名誉記者団

2026.10.19

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【文・写真=加藤清】

【朝鮮時代の科挙が現代によみがえる】

2026年10月5日、ソウル・鍾路区の成均館。秋色に染まり始めた木々に囲まれた明倫堂の前に、淡い緑色の道袍(トポ)をまとい、黒い儒巾(ユゴン)をかぶった大勢の外国人が集まった。

一見すると、朝鮮時代の科挙試験の風景が現代によみがえったかのようだ。この日開催されたのは「第1回在韓外国人科挙試験(제1회 재한외국인 과거시험)」。成均館儒道会総本部の創立80周年と「2026儒教文化祝典」の一環として開かれ、55か国から約200人の在韓外国人が参加した。


外国人留学生たちと共に科挙試験にチャレンジする

外国人留学生たちと共に科挙試験にチャレンジする


私も日本人参加者の一人として、このユニークな“現代の科挙”に挑戦した。会場となった成均館は、朝鮮王朝時代の最高教育機関として知られる場所だ。特に今回使用された丕闡堂(ピチョンダン)は、実際に科挙試験が行われた歴史を持つ。王が文廟に参拝した後に実施された「謁聖試(アルソンシ)」の舞台でもあったという。つまり今回のイベントは、単に科挙の雰囲気を再現しただけではない。かつて儒生たちが立身出世を夢見て試験に挑んだ歴史的な空間で、今度は世界各国から韓国にやって来た外国人が筆を握ったのである。


儒教式の敬礼を実践する場面

儒教式の敬礼を実践する場面


【世界55か国の“現代の儒生”たち】

参加者には儒巾と道袍が用意された。普段は大学や研究室などで学んでいる外国人留学生たちが伝統衣装に着替えると、会場の雰囲気は一変した。参加者の多くは韓国で学ぶ優秀な外国人留学生たちだ。会場では韓国語で自然に会話を交わし、試験が始まると韓紙を前に筆を取り、流暢な韓国語で自分の考えを書き進めていた。外国人を対象にした文化体験という枠を超え、韓国社会の中で学び、生活し、韓国を深く理解している人々が集まったことが印象的だった。

【「母国に伝えたい韓国の魅力」を筆で問う】


儒生の伝統衣裳をまとって儒学の基本を学ぶ参加者たち

儒生の伝統衣裳をまとって儒学の基本を学ぶ参加者たち


試験問題は二つの課題から選択する方式だった。一つは「꿈은 이루어서 자신에게 선물하는 거야(夢はかなえて、自分自身への贈り物にするもの)」という言葉をハングルで書くもの。もう一つは「自国に紹介したい韓国の良いところを三つ選び、それぞれの理由を書きなさい」という課題だった。


科挙試験開始、緊張の20分

科挙試験開始、緊張の20分


後者は、単なる韓国語能力だけを試す問題ではない。「あなたは韓国で何を見て、何を感じたのか」そして、「その韓国を自分の国の人々にどう伝えたいのか」が問われるテーマでもあった。

初代「状元」に選ばれたのは、タンザニア出身のエロイ・エセコさん(28)。エセコさんは母国に紹介したい韓国の魅力として、韓国の速い発展、高い治安、そして人と人との間に生まれる「情(정)」を挙げた。2位の榜眼にはコンゴ共和国出身の参加者、3位の探花には中国出身の参加者が選ばれ、合わせて33人が「及第」した。

【科挙試験を越えた国際交流の場】

しかし、この日の魅力は科挙試験だけではなかった。会場の周囲には各国の文化や料理を紹介するブースが並んだ。ガーナやアフリカ諸国などのブースを訪れると、参加者たちは自国の食文化を紹介しながら、国籍を越えて自然に交流していた。報道によると、約10か国の文化・食のブースが設けられたという。


カンボジア留学生とカンボジア料理

カンボジア留学生とカンボジア料理


私自身も各国のブースを巡り、料理を味わいながら参加者たちと話をした。韓国で開催される行事でありながら、韓国文化を外国人が一方的に「学ぶ」のではない。それぞれが自分の国の文化も紹介し合う。その光景を見ていると、このイベントが「韓国文化体験」であると同時に、一つの国際交流の場になっていることを実感した。

【伝統文化から世界へ――広がるK-儒教】

世界王立アカデミーの신광철(シン・グァンチョル)総長の歓迎辞も印象に残った。この日の行事をめぐっては、成均館儒道会総本部が世界王立アカデミーK-Humanキャンパスや外国人留学支援センターなどと連携し、文化・知識・青年交流、海外人材の韓国定着支援、グローバル人材育成などを進める方針も示された。신광철総長は上位入賞者に「紅牌」を授与する役割も担った。


シン・グァンチョル 世界王立アカデミー総長の祝辞 (신광철 세계왕립아카데미 총장)

シン・グァンチョル 世界王立アカデミー総長の祝辞 (신광철 세계왕립아카데미 총장)


祝辞を熱心に聞く参加者たち

祝辞を熱心に聞く参加者たち


さらに会場では、アフリカの打楽器演奏、多国籍サムルノリチームによる公演、「韓国の空間―韓国のソンビと筆」をテーマにしたファッションショーなど、多彩なプログラムが続いた。

【最後は仮面をつけ、世界が一つになった】


明倫堂前の広場でサムルノリとアフリカ太鼓に合わせて踊る参加者たち

明倫堂前の広場でサムルノリとアフリカ太鼓に合わせて踊る参加者たち


そして最後に、特に心に残る光景があった。参加者たちが色鮮やかな仮面をつけ、明倫堂前の広場で一緒に踊り始めたのだ。国籍も言語も違う。育ってきた文化も違う。しかし、その瞬間には「どこの国から来たのか」という境界が薄れ、皆が笑いながら同じ場所で体を動かしていた。私には、その光景がとても平和的に映った。

約200人の外国人が集まったこの日の成均館では、「競争する試験」がいつしか「互いを知る交流」へと変わっていたように思う。かつての科挙は、国を担う人材を選ぶための試験だった。それから長い時を経た2026年。同じ成均館に、世界55か国から人々が集まり、韓国について考え、韓国語で自分の思いを書き、互いの文化や食を紹介し合った。

そして最後は、みんなで仮面をつけて踊った。「外国人が韓国の科挙試験を体験した」というだけなら、珍しい文化イベントで終わったかもしれない。しかし実際に参加して感じたのは、この行事の本当の価値は「試験」の外側にあったということだ。韓国の伝統文化を入口として、世界各国の人々が出会う。韓国について語り、自分の国についても語る。そして、お互いを知る。


明倫堂を背景に世界各国の参加者が一緒に踊る姿

明倫堂を背景に世界各国の参加者が一緒に踊る姿


【600年の伝統から、新しい交流の未来へ】

成均館儒道会総本部は、今回の在韓外国人科挙試験を今後定例化し、韓国と世界の文化交流をさらに広げていく方針を示している。また、イタリア文化院との協力をはじめ、伝統文化や青年・学生交流を通じた「K-儒教文化の世界化」も進める計画だ。

600年以上の歴史を持つ成均館という空間で、古い伝統をそのまま保存するのではなく、現代を生きる外国人たちが実際に体験し、新しい交流へとつなげていく。伝統とは、過去を見ることだけではない。過去から受け継いだものを使って、今を生きる人々が出会い、未来につなげていくことなのかもしれない。秋空の下、明倫堂を背景に世界各国の参加者が一緒に踊る姿を見ながら、そんなことを感じた「第1回在韓外国人科挙試験」だった。

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr