[文・写真=田尾秀子]
世宗広場に建つ李舜臣将軍像 その奥には世宗大王像と景福宮(光化門)が見え、韓国の歴史を象徴する風景が広がっています
韓国・ソウルの王宮「景福宮」の前には、世宗大路がまっすぐ延びています。世宗大路の中央にある世宗広場に建てられている世宗大王像と李舜臣将軍像をご覧になったことがある方も多いのではないでしょうか。今回はその二人のうちの李舜臣将軍にスポットを当て、全羅南道・麗水を訪ね、李舜臣将軍とこの地の歴史をご紹介します。
■ 李舜臣将軍とは
16世紀末の朝鮮王朝時代、豊臣秀吉による壬辰倭乱(イムジンウェラン)の際、朝鮮水軍を率いて国難に立ち向かったのが、李舜臣(イ・スンシン)将軍です。
彼は優れた海戦術と亀甲船(コブクソン)を駆使し、数々の海戦で勝利を収めたことから、現在でも韓国を代表する英雄として広く尊敬されています。
■ 李舜臣広場
麗水を訪れたら、必ずと言っても過言ではないほど多くの人が足を運ぶのが李舜臣広場です。市民の憩いの場であるとともに、麗水を代表するランドマークとして親しまれています。
広場には、李舜臣将軍の生涯や功績を伝える石碑が建っています
広場のすぐ側からは、突山大橋や亀甲大橋、海上ケーブルカーなど、麗水を代表する景色を一望できます。昼間は解放感あふれる海の景色が広がり、夜にはライトアップされた橋や街の灯りが景色に彩りを添え、昼間とは違った表情を見せてくれます。
■ 広場に建つ李舜臣将軍の銅像
李舜臣将軍が1591年に全羅左水使として着任した麗水には、全羅左水営の本営が置かれていました。将軍はここを拠点に数々の海戦で勝利を収めました。そのため、広場に建つ銅像は、かつて将軍が軍令を発した鎮南館を背に、麗水の海をまっすぐ見据えるように配置されています。
■ 全羅左水使・本営とは
全羅左水使とは、朝鮮王朝時代に全羅道東部(左道)の水軍を率いた最高責任者で、「全羅左道水軍節度使」の略称です。本営とは、その水軍を指揮・統括する拠点のことで、李舜臣将軍が着任した当時は麗水に置かれていました。
当時の亀甲船を再現した復元船
■ 広場に展示されている亀甲船(コブクソン)
亀甲船は、麗水では李舜臣広場以外にも、EXPO駅前や梧桐島(オドンド)にも展示されていますが、この広場のものは当時の姿を再現した復元船で、内部を見学することもできます。
また、毎年5月には、この広場を中心に「麗水 亀甲船祭り」が開催され、市民や多くの観光客で賑わいます。
■ 亀甲船の内部
実は、亀甲船の内部を見学するのは今回が初めてでした。外から眺めるだけでは分からなかった船内は、上下二層に分かれており、当時の兵士たちの様子を再現した展示を見ることができます。船内に再現された様子を見ながら、この船で戦った兵士たちに思いを馳せると、歴史がより身近に感じられました。
■ 亀甲船の歴史
亀甲船は、高麗時代からその原型となる船が存在したとされ、李舜臣将軍はこの船を改良し、数々の海戦で勝利を収めました。
■ 亀甲船の特徴
甲板を木版で覆い、その上には鋭い鉄製の錐(きり)が取り付けられていました。これは、日本軍が船に飛び移って戦う接近戦を防ぐための工夫です。また、船首の龍の頭の口からは、硫黄などを燃やした煙を噴き出し、敵の視界を遮る仕掛けが施されていたそうです。さらに、龍の口や船体に設けられた砲門から大砲を発射し、敵を威嚇・攻撃する機能も備えていました。
鎮南館は、現存する韓国最大級の単層木造建築。その長大な姿は、一枚の写真に収まりきらないほどの迫力があります
■ 鎮南館(チンナムグァン)
地方の役所である官衙(かんが)と、国からの使節をもてなす客舎(宿舎)を兼ねた建物で、現存する韓国の単層(1階建て)木造建築としては最大規模を誇ります。国宝第304号に指定されています。
もともとは、李舜臣将軍が朝鮮水軍を指揮し、多くの海戦で勝利を収めた三道水軍統制営の中心施設であり、護国の精神を今に伝える歴史的な場所です。また、三道水軍統制営が置かれていた当時、鎮南館は全羅左水営の客舎としての役割も担っていました。
■ 三道水軍統制営とは
朝鮮王朝時代に慶尚道・全羅道・忠清道の三道における水軍を総括した軍事司令部のことです。
実は鎮南館は、これまでにも何度か鎮南館を訪れていましたが、内部を見学できたのは今回が初めてでした。というのも、約7年間にわたる修復工事が行われていたからです。
李舜臣広場から海沿いを少し歩くと出会える景色 海辺の街・麗水らしい散策も楽しめます
初めて麗水を訪れる方は、美しい海やケーブルカー、梧桐島(オドンド)、美味しい海の幸など、魅力あふれる観光スポットを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。実際には私もそのなかの一人だったかも知れません。
私は何度も麗水を訪れてきましたが、今回は初めてこの地を訪れる友人と一緒に巡ることで、李舜臣将軍ゆかりの地として、人々が麗水の歴史を大切に守り、伝え続けていることを改めて実感しました。
そして、どの場所を訪れる時も、その土地が歩んできた歴史や背景を知ることで、目の前に広がる景色や建物が、より深い意味を持つものとして感じられるのだと思います。
次に旅をする時は、その土地の歴史や文化にも少し目を向けながら歩いてみてはいかがでしょうか。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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