7月に韓国・釜山(プサン)で開催される第48回ユネスコ世界遺産委員会に合わせ、KOREA.netでは韓国のユネスコ世界遺産暫定一覧に登録されている12件のうち6件を紹介する。
楽安邑城の全景。全長約1410メートルの石垣に囲まれた城内には、朝鮮時代の地方都市の面影が今も残る=全羅南道・順天
[順天=イ・ジヘ]
[写真・映像=パク・デジン]
全羅南(チョルラム)道・順天(スンチョン)ののどかな平野に、まるで時が止まったかのような場所がある。朝鮮時代の町並みをそのまま残し、今も住民が暮らす「楽安邑城(ナガンウプソン)」だ。
その歴史は1397年の朝鮮王朝初期にさかのぼる。倭寇の侵入や反乱に備え、官民が力を合わせて城壁を築き始めたのが始まりとされる。
楽安邑城の特徴は、城壁だけではない。約22万1000平方メートルの城内には集落や役所の建物が残り、今も人々が暮らしている。人々の暮らしとともに受け継がれてきた貴重な歴史遺産である。
現在のような石造りの城壁が築かれたのは1626年。もともとは土で築かれた城郭だったが、当時、楽安郡守として赴任した名将イム・ギョンオプが石造りの城壁へと築き替えた。高さ約4メートル、幅3~4メートル、全長約1410メートルに及ぶ城壁は、当時の優れた築城技術を今に伝えている。
楽安邑城がユネスコ世界遺産暫定リストに登録された理由は、保存状態の良い史跡だからではない。約85世帯、200人余りが今も暮らす「生きた伝統集落」だからだ。城門の外に広がる農地では、住民が農業を営み、伝統的な農村の姿を今に伝えている。
集落を歩くと、建物にも朝鮮時代の身分や用途の違いをうかがうことができる。地方官が執務を行った東軒(トンホン)や客舎(ケクサ)などの公的な建物は、瓦葺きの立派な造りだ。一方、住民が代々暮らしてきた民家は、わらやアシなどで屋根を葺いた素朴な草葺きの家々だ。身分や用途の違いは建築様式にも表れ、城内に独特の景観をつくり出している。
草葺き屋根に使われる稲わらやチガヤは、風雨や日差し、湿気にさらされるため、年月とともに傷んでいく。そのため楽安邑城では毎年晩秋になると、新しい稲わらやチガヤで屋根を葺き替える作業が行われる。この昔ながらの営みは、楽安邑城が今なお「生きた伝統集落」であることを象徴している。
「ビンギルドゥン」から眺めた風景=全羅南道・順天
城壁で最も高い場所にある「ビンギルドゥン」からは、丸みを帯びた草葺き屋根が並ぶ集落を一望できる。その名は、1397年の築城で功績を残したキム・ビンギル将軍をたたえて名付けられた。
時代劇のロケ地としても知られる楽安邑城=全羅南道・順天
こうした独自の景観により、楽安邑城は韓国を代表する時代劇のロケ地としても知られる。世界的な人気を集めたドラマ『宮廷女官チャングムの誓い』(2003年)や『雲が描いた月明り』(2016年)をはじめ、朝鮮時代を舞台にした数多くの作品が撮影された。
現在の楽安邑城では、史跡の見学に加え、歴史や伝統文化を体験できる様々なプログラムが用意されている。草葺き民家での宿泊体験をはじめ、韓国の伝統遊びや天然染めなど、朝鮮時代の暮らしや文化に触れることができる。
現在、楽安邑城はユネスコ世界文化遺産への正式登録を目指している。文化遺産と人々の暮らしが調和するこの地は、人類が未来へ受け継ぐべき貴重な文化遺産といえるだろう。
jihlee08@korea.kr