2026年7月、第48回世界遺産委員会総会が韓国の釜山(プサン)で開かれる。コリアネットは、今回の総会が持つ意味を見つめ直すとともに、現在、韓国が世界遺産暫定リストに登録している12カ所のうち、注目の6カ所を厳選して紹介する。
[昌寧=シャルル・オドゥアン]
[映像=コリアネット公式ユーチューブチャンネル]
鳥たちの鳴き声と羽ばたきが、静寂を破る。繁殖期を迎え、羽の色が灰色へと変わったトキが薄紅色の翼を広げ、アオサギの群れが水面から一斉に飛び立つ。その光景は、ユネスコがなぜこの場所を「生命の地」として注目したのかを物語っている。自然と生態を愛する人にとって、慶尚南道(キョンサンナムド)・昌寧郡にある「牛浦沼(ウポヌプ)」は、必ず訪れるべき場所である。
約1億4000万年前の原始の自然を今に残す「牛浦沼」は、韓国最大の内陸湿地だ。カワウソやヤマネコといった、約1200種に上る多様な動植物が生息し、豊かな自然生態系を形成していることから、「生態系の博物館」と呼ばれている。
牛浦沼で魚を獲るアオサギや、水遊びをするカワウソの様子。沼のほとりにあるススキが風に揺れ、鳥の鳴き声も響き渡る=7日、昌寧郡、シャルル・オドゥアン
近くの火旺(ファワン)山を発する河川の水が牛浦沼へと集まり、やがては韓国の南東部を貫く河川である洛東江(ナクドンガン)へ流れ込む。川の水位の変動によって、湿地は刻々とその姿を変える。牛浦沼は、洛東江と呼吸を合わせながら生きている、「巨大な有機体」といえる。
周囲を低い山々に囲まれた牛浦沼は、湖や貯水池とは異なる絶景を演出する。長さ約2.5km、幅約1.6kmと、ソウル・汝矣島(ヨイド)の面積よりやや小さいものの、周辺に大小の湿地が点在しており、全体として圧倒的なスケールを誇っている。
「牛浦トキ復元センター」近くの探訪路では、トキ(下)やアオサギ、中大鷺(チュウダイサギ)などを観察することができる=7日、昌寧郡、シャルル・オドゥアン
牛浦沼を保護するための取り組みは、これまで着実に進められてきた。韓国政府は、1997年にこの地域を「自然生態系保全地域」に指定し、翌年には、国際的に重要な湿地である「ラムサール条約登録湿地」となった。続いて、2011年には、世界自然遺産暫定リストに登録された。また、昌寧郡全域は、2024年にユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に指定されている。さらに、国家遺産庁が昨年発表した「2025~2029自然遺産保護計画」に基づき、現在は「世界自然遺産」への正式登録を見据えている。
「牛浦トキ復元センター」で、50羽のトキが放たれた際の様子。トキは繁殖期に入ると、羽の色が灰色へと変わる=6日、昌寧郡
牛浦沼の真の価値は、多様な動植物が共存するダイナミズムにある。特に冬は、世界中から渡り鳥が飛来する越冬地となり、鳥たちが旅の途中で羽を休める「生命の中継地」へと化す。豊富なエサと穏やかな休息の場が、厳しい長距離飛行を支えているのだ。
最近、牛浦沼で最も注目を集めているのは、野生の「トキ」である。ここでは、絶滅危惧種であるトキの復元事業が進められている。韓半島では1979年に絶滅したが、2008年に中国から韓国へトキのつがいが寄贈され、復元事業が始まった。その後、2019年に初の野生放鳥に成功し、現在までに約440羽が自然へと帰された。
放鳥されたトキは、飛行や環境への適応、ドジョウの捕獲といった、野生で生き抜くための「順化訓練」を受けた個体だ。昌寧郡は、一部の個体にGPS発信機を付け、飛行経路と生存状況を観察している。
探訪路にある「牛浦沼」の英語の案内板ー=7日、昌寧郡、シャルル・オドゥアン
牛浦沼をありのままに感じる最も良い方法は、徒歩で巡ることである。徒歩の探訪路は、距離ごとに様々なコースが用意されている。その中でも、牛浦沼を一望できる「牛浦沼 生命の道(8.4km)」は、約3時間でその風情を満喫できる代表的なコースといえる。各所に設置された野鳥観察用の望遠鏡で、アオサギやチュウダイサギの日常を垣間見ることもできる。
アクティブかつ爽快にコースを巡りたいなら 自転車での散策が最適だ。「牛浦沼生態館」から出発するサイクリングロードに沿って湿地一帯を巡ることができる。自転車のレンタル料金は、5000~7000ウォンだ。
牛浦沼へ向かうには
牛浦沼は、東大邱(トンデグ)・密陽(ミリャン)・昌原(チャンウォン)など最寄りの鉄道駅から車で約1時間の距離にある。公共交通機関を利用する場合は、大邱や釜山(プサン)で昌寧行きの市外バスに乗車すればよい。昌寧から牛浦沼方面へのバスは、1日に約5回運行されている。
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