[文=坪井由美子]
景福宮の月台に立つBTSメンバー=ビックヒットミュージック/ネットフリックス
2026年3月、ついにBTSがカムバック。兵役を経て、約3年9か月ぶりに完全体での復帰公演「BTS THE COMEBACK LIVE ARIRANG」がソウル光化門広場で開催されました。ARMY(BTSファンの呼称)や市民のみなさんとともに体感した、長く熱い一日の様子をお伝えします。
BTSカムバックライブの舞台となった光化門広場は、歴史的にも政治的にも、韓国の象徴ともいえる場所。朝鮮時代には国家の儀式が行われ、近年では大規模な市民デモが開かれる民主主義の広場として定着しています。なかでも有名なのが、延べ数百万人が参加したとされる、2016年末のパク・クネ大統領退陣要求のろうそく集会。当時現場で目撃したのですが、光化門広場を埋め尽くす人々の熱気と、まるで野外音楽フェスのような平和的な光景に圧倒されました。
ここでアーティストの単独公演が行われるのは初めてのこと。この歴史的瞬間を共有したい、との思いで現場に向かいました。
景福宮と北岳山を背景に設置された、新たな「門」を思わせるステージ=坪井由美子
本番数日前。景福宮の正門となる光化門の前に、新たな門を思わせる特設ステージが登場。周囲に並ぶビルの電光掲示板には、3月20日発売の新アルバム「ARIRANG」やカムバックライブを世界同時中継するNetflixの広告が次々と映し出され、カフェではBTSコラボ商品が売り出されるなど、広場一帯がお祭りムード。世界中からやってきた大勢のARMYや観光客が、今しか見られない貴重な光景を写真や動画に収めていました。
着々と準備が進む会場を撮影する人々=坪井由美子
何から何まで前代未聞の大イベント。いったいどんなことになるのか想像の範疇を超えており、期待と不安でドキドキしながら当日を迎えました。
公演当日の3月21日、市庁駅の出口で荷物チェックに並ぶ人々の列=坪井由美子
3月21日の公演当日。会場周辺では大規模な交通規制が実施されました。市庁駅が閉鎖される前ぎりぎりの午後3時頃に到着すると、会場に繋がる通りには複数のゲートが設置され、荷物検査とボディチェックが行われていました。混雑による事故防止のため、人々は一か所に立ち止まらず常に歩き続けるように統制されており、観覧席ゾーンにはバリケードが張られて立ち入ることができません。
今回の無料公演で用意されたチケットは、約2万2千席分。光化門から市庁舎が建つソウル広場の辺りまで、約1.2kmにわたる野外会場にしては数が少ないようにも感じますが、安全面が考慮された結果なのでしょう。
チケットを入手できなかった多くの人が、それでも一目見たいと国内外から集まっていました。スペインから来たというロリさんは、60歳にして初めて国外に出たそうです。「BTSのおかげで新しい世界を知って、たくさんの友人に出会えた。」と嬉しそうに話してくれました。
現場は多くの警備員と日本語を含む多言語の案内員の方が配置されていたおかげで、大きな混乱もなく安全に感じられました。だけどこの厳しい警備のなか、はたして観覧が可能なのか……懸念を抱いたまま、ひとまず近くのカフェで待機することに。
周辺の道路は封鎖され、立ち入り禁止エリアがかなり広く設けられていました=坪井由美子
7時過ぎに光化門広場に戻り、再び待機列に加わりました。立ち止まることができないので、歩き続けながら開演を待つしかありません。群衆が整然と列をなして同じところをぐるぐると回っている光景はなんだか微笑ましくもあり、現場には妙な連帯感が生まれているのを感じました。
そうして迎えた開演の8時。景福宮正門から「王の道」を通ってメンバーが登場!RMの「アンニョン、SEOUL!We’re back!」という声とともにライブがスタートすると、会場は歓喜の渦に包まれました。
メンバー登場!スクリーンしか見えなくても、この時間を共有できただけで満足です=坪井由美子
新アルバムや代表曲から全12曲が披露されました=ビックヒットミュージック/ネットフリックス
オープニングを飾ったのは、韓国民謡「アリラン」がサンプリングされた「Body to Body」。新アルバム収録曲に加えて「Butter」「MIC Drop」といった代表曲も披露され、クライマックスの「Dynamite」では会場が一体となって大合唱。世界中から集まったARMYはもちろんのこと、小さなこどもを抱いた家族連れ、若いカップル、ノリノリで踊る70代くらいの男性、元気なご婦人たちのグループ……本当に老若男女に愛されているグループなんだなあ、としみじみ実感。本当にみんなが心から楽しそうで、その幸せな光景を見ていると、思わず涙がにじみました。ラストの「Mikrokosmos」は夜空に星明りが広がるような演出で締めくくり。光化門広場に新たな小宇宙が生まれました。
ライトアップされた景福宮を背景に小宇宙が誕生=ビックヒットミュージック/ネットフリックス
私はこの夜、単なるライブを超えた何かとてつもなく大きなものを、BTSを介してみんなと共有したような気がします。うまく表現できないのですが、あえて言うならば、「希望」という言葉が近いかもしれません。BTSと世界中のARMYの連帯をもってすれば、世界平和も可能なのでは。そんな希望が感じられた、美しい夜でした。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
hjkoh@korea.kr