チョン・ボングン
国立外交院兼任教授兼地政学センター顧問
2025年10月末に慶州(キョンジュ)で行われた韓米首脳会談において、両首脳は韓米同盟を「未来志向で包括的な戦略的同盟」へと拡大・発展させることで合意した。同会談の成果の中でも、韓国の原子力潜水艦(原潜)導入が特に注目された。11月14日に発表された韓米首脳会談の共同説明資料(ジョイントファクトシート)には「韓国の原子力潜水艦建造を承認し、核燃料の調達を含む事業案件を進展させるために緊密に協力」するという米国の立場が明記された。これにより韓国の原子力潜水艦事業は20年を経て初めて米国の支持を得ることとなり、事業進展のための政治外交的基盤が整った。しかし、原子力潜水艦プロジェクトは巨額の費用と時間がかかり、戦略的な影響も大きい。その分、先行きも決して楽観視できない。この時点で原子力潜水艦の必要性と用途に確信が持てなければ、原子力潜水艦事業は内外の様々な障害にぶつかり、方向を見失うこともあり得る。以下では「韓国が原子力潜水艦を必要とする理由とその用途」について述べることにする。
第一に、韓国の原子力潜水艦は、北朝鮮の高度な核・ミサイルの脅威に対応するのに利用できる効果的な非核抑止手段である。北朝鮮は50~100基の核兵器を保有していると推定される。大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略巡航ミサイル、極超音速ミサイル、核魚雷などあらゆる運搬手段を導入し、弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)も開発中である。2022年に北朝鮮で制定された「核武力政策法」は、任意・先制・攻勢的な核の使用について規定しており、韓国の国民に実存的な安保上の脅威をもたらした。また、北朝鮮のキム・ジョンウン国務委員長は最近、南北関係をもはや同族関係ではなく「敵対的な二国間関係」と再定義し、核の脅威をさらに増大させた。
韓国の一部では北朝鮮の核の脅威に対抗するために核武装すべきだという要求があるものの、李在明(イ・ジェミョン)政府は韓国が国際規範を率先して遵守する「国際社会の責任ある国」だという理由でこれを拒否した。実際、韓国は経済の対外依存度が高い通商国家である。経済を破綻させる核武装は決して選択できない。したがって、韓国は強力な「非核」通常戦力による抑止力を最大化しなければならない。現在、韓国は最先端のディーゼル・非大気依存推進(AIP)潜水艦を運用している。しかし、潜航時間、運航距離、搭載ミサイルなどの制約により、北朝鮮の核の使用を抑止したり、戦略潜水艦を攻略したりするには限界がある。
韓国の原子力潜水艦は、核燃料の補給なしで数カ月にわたり潜航しながら北朝鮮の戦略潜水艦を追跡し攻撃できる唯一の非核軍事手段である。原子力潜水艦は、北朝鮮の対南核攻撃が差し迫った時には先制的に打撃を与える手段となり、実際に攻撃された時には生存戦力を利用した報復の手段を提供する。このような役割は、韓国軍が推進してきた「3軸体系」―先制打撃、ミサイル防衛、報復攻撃―のうち2つの軸を大幅に強化する。この点で原子力潜水艦は北朝鮮に対する非核抑止力のコア戦力となるだろう。
第二に、韓国の原子力潜水艦は、韓米同盟と連携した域内の抑止・防衛態勢を実質的に強化し、朝鮮半島と北東アジアの「戦略的安定性」を高める効果がある。最近、北朝鮮・中国・ロシアの3カ国における核・ミサイル戦力と海軍力が急速に増強されている。一方、域内の米軍戦力は比較的停滞気味である。これによって朝鮮半島と周辺海域における勢力のバランスと抑止構造が揺らげば、一部の勢力が冒険的な軍事行動に出るリスクが高まる。韓国の原子力潜水艦戦力は、韓米同盟および韓米日安保協力の枠組みでそうした戦力の空白を埋め、域内の軍事バランスと戦略的安定性を回復・維持するのに貢献するだろう。
一部では、韓国の原子力潜水艦の導入が長期的に見て韓米同盟からの離脱や独自の核武装の推進につながりかねないと懸念する声がある。しかし、北朝鮮と中国の核戦力は急速に増強されている。2025年10月の中国における戦勝記念日閲兵式で確認されたように、北朝鮮・中国・ロシアの戦略的結束が強まっているため、韓国にとってはむしろ韓米同盟の強化と韓米日安保協力の拡大が欠かせない状況である。韓国政府が繰り返し明言してきたように、原子力潜水艦は特定の国を標的にした攻撃手段ではない。韓米同盟および韓米日安保協力の枠組みの中で防御的・抑止的任務を遂行し、域内の戦略的安定性を確保するための戦略的資産である。
第三に、原子力潜水艦は、韓国が平和愛好国、自由主義的国際秩序を支持する中堅国、世界6位の通商大国として、世界平和と国際安全保障のための公共財を提供する過程で活用できる中核戦略資産である。今日の世界では従来の自由主義的国際秩序に亀裂が生じる中、各地で軍事的衝突やグレーゾーン紛争が拡大し、海賊行為が横行している。このような環境において、韓国は中堅国として率先して国際社会の共通の利益を守るため、国際安全保障上の任務を果さなければならない。韓国は、国益のためにも海上輸送路の保護に積極的に参加すべきである。通商大国かつ資源貧国として、世界を結ぶ海上輸送網に経済を全面的に依存しているためである。遠距離作戦が可能な原子力潜水艦は、こうした国際安全保障上の任務における中核的な手段となる。
韓国の原子力潜水艦は、低濃縮ウラン(LEU)核燃料を選択することで、核不拡散の国際的な枠組みと規範を率先して遵守する。韓国は原子力潜水艦に使用する核燃料の供給を米国に要請し、国内で軍事用の濃縮を行わないという立場も明確に示した。こうした韓国の事例は、他の非核保有国の原子力潜水艦が高濃縮ウラン(HEU)を使用したり、あるいは自国の濃縮生産によって内在的な核拡散リスクを抱えていることとは明らかに対照的である。
以上のことをまとめると、韓国が原子力潜水艦を保有することは、北朝鮮の核兵器に対する「非核抑止力」の確保、米国との役割分担による協力的安全保障の強化、中堅通商国として世界・海洋の安全保障に貢献するための戦略的な選択である。これは複合的な安全保障上の脅威の中、責任ある中堅の非核保有国が取れる最も合理的な方法である。
チョン・ボングン教授は国立外交院兼任教授兼地政学センター顧問であり、朝鮮半島、北朝鮮の核問題、国際安全保障、核不拡散、核政策などを長年研究してきた専門家である。韓国核政策学会会長も務めている。