[文・写真=坪井由美子]
夏に欠かせない風物詩といえば「かき氷」。日本では近年、「ごおらー(かき氷を食べ歩く人々)」という言葉が定着し、度々グルメ特集が組まれるほどの盛り上がりを見せていますが、韓国でもかき氷「ピンス(氷水)」は世代を超えて愛される国民的デザート。近年では独創的なアレンジを施した進化系ピンスが続々と登場し、日本に出店するお店も増えるなど大きな話題を呼んでいます。似ているようで実はかなり異なる、日本と韓国のかき氷文化。ピンスを愛してやまない筆者が、肌で感じた現地ピンス事情を、歴史や最新トレンドとともにお届けします。
ピンスの歴史:王室の珍味から国民的スイーツへ
韓国の伝統的なかき氷は、茹で小豆をのせた「パッピンス」(写真左)
韓国におけるピンスの歴史は古く、朝鮮王朝時代にまでさかのぼります。当時、冬の間に保存された氷は非常に貴重なもので、使用が許されたのは王族や特権階級のみ。氷を細かく砕き、甘いシロップや果物を添えて涼を楽しんでいたと伝えられています。
その後、近代化とともに製氷技術や冷蔵庫が普及すると、庶民の間でもかき氷が食べられるようになります。茹でた小豆とお餅をのせた「パッピンス」が誕生し、長らくピンスの代名詞となりました。
そして2013年頃になると、水ではなくミルクベースの氷を粉雪のように削るピンス専門チェーンが登場。これが爆発的ヒットとなり、従来の「ガリガリ食感」から「ふわふわ食感」へとトレンドが大きくシフトしました。
現在では、カフェ文化の興隆とSNSの影響も相まって、視覚的にも味覚的にも進化を遂げたピンスが次々と登場しています。
ここが違う!韓国ピンスの5大特徴
日本のかき氷をイメージして韓国でピンスを注文すると、その違いに驚くかもしれません。現地で実感する、韓国ピンスの主な特徴をご紹介します。
◆ 口の中でスッと消える「粉雪氷」
日本のかき氷はサクサク・ザクザクとした食感が主流ですが、韓国のピンスは粉雪のようなサラサラ・ふわふわの質感が特徴です。牛乳や練乳を混ぜたベースを凍らせて削るため、氷自体にも優しい甘みとコクがあります。
◆ 氷が見えないほどの豪快なトッピング
韓国では盛り付けのダイナミックさも重要です。フレッシュフルーツ、アイスクリーム、餅などが、下の氷が見えなくなるほど惜しみなく盛られます。味の重なりはもちろん、SNS映えする圧倒的なビジュアルも人気の理由です。
◆ 日本の約2倍?圧巻のボリューム
韓国のピンスはとにかく大皿・大盛りが基本。日本の一般的なかき氷の1.5〜2倍近いサイズ感があり、運ばれてきた瞬間思わず笑みがこぼれるほどの存在感があります。
◆ ピンスはよく混ぜて食べる
韓国にはビビンバやビビン麺など、全体をよく混ぜ合わせて食べる食文化があり、「混ぜるほどおいしくなる」といわれています。ピンスも然りで、スプーンを使って豪快に混ぜ、味を均一にして食べるのが一般的でした。ですが最近では、写真映えする美しい見た目を崩さないよう、あまり混ぜずに少しずつ食べる人も増えているようです。
◆ ピンスは分け合って食べる
韓国には一つの料理を複数人で分け合って食べる食文化がありますが、ピンスも例外ではありません。食後にカフェへ行き、友人や家族と1つの大きなピンスをスプーンでつつきながらおしゃべりに花を咲かせる——これこそが韓国の日常でよく見られる光景です。
韓国で定番人気の3大ピンス
小豆がのったパッピンス(右)やフルーツてんこもりのピンスが定番人気
◆パッピンス: 「パッ」は韓国語で小豆のこと。じっくり炊いた素朴な小豆と弾力のあるお餅がのった永遠の定番です。
◆インジョルミ・ピンス: 香ばしい「インジョルミ(きな粉餅)」とたっぷりのきな粉をトッピング。世代を問わず愛されるピンスです。
◆フルーツ・ピンス: マンゴー、メロン、スイカ、桃、柿、韓国の夏によく食べられるチャメ(まくわうり)まで。フレッシュなカットフルーツがてんこもりの、ビタミンたっぷりピンス。メロンやスイカを丸ごとくり抜き、器に見立てた迫力満点のピンスも人気です。
ピンスのトレンド
「半年ごとに流行が変わる」と言われるほどトレンドの移り変わりが速い韓国。最近ピンス界隈を賑わせているスタイルをご紹介します。
◆ 新感覚の野菜系ピンス
ここ数年で増えているとうもろこしのピンス。黒胡椒をかけるタイプも人気
近年、スイーツの枠を超えた野菜系ピンスが熱い視線を集めています。この数年で増えているのが、とうもろこしのピンス。人気のピンス専門店でいただいて驚いたのが、香ばしいコーンクリームに隠し味の黒コショウを振りかけていただくスタイル。冷たいコーンポタージュを味わっているようなクセになる美味しさでした。
韓国ではフルーツ扱いのトマトも人気。甘みのあるプチトマトはおやつ代わりに親しまれており、かき氷のトッピングにも使われます。
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健康志向に応えるヘルシー系ピンス
体に優しい韓方食材を使ったピンス
ウェルビーイングへの関心から、牛乳の代わりに豆乳やココナツミルクを使ったヴィーガン対応ピンスや、五味子茶、抹茶、紅茶といったお茶ベースのあっさりとしたピンスも人気上昇中。
私の一番のお気に入りは、お茶カフェでいただける韓方ピンス。クコの実などのジャムにアンズやかぼちゃの種、栗などがトッピングされ、体を温めるといわれるシナモンで風味づけされていて、優しい味わい。様々な食材の味わいや食感が混然一体となって絶妙においしく、そのうえ体に良いことをしているような気持ちにもなれる一杯です。
◆ビビンバにそっくりなビビンピンス
ビビンバで有名な全州(チョンジュ)では、名物の全州ビビンバを模した「ビビンバピンス(ビビンピンス)」がSNSで話題を集めています。真鍮の器にごはんに見立てたミルクかき氷を入れ、フルーツやお餅などのトッピングで多彩な具材を表現。ゼリーで作った目玉焼きやコチュジャン代わりの苺ジャムが添えられることもあります。
◆ 1万円超えも!超高級ホテルピンス
ソウルの若者や感度の高い人々の間で、夏のステータスとなっているのが、高級ホテルのプレミアムピンス。星付きシェフが監修し、最高級のアップルマンゴーや金箔をあしらった一品は、1つ10万ウォンを超えることも珍しくありません。日本円で1万円超えとは驚きますが、SNS映えも抜群で、「高級ホテルで極上の味を楽しむ」という特別感のある体験が人気を博しているようです。
◆ 爆発的ヒット中の一人用カップピンス
大バズり中の一人用カップピンス。スイートコーンやマンゴーのトッピングが人気
ここ数年で一気に市場を拡大したのが、コーヒーチェーン店が手掛ける一人用の「カップピンス(カッピンス)」です。本来はシェアが基本のピンスですが、近年の単身世帯の増加や手軽さを求めるニーズとマッチし、SNSを通じて大ブレイク。売り切れが続出するほどの熱狂ぶりを見せ、今やベーカリーやかき氷専門店も続々と参入しています。ミニサイズといえども十分な満足感があり、コスパの高さも抜群です。
チングとピンス
私自身、韓国では猛暑の合間の休憩を兼ねて、しょっちゅうコーヒー店に駆け込み、カップピンスにお世話になっています。
新しいものが好きで、一度ブームが起きれば自由な発想と圧倒的なスピード感で独自のアレンジを加えていく——ピンスの進化には、そんな韓国の力強いエネルギーが凝縮されているようにも感じます。
ですが、やはり大きなピンスを大切なチングたちと囲んで一緒に食べる時間は格別。そんなひとときを通じ、人と人との距離がぐっと縮まる温かさこそが、韓国のピンス文化が持つ一番の魅力だと思います。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
hjkoh@korea.kr