[文・写真=駒瀬元暉]
こんにちは、ソウル在住で観光が大好きな駒瀬元暉です。
突然ですが、2010年公開の『インセプション』という映画はご存知でしょうか?
レオナルドディカプリオ主演のSF超大作ですが、真っ直ぐ伸びる道路が垂直に折れ曲がる、印象的なポスターのデザインも話題を集めました。
映画の中だけだと思っていた景色が実際に見られるとしたら…実はソウル郊外の城南市には、韓国内で映画インセプションのポスターのようだと言われる街があります。
その名は
太平洞(テピョンドン)。
観光地ではないごく普通の住宅街ですが、他では絶対に見られない、果てしなく続く一直線道路が張り巡らされた街。
そんな太平洞の驚きの街並みをご紹介します。
太平洞の水平線ロード。実際に見ると更に迫力があります。
韓国屈指の急坂の街 太平洞
ソウルの江南区から30分の距離にある、まさにソウルのベッドタウンとも言える京畿道 城南市(ソンナム市)。
地下鉄水仁・盆唐線に乗って太平駅(テピョン駅)で降りると、駅の東側に急斜面の街が広がります。そんな坂の街が太平洞です。
韓国旅行をよくされる方ならご存知だと思いますが、基本的に韓国は日本より坂道が多いですよね。普通の街歩きでもアップダウンがかなりあるのですが、ここ太平洞は、韓国の中でも群を抜いて傾斜が急な街。
そして、冒頭でもお伝えした通り、急坂がはるか先まで一直線に伸びる道路は、異様さも感じるような光景。
更に、このような一直線の道が1本や2本ではなく、街全体に何本も走っているのです。
特に街歩きが好きな方にはたまらない、独特な景観を見ることができる街なのです。
傾斜が急すぎて、本当に向こう岸が垂直に折れ曲がっているように見えました。
”水平線ロード”の街並みが出来たワケ
さて、そんな独特な景観を誇る太平洞ですが、ここで一つ疑問が浮かびます。
一体どうしてこのような街並みになったのかと。
そこには、
韓国の都市化の闇が深く関係しているのです。
太平洞の街が形成されたのは1960年代末から70年代初め。その時期の韓国は急速な工業化の真っただ中。
首都ソウルは、地方から仕事を求めて押し寄せた人で溢れかえり、住居不足問題が深刻化しました。そこで政府は人口を分散させるため、ソウル近郊に多くの人々を移住させました。
まさにそんな時期、ここ太平洞にも移住先として街が作られました。
ところが移住させたはいいものの、住宅街の造成計画をじっくり立てる時間は当時の韓国政府にはありませんでした。
その結果、なんと
急坂をそのまま残し、土地を一直線で単純に区切っただけの、今見られるような太平洞の街が出来上がったのです。
大胆すぎる水平線ロードの街並みの裏に、怒涛の工業化の歴史が隠れていたとはかなり意外ですよね。
坂の街 太平洞の中でも一番高台にあるマンギョン庵。ここからは街を見下ろす絶景が見られます。
郊外の街でローカル韓国を満喫しよう
ここまで太平洞の一直線の街並みについてお話してきましたが、
ソウル郊外の街ならではのローカルな雰囲気も色濃く残すのがここ太平洞です。
太平洞にはもちろん外国人旅行客はまずいません。街を歩くと住民の生き生きとした日常生活を垣間見ることができます。
友達と道端で遊ぶ子供たち、老舗食堂店主のはつらつとした声、店先で世間話に花を咲かせる主婦たち…そこにはお隣さん同士の距離が近い昔懐かしい街の空気が流れています。
有名な観光地も魅力的ですが、
その土地で暮らす人々の日常を覗いてみるのも旅の醍醐味の一つですよね。
街にある昔からのスーパー。地元住民に混じってお買い物を楽しんでみては?
今回は独特過ぎる水平線ロードの街並み、城南市 太平洞についてご紹介しました。
一直線の道路は写真よりも、実際に訪れてみるとそのスケールに圧倒されると思います。
ソウルからも地下鉄で簡単にアクセスできる太平洞。
太平洞で、新たな韓国街歩きの面白さを体感してみてください。
坂道がかなり急な太平洞。必ず歩きやすい靴を履いてのご訪問を。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
hjkoh@korea.kr