食・旅行

2026.05.22

韓国の真の魅力は、地域の「路地」にこそ息づいている。文化体育観光部が厳選した「ローカル100(地域の文化・魅力100選)」を指針に、コリアネットは各地の歴史や芸術、そして人々が織り成す「特別な名所」を紹介する。


人気スポットとして浮上している「解放村」は、『椿の花咲く頃(2019)』、『梨泰院クラス(2020)』など、人気ドラマのロケ地となり、さらなる知名度の向上につながった=ソウル・イ・ジョンウ

人気スポットとして浮上している「解放村」は、『椿の花咲く頃(2019)』、『梨泰院クラス(2020)』など、人気ドラマのロケ地となり、さらなる知名度の向上につながった=ソウル・イ・ジョンウ


[ソウル=イ・ジヘ]

南山(ナムサン)の麓に広がる最初の街、「解放村」

人波に湧く梨泰院(イテウォン)駅からわずか一駅。時間が止まったような趣のある景観と、躍動感が同居する不思議な街、「解放村(ヘバンチョン)」が姿を現す。文化体育観光部が選定した「ローカル100」の一つであるこの街は、『椿の花咲く頃』や、『梨泰院クラス』といった人気ドラマのロケ地としても知られ、今や世界中から注目を集めている。昔ながらの街並みと現代的な感性が融合し、異国情緒あふれる「ニューレトロ」を感じることができる。

南山の麓の急坂に沿って形成された「解放村」。ルーフトップのカフェからは、ソウル市内が一望できる=ソウル・イ・ジョンウ

南山の麓の急坂に沿って形成された「解放村」。ルーフトップのカフェからは、ソウル市内が一望できる=ソウル・イ・ジョンウ


南山の麓、その斜面に位置する解放村では、間近にそびえる「南山ソウルタワー」を360度どこからでも望むことができる。高台にあるため、建物の2、3階からでもソウル市街を一望できるのが最大の魅力だ。

光復の「歓喜」と故郷を失った「悲しみ」によって築かれた「生活基盤」

「解放村」という名称には、韓国の波乱に満ちた歴史がそのまま刻まれている。1945年の光復直後、海外から帰国した同胞や、日本による植民地支配下の国外への強制連行から戻ってきた人々が集まって暮らし始めたことに由来する。韓国戦争以降は、北からの避難民が定着し、急峻な斜面に生活基盤を築いた。

かつては急勾配の坂道にバラックがひしめき、貧困の象徴として語られた時代もあった。しかし、皮肉にも、その複雑な地形や歳月の積み重ねは、今やこの街ならではの独特な趣を生み出している。また、歴史の痕跡が色濃く残る路地には、外国人が営む店や、若手アーティストたちのアトリエが広がる。古き良き面影と現代の感性が交差する個性あふれる空間は、訪れる者を惹きつけてやまない。

地下鉄6号線「緑莎坪(ノクサピョン)駅」2番出口から「解放村」の入り口へとつながる路地に立ち並ぶ甕(かめ)(左)。店主の個性が光る商店も(右)=ソウル・イ・ジョンウ

地下鉄6号線「緑莎坪(ノクサピョン)駅」2番出口から「解放村」の入り口へとつながる路地に立ち並ぶ甕(かめ)(左)。店主の個性が光る商店も見られる(右)=ソウル・イ・ジョンウ


個性あふれる路地

地下鉄6号線「緑莎坪(ノクサピョン)駅」2番出口を出て、道に沿って歩いていくと、「解放村(HBC)」の入り口を示すかのように、整然と並ぶ甕(かめ)が目に入る。それは、大都会の真ん中で不意に出会う、懐かしくも温かい風景だ。

その情緒あふれる光景の先には、隣接する米軍基地の影響を色濃く受けた、エキゾチックな空間が広がる。外国人が営む店が軒を連ねる街並みは、さながら異国の地を歩いているかのような錯覚を呼び起こす。ここには、どこにでもある大型チェーン店の姿はない。その代わりに、店主の個性あふれる小さな店舗が立ち並び、街に一層色どりを添えている。

ドラマのロケ地として有名な「108階段」(左)、歩行の利便性を高めるために設置された「108階段」の斜行エレベーター(右)=ソウル・イ・ジョンウ

ドラマのロケ地として有名な「108階段」(左)、歩行の利便性を高めるために設置された「108階段」の斜行エレベーター(右)=ソウル・イ・ジョンウ


神社へとつながっていた「108階段」

ドラマ『バリでの出来事』のロケ地として有名な「108階段」は、こぢんまりとした趣で多くの人に親しまれている。この階段は、仏教の「108の煩悩」にちなみ、108段ある。

しかし、この階段の背景には、1943年に旧日本帝国が建立した「京城(キョンソン)護国神社」へと続く参道としての歴史がある。この神社は、日中戦争(1937~1945)と太平洋戦争(1941~1945)で戦死した当時の日本軍だけてなく、徴用により命を落とした朝鮮人の位牌が強制的に合祀された「悲劇の場所」でもある。


しかし、神社の面影はもはやどこにもなく、現在、この場所には、淑明(スンミョン)女子大学の寮が建っている。階段の脇には、斜行エレベーターが設置されている。


新興市場の様子=6日、ソウル、イ・ジョンウ

新興市場の様子=6日、ソウル、イ・ジョンウ


レトロな雰囲気と現代の感性が息づく「新興市場」

古びたレンガのヴィンテージな趣と、洗練された現代的感性が交差する場所。「新興市場」は、最近、若者の間で新しいものとレトロなものを融合させた 「ニュートロの聖地」として大きな注目を集めている。歳月の重みを物語る狭い路地の至る所に、個性を放つ現代的な店舗が溶け込み、見事なコントラストを描き出している。その計算されたかのような独特のミザンセーヌ(画面構成)は、今やドラマや映画における「屈指のロケ地」として不動の地位を確立している。

新興市場は、1970~80年代に「解放村」の家内制手工業の最盛期をけん引した中心地だった。当時、解放村では昼夜問わず、編み機の音が響き渡り、職人が丹念に仕上げたセーターや手袋、靴下などが新興市場へと集まった。新興市場はそれらを梱包し、全国へと送り出す「流通のハブ」として、賑わいを見せていたのである。

しかし、1990年代以降、繊維や衣料産業の大規模化に伴い工場が近郊へ移転すると、市場は長きにわたる沈滞の時代を迎える。忘れ去られようとしていたこの空間に、再び活気が宿り始めたのは2010年頃のことだ。空き店舗に個性豊かなカフェやアトリエが軒を連ね、復活の狼煙(のろし)を上げたのだ。2021年にはアーケードの屋根が設置され、過去の記憶と現代の感性が交差する、現在の独特な景観が誕生した。


新興市場内部から見た「クラウド屋根」(左)。夜と昼に外部から撮影した市場の屋根(右上、右下)=シン・ジェイク(左・右上、ユーアイエー建築事務所)、キム・ドンハ(右下、ユーアイエー建築事務所)

新興市場内部から見た「クラウド屋根」(左)。夜と昼に外部から撮影した市場の屋根(右上、右下)=シン・ジェイク(左・右上、ユーアイエー建築事務所)、キム・ドンハ(右下、ユーアイエー建築事務所)


jihlee08@korea.kr