名誉記者団

2026.07.10

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[文・写真=後藤 祐希]

駐日韓国文化院に設置されていた「K-BOOK in TOKYO」の案内パネル。韓国と日本で注目を集めている韓国文学や絵本などが展示されています。

駐日韓国文化院に設置されていた「K-BOOK in TOKYO」の案内パネル。韓国と日本で注目を集めている韓国文学や絵本などが展示されています。


2026年7月3日(金)から23日(木)まで、駐日韓国文化院と代官山・蔦屋書店で韓国文学イベント「K-BOOK in TOKYO」が開催されています。

私は駐日韓国文化院を訪れ、韓国文学や絵本、翻訳書が並ぶ展示を見てきました。

このイベントでは、韓国と日本の作家、翻訳家、編集者によるブックトークも行われています。

今回のイベントでは、キム・ホヨンさんやファン・ボルムさん、チョン・セランさんなど、韓国文学を代表する作家たちによるトークも企画されていました。

残念ながら、私は時間の都合でトークには参加できませんでしたが、展示を見ているだけでも、それぞれの作家の世界を十分に感じることができました。

K-BOOKが並ぶ展示空間

駐日韓国文化院2階ラウンジに広がるK-BOOK展示会場。韓国文学、絵本、作家紹介パネルなどが並び、韓国の本の多彩な魅力に触れられる空間です。

駐日韓国文化院2階ラウンジに広がるK-BOOK展示会場。韓国文学、絵本、作家紹介パネルなどが並び、韓国の本の多彩な魅力に触れられる空間です。


会場には、日本で翻訳出版された韓国文学や絵本が並び、韓国の本が今どのように日本の読者と出会っているのかを感じられる空間が広がっていました。

話題作を紹介する展示パネルや、作家ごとの紹介コーナーを見ていると、韓国文学がすでに日本の読書文化の中に自然に入り込んでいることが伝わってきます。

私は以前から、韓国の小説や文学に強く惹かれてきました。

韓国語の文章には、感情を大げさに説明しなくても、読む人の心に届く繊細さがあります。

何気ない会話、短い沈黙、ふとした独白の中に、登場人物が抱えてきた時間や痛みが滲むところに魅力を感じます。

同時に、日本語訳で読む韓国文学にも楽しさがあります。

韓国語の表現をそのまま直訳するのではなく、日本語として自然に響かせながら、原文が持つ温度や余白を残している翻訳に出会うと、「この感覚を日本語ではこう表すのか」と思わず唸ってしまいます。

韓国文学を読む時間は、物語を楽しむだけでなく、言葉と翻訳について学ぶ時間にもなっています。

私が惹かれた韓国文学


ハン・ガンさんの『菜食主義者』。悪夢をきっかけに肉を拒む女性を通して、家族関係や社会について考えさせられた一冊です。

ハン・ガンさんの『菜食主義者』。悪夢をきっかけに肉を拒む女性を通して、家族関係や社会について考えさせられた一冊です。


これまで特に印象深かった作品の一つが、ハン・ガンさんの『菜食主義者』です。

この作品は、悪夢をきっかけに肉を食べることを拒むようになった女性ヨンヘと、その変化を受け止めきれない家族の姿を描いています。

食べることを拒むという一つの選択が、家族関係や身体、社会の規範を揺さぶっていくところに、強い衝撃を受けました。

静かな文章でありながら、その奥にある暴力性や孤独がいつまでも心に残る作品です。

日常に潜む違和感を描く一冊

チョ・ナムジュさんの『82年生まれ、キム・ジヨン』。一人の女性の人生を通して、日常の中に積み重なる差別や違和感を描いた作品です。

チョ・ナムジュさんの『82年生まれ、キム・ジヨン』。一人の女性の人生を通して、日常の中に積み重なる差別や違和感を描いた作品です。


さらに、チョ・ナムジュさんの『82年生まれ、キム・ジヨン』も忘れられない一冊です。

主人公キム・ジヨンは、韓国でごく一般的な名前を持つ女性として描かれています。

物語は、彼女の幼少期、学生時代、就職、結婚、出産、育児へと続く人生をたどりながら、家庭や学校、職場、社会の中で女性が経験する違和感や差別を積み重ねていきます。

誰かの何気ない一言、当たり前のように押しつけられる役割、職場や家庭での小さな不公平が、少しずつ主人公の心に重なっていく――

その描き方がとても現実的で、読んでいるうちに「これは一人の女性だけの話ではない」と感じさせられました。

この作品は、主人公の人生を通して日常的な性差別を描き、韓国社会のジェンダー不平等を可視化した小説として受け止められています。

韓国語で味わうエッセイの魅力


BTOBのイ・チャンソプさんによる初エッセイ。歌う人としての思いや、挑戦を続ける姿勢が綴られている一冊です。

BTOBのイ・チャンソプさんによる初エッセイ。歌う人としての思いや、挑戦を続ける姿勢が綴られている一冊です。


小説とは少し異なりますが、イ・チャンソプさんのエッセイ『적당한 사람(ちょうどいい人)』も、私にとって大切な韓国語の本です。

イ・チャンソプさんは、アイドルグループBTOBのメンバーとして活動するだけでなく、ソロ歌手、ミュージカル俳優、ボーカル教室の運営、ウェブバラエティ番組に出演するなど、さまざまな分野に挑戦してきました。

このエッセイには、そうした華やかな活動の裏側で、彼がどのように悩み、考え、自分自身を見つめ直してきたのかが綴られています。

特に印象的なのは、彼が「歌う人」として、歌をただ上手に歌うだけでなく、感情や思いを届けることを大切にしている点です。

夢を叶えて終わるのではなく、今もなお新しい挑戦を続け、よりよい自分になるために努力を続ける姿勢が、彼の言葉の中から伝わってきます。

韓国文学の幅広さを感じて


「いま韓国で話題の本」として紹介されていた展示棚。2026年上半期の韓国ベストセラーや注目の作品などが並び、トレンドを感じることができました。

「いま韓国で話題の本」として紹介されていた展示棚。2026年上半期の韓国ベストセラーや注目の作品などが並び、トレンドを感じることができました。


「K-BOOK in TOKYO」では、棚に並ぶ本、作家紹介のパネル、韓国語版と日本語版が隣り合う展示などを通して、韓国文学の幅広い魅力に触れることができました。

韓国文学には、社会の現実を鋭く映し出す作品もあれば、疲れた心にそっと寄り添う作品もあります。

その幅広さこそ、今のK-BOOKの大きな魅力だと感じます。

絵本『わたしは地下鉄です』との出会い

会場に並んでいた絵本『わたしは地下鉄です』の韓国語版と日本語版。地下鉄2号線を舞台に、乗客一人一人の人生が描かれています。

会場に並んでいた絵本『わたしは地下鉄です』の韓国語版と日本語版。地下鉄2号線を舞台に、乗客一人一人の人生が描かれています。


今回、私が最も心をつかまれたのは、韓国の絵本『わたしは地下鉄です』でした。

会場には韓国語版と日本語版が並べて展示されており、実際にページをめくりながら読み比べることができました。

これまで私は小説やエッセイを中心に韓国文学を読んできましたが、この作品は絵本でありながら、短い言葉と絵の中に深みがあると感じます。

『わたしは地下鉄です』では、地下鉄2号線が主人公として描かれており、物語の中心にあるのは電車そのものだけではありません。

そこに乗り合わせる一人一人の乗客に、それぞれの時間、それぞれの人生があることが伝わってくるのです。

地下鉄は、日常の中で誰もが何気なく利用する場所。

けれど、普段はすれ違うだけの人々にも、見えない物語があるのだと気づかされます。

通勤する人、どこかへ向かう人、疲れた表情で座る人、誰かを思いながら移動する人。

車内の風景が、ただの移動空間ではなく、小さな人生が集まる場所に見え、絵本にもまた、韓国語の感性や日常が詰まっていると感じました。

韓国文学の世界

韓国語版と日本語版の絵本が並ぶ展示棚。小説やエッセイだけでなく、絵本にも魅力が詰まっています。

韓国語版と日本語版の絵本が並ぶ展示棚。小説やエッセイだけでなく、絵本にも魅力が詰まっています。


今回の展示を見て、まだ出会っていないK-BOOKをもっと読んでみたいという気持ちが芽生えました。

韓国文学の魅力は、言葉の違いを越えて、ページをめくるたびに韓国の日常や感情が、いつの間にか自分のすぐそばにあるものとして感じられるところにあります。

遠くにあるはずの誰かの物語が、自分の記憶や感情と重なっていく。

そこに、本が持つ不思議な力があるのだと思います。

「K-BOOK in TOKYO」は、そんな本の力を改めて思い出させてくれる時間となりました。

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr