食・旅行

2026.05.18


[イ・ジヘ]
[写真=イ・ジョンウ]
[映像=パク・デジン]

今年2月の公開以降、累計観客数1672万人を突破し、歴代興行成績2位となった映画『王と生きる男』。映画の大ヒットにより、江原道(カンウォンド)・寧越(ヨンウォル)群は、朝鮮第6代王「端宗(タンジョン)」の足跡を求めて、多くの観光客で賑わっている。

端宗は、彼の叔父に当たり、後に第7代王の世祖(セジョ)となる「首陽大君(スヤンデグン)」によって即位からわずか3年で王位を追われ、17歳という若さで生涯を閉じた。まさに、朝鮮王朝で最も悲劇的な最期を迎えた国王といえる。死後約570年が経過した現在も、流刑地だった「寧越」の至る所からは、端宗の面影がうかがえる。

コリアネットは先月24日に、映画の余韻をたどりながら、その舞台となった江原道・寧越群を取材に訪れた。

端宗が流刑生活を送った江原道・寧越群の「清泠浦(チョンリョンポ)」。三方を川に囲まれ、後方には断崖絶壁が広がる流刑地だった=寧越群、イ・ジョンウ

端宗が流刑生活を送った江原道・寧越群の「清泠浦(チョンリョンポ)」。三方を川に囲まれ、後方には断崖絶壁が広がる流刑地だった=寧越群、イ・ジョンウ


端宗の無念の思いが宿る流刑地、「清泠浦」

映画の主な舞台となった「清泠浦」は、まさに自然に囲まれた「監獄」といえる。東・南・北の三方を川に囲まれ、西側には「六六峰(ユンユポン)」という岩壁がそびえ立ち、渡り船なしには出入りができない地形となっている。風光明媚な景観の中に孤独と悲しみが宿る「清泠浦」は、1457年に「魯山君」に降格された少年王が直面した過酷な現実そのものだった。

端宗が滞在していた「御所」の母屋と、女官や官奴が生活していたヘンランチェ(使用人の居住空間)の様子(左)。蠟人形によって当時の様子も再現されている(右)=寧越群、イ・ジョンウ

端宗が滞在していた「御所」の母屋と、女官や官奴が生活していたヘンランチェ(使用人の居住空間)の様子(左)。蠟人形によって当時の様子も再現されている(右)=寧越群、イ・ジョンウ


洪水で失われ、後に復元された「端宗御所」の中には、蠟人形によって当時の様子が再現されている。映画に登場するオム・フンドは、実在の人物である。村の村長である彼は、夜になると密かに清泠浦を訪れ、端宗の安否を尋ねていたとされる。

第19代王である粛宗(スクジョン)によって復位された端宗の「荘陵(チャンヌン)」。臣下たちの強い反対により、他の王陵に比べ、簡素な造りとなっている= 寧越群、イ・ジョンウ

第19代王である粛宗(スクジョン)によって復位された端宗の「荘陵(チャンヌン)」。臣下たちの強い反対により、他の王陵に比べ、簡素な造りとなっている= 寧越群、イ・ジョンウ


他の王陵より簡素な佇まいの「荘陵(チャンヌン)」

「清泠浦」から車でわずか5分の距離にある「荘陵(チャンヌン)」は、端宗が眠る王陵である。荘陵は、王都・漢陽(ハニャン)の近郊に陵を造営する慣例から外れ、朝鮮王陵の中で唯一江原道にある。

死後241年が経過した1698年に、粛宗による端宗の復位に伴い陵が整備された。しかし、端宗の復位をめぐり、反対の声は根強く、陵は極めて簡素な造りとなっている。王の権威を象徴する「屏風石(墳丘墓の周りに屏風のようにめぐらした石)」と「欄干石(屏風石の外側に設けられた石の柵)」は設置されておらず、文人石(文官の姿をした石像)だけが置かれている。

荘陵の一角にある「蔵版屋(チャンパノク)」には、端宗に忠義を尽くした268人の忠臣の位牌が祀られている。朝鮮王陵の中では唯一、忠臣たちを称える碑石と殿閣があるため、その意義はひときわ特別である。

「荘陵」には、端宗に忠義を尽くした268人の忠臣の位牌を祀る「蔵版屋(チャンパノク)」がある=寧越群、イ・ジョンウ

「荘陵」には、端宗に忠義を尽くした268人の忠臣の位牌を祀る「蔵版屋(チャンパノク)」がある=寧越群、イ・ジョンウ


端宗の最期はいまだ謎に包まれている。『世祖実録』には、端宗が自ら命を絶ったと記されている。しかし、世祖の視点が反映された史料であるため、信頼性に欠けるというのが学界における主流の見解だ。

『宣祖実録』には、毒薬による殺害説が、他の史料には家臣による殺害説などが記されている。諸説が入り乱れる中で確かなのは、逆賊の汚名を恐れ誰もが端宗の遺体を放置していた際、命を賭して収容したのがオム・フンドであったという事実だけだ。

2009年にユネスコ世界遺産に登録された朝鮮王陵42基。そのうち、北朝鮮に位置する2基を除く40基の中で、ひときわ寂しげな雰囲気が漂うのが「荘陵(チャンヌン)」だ。しかし、ここには今も数え切れないほどの歴史の物語が息づいている。映画以上の感動と歴史の重みを肌で感じたいのなら、若き王の足跡が残る寧越を訪れてみてはどうだろうか。

荘陵で執り行われた「端宗祭礼」の様子。毎年4月末には、端宗と忠臣たちを慰霊する「端宗文化祭」が開催される。2007年からは、朝鮮国王のうち唯一国葬が行われなかった端宗を偲び、「朝鮮王朝国葬」の再現行事が開催されている=先月25日、寧越群、イ・ジョンウ

荘陵で執り行われた「端宗祭礼」の様子。毎年4月末には、端宗と忠臣たちを慰霊する「端宗文化祭」が開催される。2007年からは、朝鮮国王のうち唯一国葬が行われなかった端宗を偲び、「朝鮮王朝国葬」の再現行事が開催されている=先月25日、寧越群、イ・ジョンウ


jihlee08@korea.kr