[文・写真・動画=加藤清]
【ハングルの日100周年、34万人が訪れた文化祭典】
2026年10月9日から11日まで、韓国・世宗特別自治市の世宗湖水公園と世宗中央公園で「2026世宗ハングル祭り(2026 세종한글축제)」が開催された。世宗特別自治市が主催し、世宗市文化観光財団が主管するこの祭りは、ハングルの文化的価値を国内外に伝えることを目的としている。今年はハングルの日制定100周年、訓民正音頒布580周年にあたる記念の年。「世界中にハングル」を意味する「온누리에 한글」をスローガンに、82種類の公演・展示・体験プログラムが用意された。世宗市の発表によると、3日間の来場者は約34万人。文字文化をテーマにした祭りとして、大きな関心を集めた。
世宗湖公園舞台島で行われた韓国伝統音楽祭の様子
【文字のお祭りで何をするのか?】
私は最終日の10月11日に会場を訪れた。今回の取材では「ハングルのお祭りでは、実際に何をするのか」という疑問を出発点に、「見る」「遊ぶ」「感じる」という3つの視点からハングルの魅力を探ることにした。最初に注目したのは、文字の造形美である。会場にはハングルを活用した装飾や展示、生活用品などが並び、普段は言葉を伝える手段として使われる文字が、デザインの素材として表現されていた。
【書く、選ぶ、組み合わせる――遊びから学ぶハングル】
美しい秋の世宗湖公園
今回の祭りでは、鑑賞だけでなく、来場者自身が参加できる体験プログラムも充実していた。私が参加したのは、韓国の伝統衣装を着て挑戦するハングル書道体験である。世宗大王にまつわる言葉から好きな一節を選び、筆を使ってハングルを書き上げる。普段はパソコンやスマートフォンで入力する文字も、筆で書くと線の配置や文字の形を意識するようになる。
ハングルの仕組みを遊びながら理解できる”ハングルすくい”
伝統衣装をまとって書道体験する様子
もう一つ興味深かったのが「ハングルすくい」だ。金魚すくいのように文字をすくい上げ、集めた子音や母音を組み合わせて言葉を作る。韓国語を学ぶ外国人にとって、ハングルの仕組みを遊びながら理解できる体験である。言語教育は教室の中だけで行われるものではない。文字を使った遊びや創作活動も、言語と文化への関心を育てる入口になることを実感した。
【人と人をつなぐ、文化としてのハングル】
祭りの魅力は、文字に関する展示や体験だけではなかった。会場では、音楽やストリートパフォーマンスを楽しむ人々、体験に参加する子どもたち、記念写真を撮る家族の姿が見られた。祭り全体では、市民が企画・運営する「祭りの中の小さな祭り」やハングル商品博覧会、人工知能(AI)を活用した映像公募展なども実施された。
また、初日の9日には約2万人が参加した「ハングルラン」や、2,000機のドローンによる特別公演が行われた。こうした多様な催しは、文字を保存・継承するだけでなく、現代の芸術や技術と結びつけ、新しい文化的価値を生み出そうとする試みでもある。私が会場で感じたのは、ハングルが韓国語を理解する人だけのものではなく、文化体験を通じて外国人も親しめる存在になっていることだった。
若者たちのダンス公演
【580年前の願いが現代につながる】
ハングルの原点は、朝鮮王朝第4代国王・世宗大王が1443年に創製し、1446年に公布した「訓民正音」にある。「民に教える正しい音」という意味を持つ訓民正音は、漢字を十分に使えなかった人々も、自分の考えを文字で表現できるようにするために生み出された。
また、1926年には朝鮮語研究会などが、ハングルの日の起源となる「カギャの日(가갸날)」を制定した。日本統治下で韓国語と文字を守ろうとする取り組みの一つだった。それから100年を迎えた今年、世宗市では文字を通じて人々が集い、創造し、交流する光景が広がっていた。日本人として韓国に暮らし、ハングルを日常的に使う私にとって、今回の取材は文字の役割を見直す機会となった。ハングルは単なる情報伝達の道具ではない。歴史を受け継ぎ、文化を生み出し、異なる言語を持つ人々の交流を促す存在でもある。
積木を組み立てて遊ぶ子供達
「ハングルのお祭りでは何をするのか」
その答えは、文字を見ること、文字で遊ぶこと、そして文字を通じて人と文化を理解することだった。世宗大王が目指した、誰もが文字を使える社会。その理念は580年を経た現在、誰もが文字文化に触れられる祭りの中にも息づいていた。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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