[文・写真=田尾秀子]
みなさんは2025年9月27日に開通した韓国鉄道公社の新線、木浦ー宝城線をご存じでしょうか。
私はSNSでその情報を目にした瞬間、「いつかは乗ってみたい」と思いました。その思いは、それから1年も経たないうちに実現しました。友人を訪ねて麗水へ行く予定があった私は、普段とは違うルートでソウルへ戻ることにしたのです。木浦ー宝城線は全羅南道の東西を結ぶ、木浦駅から新宝城駅まで約82.5kmの新線です。
その時の様子や新線についてお伝えしたいと思います。
■ 木浦への鉄道旅のはじまり
順天駅 10時17分発のムグンファ号に乗ると、今回の鉄道旅が始まります
まず、友人の家から近い麗川駅からKTXで次の駅の順天駅まで向かいました。そして、その次は順天駅でムグンファ号に乗り換えて新宝城駅まで行きます。
そのまま乗っていても木浦駅まで行けますが、その日は土曜日で、SNSで見て印象に残っていた南道海洋観光列車「S-train」が運行されていました。まさにその列車だったこともあり、私は迷うことなくその観光列車に乗車することにしました。
とは言え、今回の私の目的はその観光列車に乗ることだけではありませんでした。新宝城駅は木浦ー宝城線の開通に合わせて新たに設けられた駅です。新線の起点となる駅がどのような場所なのか気になり、列車を待つ時間を利用して駅構内や、周辺の様子もじっくり見てみたいと思ったからです。
■ 新設された新宝城駅
慌ただしい日常を、ふと忘れさせてくれるようなのどかな景色でした
新宝城駅で下車した時に、駅員の方が「エレベーターはこちらです」と言いながら誘導してくださいましたが、私がその場に残っていると、どこへ行くのか尋ねられました。木浦駅までと答えると、なぜ下車したのか不思議そうな様子だったので、私は S-trainに乗るために下車したことを伝えました。そして、逆にこちらから「この駅は乗降客は多いですか?」と質問してみました。駅員の方の返事では、それほど多くないとのことでした。プラットホームからは、青い空の下に緑鮮やかな山々や田んぼが広がり、とてものどかな景色が印象的でした。
静かで新しい駅構内
プラットホームから駅構内に降りると、見るものすべてが真新しく、気持ちの良い空間が広がっていました。ただ、その一方で、駅員の方の話の通り利用客の姿は殆どなく、構内は静かでひっそりとしていました。少し寂しく感じましたが、韓国で開業間もない駅を訪れる機会は初めてだったため、その空間を独り占めしているような特別な気分になり、嬉しかったです。
待合室には乗車券購入方法を案内するポスターが貼られており、QRコードを利用する方法のほか、列車内で乗務員から購入することもできるそうです。
■ 駅の周辺
駅前にはバス停留所と駐輪場だけがありました
駅構内から外に出てみると、駅前に商店は一軒もなく、駅周辺もとても静かな雰囲気が広がっていました。開業間もない駅ということもあり、駅周辺はまだ発展途上の印象を受けて少し物足りないような気持ちにもなりました。しかし、次回は宝城を観光する計画をしている私にとっては、バス停留所があることから、バスで大韓茶園を経由し、栗浦(ユルポ)海水浴場へも行けることが分かり、とてもありがたく感じました。
駅構内や周辺を見てまわるうちに、S-trainの乗車時間が近づいてきました。すると、先ほど対応してくださった駅員の方が「もうホームに上がってもいいですよ!」と、わざわざ呼びに来てくださいました。その心遣いが嬉しく、列車への期待がさらに高まりました。
ずっと憧れていた「S-train」
ホームに上がると、待ちに待った木浦行きの南道海洋観光列車「S-train」がゆっくりとホームに入ってきました。これまでSNSで見て思い描いていた光景を目にし、感動で少し涙ぐんでしまいました。というのも、実はこのような新線を利用した旅程を自分一人で計画し、実際にたどるのは初めてだったからです。少し不安もありましたが、無事にここまで来られたことにホッとしたのもあったのかも知れません。
■ 木浦行き 南道海洋観光列車「S-train」と車窓の景色
一般座席と韓屋をイメージした座席
列車に乗り込んでから、事前に予約した席まで移動していると、途中には木目が基調の、韓国の伝統家屋(韓屋)をイメージしたような座敷席の車両がありました。靴を脱いで足を伸ばせるスタイルで、ゆったりとくつろげる非日常的な空間でした。また、私が予約していた普通席の車両も、天井には鶴の模様が施されており、特別感を味わうことができました。
車が行き交う道の向こうに、田んぼとマンションが広がる風景
広い車窓からはのどかな田園風景が続き、場所によっては海を間近に感じられる景色も広がり、鉄道だからこそ見られる、その土地に暮らす人たちの日常が垣間見えるようにも感じました。
車窓から海も望め、鉄道旅ならではの醍醐味を感じるひとときでした
途中下車はしませんでしたが、全羅南道の東側に位置する新宝城から西側の木浦へ向かって走っていることを思うと、これまで訪れる機会のなかった地域を、列車で結んで旅をしている実感がより強くなりました。
木浦駅前は乗降客が多く、駅構内も賑わっていました
新宝城駅から観光列車に乗車後、1時間と少しで無事に終着駅の木浦駅に到着しました。ソウルへは、さらにKTXに乗り換えて戻ります。
■ これからも延び続ける新線
木浦ー宝城線は、2025年9月に開通したばかりですが、2030年には南海岸圏鉄道網の整備により、木浦から釜山までKTXで結ばれる予定です。そうなると、かなり時間を要していた移動もより楽になり、様々な場所を訪れる楽しみが増えそうです。
今回は新線を体験したいという思いから旅程を組んだことで、列車は単なる移動手段ではなく、旅そのものを楽しむ存在なのだと改めて感じました。
観光地を巡るだけでなく、車窓を眺めながら列車に揺られる時間もまた旅の魅力です。
木浦ー宝城線は、私にとって、そんな鉄道旅の楽しさを教えてくれた特別な路線になりました。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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