文化

2024.12.13

女性国劇のワンシーン=3日、ソウル、キム・ソナ撮影

女性国劇のワンシーン=3日、ソウル、キム・ソナ撮影


[ソウル=イ・ギョンミ、キム・ソナ]

「今日、私が見てきたのは別世界だったわ」

生まれて初めて女性国劇を見たジョンニョンは、こう語った。 雷に打たれたみたいに心臓がドキドキしたジョンニョン。舞台の上でパンソリを歌う俳優らに心を奪われ、国劇俳優になることを夢見る。

韓国ドラマ「ジョンニョン:スター誕生」は、1950年代、韓国戦争直後の時代を舞台に、主人公の少女「ジョンニョン」が女性国劇団に入団し、国劇俳優のトップを目指し、スターダムを駆け上がる物語。韓国では、ドラマの人気と共に「女性国劇」が話題となった。これを機に、国家遺産振興院は、韓国の忘れられた芸術に焦点を当てることにした。

3日の夜、ソウル市内の会場で「韓国初の女性オペラ、伝説になった彼女たち」が開かれた。1部では女性国劇のベテラン俳優たちの対談が行われ、2部では実際の女性国劇の公演が披露された。満席の客席が、最近の女性国劇の人気を示していた。

「女性国劇」は、韓国の伝統的な民族音楽劇の一つ。すべての役を女性が演じ、歌・踊り・演技を融合させた総合芸術だ。1948年に初めて登場し、韓国戦争の当時、大衆から大人気を博した。その後、映画やテレビの普及により、衰退していった。

公演は、もともと1回だけの予定であった。しかし、予約開始から約40分で売り切れとなり、追加公演を求める問い合わせが殺到したという。これを受け、追加公演を2回行うことが決まった。

女性国劇には一体どんな魅力があるのだろうか。

対談する女性国劇のベテラン俳優ら=3日、ソウル、イ・ギョンミ撮影

対談する女性国劇のベテラン俳優ら=3日、ソウル、イ・ギョンミ撮影


女性国劇のベテラン俳優で、韓国女性国劇芸術協会の理事長であるホン・ソンドク氏は、「女性国劇は特に男性役が非常に重要だ」とし、「(観客を引き付ける俳優になるためには)歌、踊り、演技だけでなく、男役を上手に演じるような外見も必要」と話した。

女性国劇の男役は、外見や声、そのしぐさまで、まるで本物の男性のようだ。当時の彼女たちは、まさに絶大な人気を誇ったという。男役を担当し、「実際のジョンニョン」とも言われるイ・オクチョン氏は、少女のファンから「会ってほしい」という血書をもらったこともあるという。また、ファンの要請で新郎役を演じ、仮想の結婚式を挙げる俳優もいたそうだ。パンソリ学会のキム・ヘジョン会長は「この頃の推し活は、太刀打ちできないほどだった」と伝えた。

公演終了後、観客に挨拶する俳優ら=3日、ソウル、国家遺産振興院

公演終了後、観客に挨拶する俳優ら=3日、ソウル、国家遺産振興院


この日の公演で主人公を務めたキム・グムミ氏は女性国劇の魅力として、「女性のみ出演する公演であること」「他の韓国の伝統文化とは異なるメイク」「20~30年前に手作業で作られた美しい衣装の保存価値」の3つを挙げた。

また、女主人公役のパク・ジヒョン氏は、「女性国劇が注目を浴び、再び大衆から認められる機会が来たと思う」とし、「公演を実際に見れば、女性国劇の特別さが分かる」と自信を見せた。

女性だけが演じる劇は国劇以外にも日本の宝塚や中国の越劇がある。宝塚と越劇は、それぞれ地方自治体と政府から積極的な支援を受け、伝統を受け継ぎ、現在も進化している。一方、女性国劇の場合、かつての面影はない。

今の女性国劇への関心が一時的なものにならないよう、国家無形文化遺産として指定されるなど、体系的な支援や管理が必要だと、専門家らは口をそろえる。

公演映像は27日、国家遺産振興院YouTubeチャンネルで公開される。

km137426@korea.kr