきた。

이번 전시회에 소개된 '절규'의 석판화 버전 (사진: 예술의전당)

今回の展示会で紹介されている石版画の「叫び」(写真提供:芸術の殿堂)



石版画の「叫び」の他にも、多くの秀作が紹介されている。連作「生のフリーズ」は、ムンクが1890年代に制作した絵画で、愛や不安、死といった人間の根本的かつ実存的な経験が表現されている。「叫び」や「接吻」「吸血鬼」「生命のダンス」といった作品だ。

赤だらけの3セクションの大作「生命のダンス」は、ムンクの代表作で、不安な愛がテーマだ。一緒に踊ろうという男性の誘いを拒む赤いドレスの女性と、そのドレスに絡みついた男(ムンク)の姿が、月の光の下で踊る人々とのコントラストを描いている。繊細で気弱な性格で、ずっと女性に警戒され、恐がられていたムンクの内面がよく表現されている。連作「接吻」では、憂鬱な色調の中に欲望が見え隠れする油絵の「接吻」と木版画の「接吻」の素朴さが対照的だ。

憂鬱な雰囲気の作品だけではない。「太陽(The Sun)」は、ムンクの後期の作品の一つで、生命力に満ちあふれている。まぶしい色彩とダイナミックな構成から活力とエネルギーが感じられる。最後のセッションの代表作「星の輝く夜(Starry Night)」は、寂しさの中に叙情的な美しさが感じられる作品で、ゴッホの作品を髣髴させる。

munk-140710-2.jpg
munk-140710-3.jpg
munk-140710-4.jpg
(맨 위부터) '절규', '마돈나', '별이 빛나는 밤', '키스' (사진: 예술의전당)

(上から)「生命のダンス」「マドンナ」「星の輝く夜」「接吻」(写真提供:芸術の殿堂)



絵画だけでなく版画分野の先駆者でもあるムンクは、多くの作品を制作し、油絵1100点や版画1万8千点、ドローイング・水彩画4500点などが現在も残っている。暗い雰囲気の作品が多かったムンクは、母親と姉を結核で失い、精神疾患を患ったことから、沈鬱な作家といわれてきた。しかし、ムンク美術館の首席キュレーターのヨン・ウヴェ・ステイハウグ(Jon Ove Steihaug)氏は、「多くの人は、ムンクといえば“叫び”を思い浮かべ、彼は暗いテーマしか描かなかったと思っているが、彼は単に暗い面ばかりを追求したかったのではなく、人間の根本的な感情を表現したかったのだ。ムンクの作品の特徴は、形容しがたい人間の気分、感覚、感情を凝縮して表現したもの」と語る。 展示「エドヴァルド・ムンク‐霊魂の詩」の入場料は、成人1万5千ウォン、子ども1万ウォン。

芸術の殿堂で同時に開かれている展示「20世紀、偉大な画家たち」は、19世紀末のルノワールから同時代の作家ダミアン・ハーストまで、西洋の近現代の美術思潮が一目でわかる。印象主義や野獣主義、立体主義、超現実主義などの作家53人による104点の作品が展示されている。

今回の展示は、一般の人にも馴染みの印象主義から始まる。ひっそりと雪に覆われた風景を描いたモネの「リメの雪景色」では、生きた筆遣いと美しい色彩を鑑賞できる。立体主義を代表するピカソの「松のある風景(Pinewood Landscape)」やシャガールの「画家の周辺(Around the Painter)」などは、強烈な色彩の解放とともに野獣主義と立体主義の芽生えを告げている。

無意識の探検を視覚化した超現実主義の巨匠、サルバドール・ダリの彫刻「勝利の象(Triumphant Elephant)」、ジョアン・ミロの「女(Woman)」も展示されている。これらの作品では、現実とはかけ離れた何かを追い求める努力が抽象的に受け継がれる過程を垣間見ることができる。他にも、米国で花咲いた現代美術の巨匠、ロイ・リキテンシュタインの「ピカソと静物画(Still Life with Picasso)」やアンディ・ウォーホルのポップアート作品「ミセスKの肖像(Portrait of Mrs. K)」なども展示されている。

munk-140710-6.jpg
munk-140710-7.jpg
munk-140710-8.jpg
(맨 위부터) 모네의 '지베르니에서 스케이트를 타는 사람들'(Ice Skaters in Giverny), 샤갈의 '화가의 주변', 로이 리히텐슈타인의 '피카소와 정물화', 데미안 허스트의 '해골'(Skull Spin Painting) (사진: 예술의전당)

(上から)モネの「ジヴェルニーでスケートに乗る人々(Ice Skaters in Giverny)」、シャガールの「画家の周辺」、ロイ・リキテンシュタインの「ピカソの静物画」、ダミアン・ハーストの「骸骨(Skull Spin Painting)」(写真提供:芸術の殿堂)



「骸骨シリーズ」で知られるダミアン・ハーストを抜きにしては現代美術は語れない。彼がキャンバスに絵の具をつけ、素早く回転させて偶然の効果を生かす「スピン・ペインティング」で完成させた「骸骨」が展示されている。英国生まれで、本名を隠したまま世界各国の路地と壁に絵を描くストリート・アーティスト、バンクシーの作品も鑑賞できる。展示「20世紀、偉大な画家たち」は9月17日まで開かれる。入場料は、子ども1万ウォン、成人1万3千ウォン。

両展示に関する詳細は、芸術の殿堂(02- 580-1300、www.sac.or.kr)までお問い合わせください。

コリアネット イム・ジェオン記者
jun2@korea.kr