名誉記者団

2026.05.27

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[文・写真=坪井由美子]

韓国の郷土料理が生まれた場所を訪ね、土地の文化を五感で味わう地方旅シリーズ。釜山滞在の最終日、思いがけない出会いから予想だにしない展開が待っていました。美味と人情に驚き、感動の連続となった釜山紀行の完結編をお届けします。

大阪からフェリーのワンナイトクルーズで初上陸した釜山。
1日目は伝統のマッコリ造りに始まり、刺激的な辛さの「ナッコプセ」や、おしゃれなカフェ巡り。2日目は活気ある伝統市場で、名物の釜山おでんや小麦麺の「ミルミョン」を食べ歩き。

めいっぱい歩き、食べ、飲んで、「やりたいことリスト」を着々と実現してきた旅もいよいよ最終日。最後にどうしても叶えたかったのが、「影島(ヨンド)の海女村で、潮風を感じながら海鮮を堪能する」ことでした。影島は独自の海女文化が息づく島。その日の朝に採れたばかりの海の幸がいただけると聞き、わくわくしながら向かいました。

釜山港の南に位置する影島は、本土と橋で繋がっており、中心地からのアクセスも良好です。賑やかな南浦洞(ナンポドン)からバスに揺られて約20分。海女村の最寄り停留所で降りると、そこには都心の喧騒を忘れるような、素朴で力強い漁村の光景が広がっていました。

影島の海女文化村。海の目の前で海鮮が味わえる食堂が大人気

影島の海女文化村。海の目の前で海鮮が味わえる食堂が大人気


影島は、かつて済州島から移り住んだ海女たちの歴史が刻まれた場所で、今も10数人の現役海女さんが海に潜っているそうです。「影島海女文化展示館」の1階にある食堂では、彼女たちが獲ってきた宝物のような食材を味わうことができます。

隣席のグループが楽しんでいた豪華海鮮セットと海鮮ラーメン

隣席のグループが楽しんでいた豪華海鮮セットと海鮮ラーメン


いけすには、アワビ、サザエ、タコ、ナマコ、ホヤ……。どれも艶やかに光り、生命力に溢れています。テラス席では多くのグループ客が豪華な盛り合わせを囲んでいましたが、ひとり旅の私は、迷った末にウニとキンパを注文。

ウニとキンパ。人生で一番贅沢でおいしいキンパでした

ウニとキンパ。人生で一番贅沢でおいしいキンパでした


磯の香りが凝縮されたウニをキンパにのせて、海を眺めながらパクリ。……うまい!思わず心の中で(もしかしたら声に出ていたかもしれません)絶叫しました。

その時です。「ひとりなら、こっちで一緒に食べましょう~」と隣のグループから声がかかりました。韓国には、ひとりで食事をしている人を見ると放っておけない、おせっかいなほどに温かい文化があります。「大丈夫ですよ~」と恐縮する私に、「せっかく日本から来たんだから、もっと食べなきゃ~」と譲りません。

そんなやり取りの最中、突然の暴風雨に。急いで屋内に避難すると、彼らは「これも縁だ、飲みましょう!」と焼酎を追加。聞けば、韓国各地から数年ぶりに集まった同級生たちだといいます。私が旅作家だと知るやいなや、「それなら私たちが車で案内しましょう!」と、あっという間に“釜山観光ツアー”が決定し、断るほうが申し訳ない雰囲気に。

見ず知らずの外国人のために、貴重な同窓会の時間を割いてくれる――韓国ドラマのような、あるいはそれ以上の人情に圧倒されながら、ありがたくご一緒させていただくことになったのです。

SNSでも話題のおしゃれなカフェ「Thrill on the mug!」

SNSでも話題のおしゃれなカフェ「Thrill on the mug!」


向かったのは、切り立った崖に佇む絶景カフェ「Thrill on the mug!」。階段状の客席からは、大きなガラス窓越しに、荒々しい大海原が見下ろせます。ジャズが流れる洗練された空間で、香ばしい焼き立てパンとコーヒーを。影島ならではの、ワイルドな自然と現代的な感覚が同居するひとときを楽しみました。

続いて訪れたのは、「韓国のマチュピチュ」と称される「甘川文化村(カムチョンムナマウル)」。かつて朝鮮戦争時の避難民たちが築いた斜面の集落は、今やパステルカラーの家々とアートが彩るSNSの聖地です。

アートの力で釜山を代表する観光スポットに生まれ変わった甘川文化村

アートの力で釜山を代表する観光スポットに生まれ変わった甘川文化村


韓国の人たちの写真への情熱には驚かされることがしばしばありますが、同行してくれた彼らもしかり。「星の王子様」の像やBTSの壁画などいたるところにあるフォトスポットをまわりながら、私は専属カメラマンと化した彼らに指示されるまま、慣れないポーズをとることに……自撮りはあまり得意ではないのですが、そんなことは言ってられません。

甘川文化村を見渡せるフォトスポット。釜山にはたくさんの星の王子様がいます

甘川文化村を見渡せるフォトスポット。釜山にはたくさんの星の王子様がいます


夜はさらにメンバーが増え、活気溢れる海鮮レストランで大宴会。同窓会にいきなり現れた謎の日本人を、誰もが温かく迎え入れてくれました。

刺身レストランでの同窓会に飛び入り参加。テーブルを埋め尽くす海鮮やパンチャンに歓喜!

刺身レストランでの同窓会に飛び入り参加。テーブルを埋め尽くす海鮮やパンチャンに歓喜!


酢コチュジャンをつけていただく新鮮な刺身、そして魚の旨味が爆発する辛味スープ「メウンタン」。お姉さんたちが次々と私の小皿に料理をよそってくれます。お腹も胸もいっぱいになりながら、釜山の人々の熱いエネルギーに包まれ、夜は更けていきました。

翌朝、名残惜しさを抱えながら、最後の一食に選んだのは釜山名物料理の「テジクッパ(豚クッパ)」。

釜山駅そばにある老舗店「本銭テジクッパ」で朝ごはん

釜山駅そばにある老舗店「本銭テジクッパ」で朝ごはん


まずはスープを一口。その後、ニラの和え物やアミの塩辛を加えて自分好みの味へと育てていきます。優しくも力強い味わいが染み渡り、おなかの底から力が湧いてくるのを感じました。

旅の締めくくりは、松島(ソンド)海上ケーブルカーでの空中散歩。

スリリングな空中散歩と奇岩断崖の絶景が楽しめる、松島スカイパークの竜宮吊り橋

スリリングな空中散歩と奇岩断崖の絶景が楽しめる、松島スカイパークの竜宮吊り橋


松島スカイパークでは、売店でおいしいスイカジュースを飲んだり、スリル満点の竜宮吊り橋を渡って絶景を堪能。帰りのゴンドラで、ダイナミックな港の風景を目に焼き付けながら、この数日間の出会いを思い浮かべていると、しみじみと感動がこみあげてきました。

ありがとう釜山。また来ます!

ありがとう釜山。また来ます!


旅は、何を見るか、何を食べるか以上に、誰と出会うかでその色を変えます。
韓国の地方旅は始まったばかり。次はどんな「おいしい人情」に出会えるのでしょう。
長距離バスの揺れに身を任せ、私はまだ見ぬ旅先を夢見ながら、深い眠りに落ちていきました。

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr