名誉記者団

2022.02.22

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베이징올림픽 고다이라 나오

北京冬季五輪のスピードスケート女子500メートルに出場した小平奈緒選手=13日、中国・北京、聯合ニュース


[大阪=和田崇(日本)]
[映像=KBS News YouTube Channel]

4年間の月日の重さを、誰よりも感じていたに違いない。2月13日、2022年北京冬季五輪のスピードスケート女子500メートルに出場した小平奈緒選手。前回の平昌五輪では五輪記録を塗り替える36秒94をマークし金メダリストとなった小平選手だったが、五輪連覇の偉業に挑戦した今回、結果は17位。タイムは平昌より1秒以上も遅かった。


そんな小平選手の姿をリンク脇で目の当たりにし、同じ思いを共有した人がいる。10年バンクーバー、14年ソチの両五輪で小平を抑えて五輪連覇を果たし、「氷速女帝」と呼ばれた元韓国国家代表の李相花(イ・サンファ)さんだ。19年に現役を引退し、北京五輪は韓国テレビ局の解説者として会場を訪れていた。親友であり、かつてのライバルでもあった小平選手のレースが始まると、解説席で「諦めないで、最後(ゴール)まで力を出し切って」と小平選手に向けて声を張り上げ、感情を抑えきれずに涙を流した。


2018年平昌冬季五輪のスピードスケート女子500メートルが終わった後、競技場を回っている李相花(左)と小平奈緒=2018年2月18日、江原道・江陵、聯合ニュース

平昌冬季五輪のスピードスケート女子500メートルが終わった後、競技場を回っている李相花(左)と小平奈緒=2018年2月18日、江原道・江陵、聯合ニュース


4年前、小平選手は平昌五輪で日本のスピードスケート女子選手として初めて金メダルを獲得。五輪3連覇がかかっていた李さんだったが、小平選手に続く2位に終わった。母国の期待と地元での偉業達成を果たせず、むせび泣く李さんの肩を抱き、韓国語で「チャレッソ(よくやったね)」と慰めたのが小平選手だった。リンク上で抱き合い、健闘をたたえ合う姿は世界の感動を呼び、翌年には韓国の財団から「韓日友情賞」を贈られた二人。


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「韓日友情賞」授与式で記念撮影に応じる李相花(右)と小平奈緒=2019年4月7日、ソウル、聨合ニュース


その授賞式で、小平選手が「思いがけず大きな注目を浴びたが、あの情景は私たちにとって自然なもの」と言えば、李さんも「ソチ五輪の後は引退も考えたが、奈緒がいたから挑戦し続けることができた」と感謝の言葉を並べた。


二人が知り合ったのは高校生の時。韓日のスポーツ親善交流で初めて顔を合わせ、たちまち友人同士となった。国際大会でライバルとして戦う一方、海外転戦の厳しい移動や食事ではお互いに助け合い、それぞれの自宅も訪れるなど長年にわたって友情を育んできた。「次の五輪ではあなたが金メダルで、私は銀メダルでいいわ」。現役時代、そう言い合えるほどの深い仲になった。




韓国のメディアによると、小平選手がゴールした後、解説席で李さんは涙ながらに「これまで見たことのない奈緒の姿につらかった」と話したという。小平選手はレース後、懸命に李さんの姿を探していた。「ミックスゾーン」と呼ばれる共同取材区域に現れると、集まったメディアに「相花はどこにいるの?」と英語で問い掛けた後、韓国語で「チャルチネッソ? ポゴシポッヨ(元気だった? 会いたいよ)」と語りかけたという。

李さんと顔を合わせることはできなかったが、メディアの取材に昨年から多くの励ましのメールをもらっていたことを明かし、「『奈緒ならできるよ』という言葉を何度ももらい、心強かった。だけど、相花が2連覇したときのようにうまくはいかなかった」と残念そうに話したという。

ワールドカップ15連勝で臨んだ平昌五輪とは違い、昨年は股関節の痛みに苦しむなど不振に陥り、日本国内で5年ぶりの敗戦も経験した小平選手。17日の1000メートルも10位に終わった。レース後の取材に「自分なりにやり遂げることはできたと思う」と目に涙を浮かべ、「相花からはSNSでメッセージをもらった。いっぱいアドバイスをもらって、本当のコーチみたいだった。韓国語で『分かった。ありがとう』と返しました」と話した。


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左から李相花と小平奈緒のインスタグラム


李さんも自身のインスタグラムを更新し、平昌五輪で二人が並んだ後ろ姿の写真を載せて「私たちが夢見ていた高い場所に二人の名前が並んでいることを忘れないで。初めて出会った10代の時から、私たちは粘り強く、十分頑張ってきた。私たちは永遠の五輪チャンピオンだよ。本当によくやった!」とメッセージを残し、最後に日本語で「おちゅかれさまだよ」と投稿した。


これに対し、小平選手も韓国語で「全てが忘れられない日々。私にとって、あなたは大切な友達だよ」と返信し、「サンファも慣れないお仕事 おつかれさまだよ~」と日本語で締めくくった。

オリンピック憲章には、「いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあう」ことこそが「オリンピック精神」とうたわれている。ライバルとして、親友として、一緒に育んだ夢を実現し世界の頂点に立った二人。ともに女王の座から降りても、互いの間には五輪の精神が生き続けており、その心は固い絆で結ばれている。


*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

eykim86@korea.kr