この日、映画館で出会った人々に話を聞いてみた。
中高生の子どもを持つ主婦で小学校でミュージカルを指導するイ・ソヒさんは、「最近、地元にできた映画館のおかげで気軽に家族連れで映画を見ることができるようになった。扶安郡からシネマコンプレックスのある全州市や益山市まで行って映画を鑑賞するには、家族全員が都合を合わせて往復5時間以上かけなければならず、かなりの決断が必要だった。でもこれからは上映時間5分前に家を出ればよく、平日でも夕方であれば映画を鑑賞できる」と満足感を示した。
前職校長のチョ・ゴンギュさんは、「夫婦水入らずで、または近所の知り合いと映画を鑑賞することで、会話がはずむようになった。これまでは映画を見ようと思ったら映画館までの距離や駐車といった問題があったが、今後はそんなことを考える必要がなく、とても嬉しい」と話す。
地元住民は、何よりも日常の会話が途絶えていた家族間に、映画を通じて共通の話の種ができるようになったとと期待している。
イさんは、「若い頃は時間をかけて友人たちと一緒に大きな街まで映画を見に行くことのできなかった主婦にとって、これからは5分もあれば地元で仲間同士集まって文化生活を享受できる施設ができた。なかなか会う機会のなかった同級生たちと一緒に映画を鑑賞し、コーヒーを飲みながら日常について語り合えるのでとても嬉しい」と話す。
「小さな映画館」支援事業を主管する文化体育観光省文化コンテンツ産業室でコンテンツ政策官を務めるパク・ヨング氏は、「映画館のない地域に最新施設を備えた小規模映画館の建設を支援することで、地元住民が文化に触れ、文化を享受できる機会が増えると期待している。条件を備えた地方自治体の“小さな映画館”の建設を積極的に支援したい」と述べている。
「小さな映画館」支援事業とは?
デジタル技術の発達に伴い、映画も急速に発展している。しかし、地方の小都市と大都市では文化格差がさらに拡大している。地方の小都市は公演や展示など文化を享受できる機会が少ない。特に映画館がなく、住民が集まって映画を鑑賞できる施設は稀だ。
文化体育観光省は、都市と地方の文化格差の解消に向け、地域の「小さな図書館」の設置を支援している。「小さな図書館」は、2010年10月に全羅北道長水郡を皮切りに、昨年は全羅北道金堤市と任実郡に、今年は高敞郡や茂朱郡、扶安郡、江原道洪川郡などに相次いで設置された。
今年は、政府が支援する10カ所と地方自治体自ら推進する12カ所の計22カ所で「小さな図書館」がオープン・運営される予定だ。また、2015年には9カ所が政府の支援を受けてオープンする予定だ。さらに、まだ映画館のない基礎自治体98カ所を対象に、段階的に「小さな図書館」を拡大させていく計画だ。
地方自治体が敷地と総事業費の50%以上の財源を確保すれば、国庫補助が受けられる。具体的には、建物のリフォーム費や映写機といった装備の購入費などが支援され、運営費は映画館の入場料収益から当てられる。地方自治体は、賃貸料や電気料などを支援または免除することができ、企業の後援を受けることもできる。現在は地方自治体直営、民間委託、社会的企業の非営利協同組合の形で運営されている。
記事‐コリアネット ペク・ヒョン記者
写真‐コリアネット チョン・ハン記者
cathy@korea.kr