文化

2014.09.11

9月は見どころ満載の月だ。韓国では今、全国で美術の祭典が相次いで開かれている。1万点に上るインスタレーションやメディアアートといった作品が光州、ソウル、釜山で公開される9月は、美術愛好家や市民にとって忙しい月になりそうだ。

「土地を燃やせ(Burning down the house)」のテーマの下、5日に幕を開けた第10回光州ビエンナーレは、英ロンドンの近代美術館「テート・モダン」のキュレーター、ジェシカ・モーガン(Jessica Morgan)氏が総監督を務めた。このテーマは1980年代のニューヨーク出身のパンクロックバンド「トーキング・ヘッズ(Talking Heads)」の曲にちなんだもので、「土地」は既成制度や古い習慣などを指す。モーガン監督は、「韓国は急成長する過程で多くのものを失った。土地を燃やすのは、新しいものを構築するための行為だ。物質が燃えてしまえば、他のものに変化する」と説明する。

今回のビエンナーレには38カ国の映画監督や舞踊家、デザイナー、公演芸術家ら103チームが制作した約200点が展示される。どの作品もビエンナーレのテーマに相応しく挑発的だ。光州ビエンナーレ展示館の正面に飾られた絵画「無題」は、英国人作家のジェレミー・デラー(Jeremy Deller)氏の作品で、燃える展示館から今にもタコが飛び出してきそうだ。米国人作家で夫婦のエドワード・キーエンホルツ(Edward Kienholz)氏とナンシー・レディン・キーエンホルツ(Nancy Reddin Kienholz)氏の作品「オジマンディアス・パレード(Ozymandia Parade)」は、政治的扇動と恐怖が戯画化され、既成権力が風刺されている。「オジマンディアス」は、古代ギリシャの王ラムセス2世の名で、絶対権力を象徴している。

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(위) 광주비엔날레 전시관 전면에 그려진 제러미 델러의 '무제'. (아래) 에드워드 키엔홀츠와 낸시 레딘 키엔홀츠의 작품 '오지만디아스 퍼레이드' (사진: 광주비엔날레)

(上)光州ビエンナーレ展示館の正面に飾られたデラー氏の絵画「無題」 (下)エドワード・キーエンホルツ氏とナンシー・レディン・キエンホルツ氏の作品「オジマンディアス・パレード」(写真提供:光州ビエンナーレ)



スイス生まれのウルス・フィッシャー(Urls Fischer)氏の「38E.1st ST」は、自身が住むニューヨークのマンションが実物大に制作された作品だ。家の中に入るように、作品の内部に足を踏み入れると、ポップアーティストのジョージ・コンドー(George Condo)氏ら作家7人の作品に出会える。グアテマラのナウフス・ラミレス‐フィグエロア(Naufus Ramirez-Figueroa)氏の「エレンディラのための小物(Props for Erendira)」は、コロンビア人作家のガブリエル・ガルシア・マルケス(Gabriel Garcia Marquez)氏の小説のタイトルだ。小説の主人公の10代の少女は、間違って祖母の家を燃やしてしまい、失われた財産を弁償するために娼婦となる。

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(위) 우르스 피셔의 '38E. 1st ST'. (아래) 나우푸스 라미레스 피구에로아의 '에렌디라를 위한 소품' (사진: 광주비엔날레)

(上)フィッシャー氏の「38E. 1st ST」 (下)フィグエロア氏の「エレンディラのための小物」(写真提供:光州ビエンナーレ)


光州ビエンナーレは、本展示館や光州市立美術館などで11月9日まで開かれる。入場料は大人1万4千ウォン。詳細は、電話(062-608-4114)、またはホームページ(www.gwangjubiennale.org/eng/)までお問い合わせください。

2年に一度開かれる第8回メディアシティ・ソウルもソウル市立美術館で開催中だ。「お化け、スパイ、老婆」のテーマの下、9月1日に幕を開けたこの催しは、メディアアーティストのパク・チャンギョン氏が総監督を務めた。お化けは忘れられたアジアの歴史と伝統を、スパイは冷戦の記憶を、老婆は家父長制社会を経験した女性を象徴する。

パク監督は、「お化け、スパイ、老婆」の共通点として、「はっきりとは見えないが、見えれば驚くべき二重的存在であると同時に魅惑とタブーの対象」と語る。

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(위) 지난 1일 서울시립미술관에서 개막된 ‘2014 미디어시티서울’에서 열린 굿판. (아래) 일본작가 다무라 유이치로(田村 友 一郎) 의 ‘세와료리스즈키보초’(世話料理鱸包丁)

(上)9月1日にソウル市立美術館で幕を開けた「2014メディアシティ・ソウル」で開かれたグッパン (下)日本人作家の田村友一郎氏の作品「世話料理鱸包丁」


今回の展示会は、植民統治期の経験というアジアの歴史がテーマだ。日本人作家の田村友一郎氏は、20世紀初頭の法廷を再現した。展示会場のソウル市立美術館は、1928年に朝鮮総督府が建てた高等裁判所があった場所だ。田村氏は、「ある事件が起きれば、民衆はそれを素材に風刺的演劇をつくる。それは、人生を受け継ぐ一つの技術、克服していく過程だと思う。日韓関係も同様ではないだろうか」と説明する。

作家のチェ・ウォンジュン氏の映像作品「万寿台マスタークラス」は、北朝鮮の万寿台創作社が制作した体制宣伝用のポスターや冊子、記念品、アフリカ諸国に建てた大型の銅像と記念碑などをビデオと資料で公開する。今年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で黄金獅子賞を受賞した韓国館の展示で一部公開された作品だ。ヤン・ヘギュ氏の「音の出る彫刻」は、巫女が振る鈴を連想させる金属の鈴や風を起こす扇風機などが金属で制作されている。この作品は、視覚だけでなく触覚と聴覚も刺激する。

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(위) 최원준의 ‘만수대 마스터클래스’. (아래) 양혜규의 ‘소리 나는 조각’ (사진: 서울시립미술관)

(上)チェ・ウォンジュン氏の「万寿台マスタークラス」 (下)ヤン・ヘギュ氏の「音の出る彫刻」(写真提供:ソウル市立美術館)



メディアシティ・ソウルは、11月23日までソウル市立美術館で開かれる。観覧は無料。詳細は電話(02‐2124-8988)、またはホームページ(http://mediacityseoul.kr/2014/en/)までお問い合わせください。

一方、「社会の中に住む」のテーマの下、9月20日から「2014釜山ビエンナーレ」が釜山市立美術館や釜山文化会館などで開かれる。今年の催しでは、不安定な世界の中で芸術の機能と役割を提示する本展示とともに特別展が開かれる。30の国の作家約160人(チーム)が約380点の作品を出展する。

釜山市立美術館で開かれる本展示には、キム・スジャ氏(韓国)、塩田千春氏(日本)、ファブリス・イベール(Fabrice Hyber、フランス)、アニッシュ・カプーア氏(インド)らの作品が公開される予定だ。塩田氏は「赤い線(Accumulation-Searching for Destination)」で数年間にわたって歴史の中で取り上げられてきた戦争を表現し、カプーア氏は「Untitled」で人間と宇宙の関係を究明した。

特別展では、韓国現代美術の歴史と流れが一目でわかる「ビエンナーレ・アーカイブ展」とアジアの海洋都市で活動する若手キュレーター4人が企画した「アジアン・キュレートリアル展」が開かれる。

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(위) 아니쉬 카푸어의 ‘무제’, (아래) 시오타 지하루의 ‘운명을 찾아서’ (사진: 부산비엔날레)

(上)カプーア氏の作品「無題」 (下)塩田氏の「赤い線」(写真提供:釜山ビエンナーレ)



釜山ビエンナーレは11月22日まで64日間にわたって開かれる。入場料は1万ウォン。詳細は、電話(051-503-6111)、またはホームページ(www.busanbiennale.org/english/main/index.php)までお問い合わせください。

コリアネット イム・ジェオン記者
jun2@korea.kr