北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と文在寅大統領(右)=27日、板門店、南北首脳会談準備委員会
[和田崇(日本)]
きっと私たちが学んできた歴史の転換点とは、その時々に一瞬で決断された結果なのだろう。「2018南北首脳会談」を前に加速度を増す韓国と北朝鮮を巡る状況の変化に、そう実感させられる日々が続いている。
先頭に立って南北首脳会談を主導しようとする金正恩・朝鮮労働党委員長は、会談を前に核実験場の廃棄を宣言した。ほんの数カ月前まで、世界の批判をよそに核実験を強行し、核兵器を搭載できる大陸間弾道ミサイルの完成を主張していたにも関わらず、金正恩委員長の変わり身の早さは周囲の予想をはるかに上回り、これまでの2度の南北首脳会談と比べて、その過程も驚くべきスピードで進んでいる。突然朝鮮半島を飛び立ったジェット機は、ともに操縦桿を握る文在寅・韓国大統領と金正恩委員長により猛スピードで飛行を始めた。ただ、向かう先は誰にも分からない。「平和」という名の空港に無事着陸できるのか、はたまた燃料が切れるまで飛び続けなければならないのか。積み込んだ燃料には限りがある。2人の操縦士には、歴史の転換点となる「一瞬の決断」を願っている。
「アジアの導火線」と呼ばれた朝鮮半島の平和の実現は、韓国、北朝鮮両国のみならず、日本を含むアジア、さらには世界にとっても悲願である。そのための第一歩となる今回の南北首脳会談は、世界に大きな期待を抱かせている。ただ、私にはそれだけにとどまらない期待感がある。私たち日本人がより朝鮮半島の歴史や文化を知るきっかけになるのでは、と考えているからだ。
かつて日本も、朝鮮半島と同じく民族分断の不幸な歴史をたどるかも知れなかった歴史はあまり知られていない。現実化こそしなかったが、第2次世界大戦後に米国やソ連、中国ら連合国が敗戦国・日本の分断統治を検討したためだ。それ以上に日本では、飛行機でわずか1時間ほどの隣国が現在も休戦状態にあることを知る人も決して多くない。1950年の朝鮮戦争勃発以来、公式的に戦争状態が続いている朝鮮半島の歴史をほとんど理解してないのが実情なのだ。
日本では今もサムスン電子やロッテといった世界的企業の進出にとどまらず、TWICEらKポップ・アイドルが新たな韓流ブームを巻き起こしているが、それは今の韓国文化の一端に触れているだけに過ぎない。
朝鮮半島が分断されるに至った経緯はもちろん、どれだけ日本の歴史に朝鮮半島や韓国という国が深く関わっているのか、私たち日本人はもっと知るべきであり、それは隣国と付き合っていくための最低の礼儀であるはずだ。
今や都会を離れても隣にどんな人が住んでいるかさえ知らず、互いに干渉し合うことを避ける世の中である。その結果、何かトラブルがあればいがみ合いが起こるのは当然だろう。今回は南北首脳会談が成功に終わることを望むことはもちろんだが、日本人が隣人をより深く知る契機になってほしい、と心から願っている。
この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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