美しい自然は人間に限りないインスピレーションの源を与えてきた。時には音楽といった無形のものとして、ときには詩文学や絵画といった有形のもので表現されてきた。新しい形態への熱望と多様な試みは、古代から現代まで引き継がれている。
国立清州博物館は高麗末期から朝鮮時代までに誕生した山水紀行文学と美術作品を集めた特別展「絵画と本で出会う忠清北道の山水」を開き、芸術愛好家らから好評を得ている。忠清北道の美しい景観からインスピレーションを受けて制作された13世紀の高麗時代~19世紀の朝鮮時代の芸術作品75点を総合的に眺望する展示だ。
金弘道の「玉筍峰図」。玉筍峰は忠清北道堤川市にあり、現在も多くの登山客が押し寄せる名所だ(写真提供:国立清州博物館)
忠清北道の「丹陽四郡」と呼ばれ、鬱蒼とした森、奇岩怪石、澄んだ水が調和したとびきりの自然景観を誇っていた堤川、清風、丹陽、永春は、朝鮮時代の数多くの文学と実景山水画の背景となった。当代の芸術家らは、この地域の地理的メリットを生かし、知人たちと船に乗って遊覧しながら玉筍峰や亀潭峰、嶋潭山峰、石門といった奇異な岩山を鑑賞し、風流を楽しみ、自然の中で受けた印象を白紙の上に表現した。
今回の特別展は、彼らの風流の旅を体感できる良い機会だ。展示1部では、忠清北道地域の山水を素材に制作された文学作品が公開される。丹陽を代表する名勝地である玉筍峰や、下に南漢江が流れ、川の向こう側に錦屏山がそびえる清風官衙の楼閣「寒碧楼」などが作品の素材として登場する。13世紀の高麗時代、朱悅は「寒碧楼詩」にその美しさを込め、16世紀の朝鮮時代、丹陽郡守だった「退渓」李滉は、遊覧にピッタリの丹陽の山水を紹介する文を書いた。19世紀に書かれた「秋史」金正喜の「玉筍峰詩」や清風の府使を務めていた「鶴山」尹済弘が書いた『寒碧楼に関する記録』なども展示中だ。
2部は、実際の風景を背景とした山水画が多く描かれた朝鮮18~19世紀にスポットが当てられている。その時代を代表する画家の「謙斎」鄭敾や「毫生館」崔北、「壇園」金弘道、「鶴山」尹済弘らが描いた山水画が展示される。特に、「謙斎」鄭敾が60代のときに制作した「下仙岩図」、 嶋潭三峰を描いた「三嶋潭図」、旧丹陽邑一帯を描いた「鳳棲亭図」には、独自の画法と対象の特徴を逢着する鄭敾の巨匠らしい面貌が垣間見られる。また、「壇園」金弘道が52歳のときに完成させた「玉筍峰図」と「舎人岩図」は、洗練された筆致で思い切って変形・再構成した画風が見られる。
(上から)鄭敾の「嶋潭三峰図」「下仙岩図」「鳳棲亭図」。嶋潭三峰と下仙岩は忠清北道丹陽にあり、鳳棲亭は朝鮮時代の丹陽官衙だった(写真提供:国立清州博物館)
崔北の「丹丘勝遊図」。画家の崔北が嶋潭三峰で舟遊びをする様子を描き、当代最高の名筆「円嶠」李匡師が流浪鑑賞を記念する文を書いた(写真提供:国立清州博物館)
「壇園」金弘道の「舎人岩図」。舎人岩は忠清北道丹陽を代表する景勝地で、巨大な岩が削られ、屏風のような岸壁が形成されている(写真提供:国立清州博物館)
3部は、作家らの新たな構図や新鮮な観点、新しい材料などを駆使して表現された山水画が展示されており、かつてとは違う表現方法を示している。同じ場所を描いた朝鮮と現代の画風を比較・鑑賞する楽しさを味わうことができる。
チョ・ヨンシクの「嶋潭三峰」(2009)。嶋潭三峰の背後に見える風景を多情多感に描いているのが、朝鮮時代の絵画とは異なる特徴だ(写真提供:国立清州博物館)
国立清州博物館の研究員のイ・スギョンさんは、「自然の美を楽しみ、芸術として表現しようという人間の本性に通史的にアプローチした。現代人がスマートフォンで美しい風景を撮影し、オンライン上で共有する文化的現象が、山水紀行文学と実景山水画制作の延長線上にあるのでは」と話している。
特別展「絵画と本で出会う忠清北道の山水」は6月22日まで開かれる。
詳細は国立忠清州博物館のホームページをご覧ください。
http://cheongju.museum.go.kr/v2011 (資料:国立清州博物館)
コリアネット イ・スンア記者
slee27@korea.kr