[ホン・ヒョンイク]
元国立外交院長
年明け早々に行われた韓中首脳会談
韓国の対外政策の主軸は、やはり米国との同盟にある。しかし、韓半島の平和と安定、韓国経済への影響を考えると、中国もまた無視できない存在だ。中国は、韓国と数千年にわたり交流を重ねてきた隣国であると同時に、分断以降は北朝鮮と国境を接し、北朝鮮貿易の9割以上を担うほか、エネルギーを安価に供給するなど、韓半島の情勢に大きな影響を及ぼしてきた。
そのため、北朝鮮の核問題の解決には米国の協力が不可欠である。一方で、韓半島の平和を再構築し、平和的な統一を実現するためには、中国の協力も欠かせない。
2016年のTHAAD配備以降、中国の「限韓令」により停滞していた韓中関係は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の偏った理念外交の影響も重なり、準敵対関係に近いほど悪化した。しかし、習近平主席がAPECの重要性を認識していることを踏まえ、李在明(イ・ジェミョン)大統領は習主席を国賓として招待し、慶州での会談を通じて関係正常化の糸口を開いた。政府はこの流れを生かし、李在明大統領の早期訪中を推進した。新年初めの外賓接待を控えていた中国も、韓国の戦略的重要性を認め、わずか2カ月後に、北京で首脳会談が開催された。
信頼回復と全面的正常化の土台づくり
中国側は、今回の会談で前例のない礼遇を示した。空港での出迎えは次官級から長官級へと格上げされ、さらに習近平主席が自ら先んじて李大統領を出迎えた。首相や国会議長格の全人代常務委員長など、国家序列の1~3位がそろって会談に臨んだことは、格別な配慮と受け止められている。
実質的な成果も得られた。韓国は、単なる関係正常化にとどまらず、相互尊重と互恵的な協力の促進を通じて、韓半島および北東アジアの平和の基盤を強化し、新たな発展の動力を創出することに注力した。最も大きな成果は、首脳間の人間的信頼が一段と深まった点である。予定では30分だった首脳会談が90分に及んだのは、議題中心の議論を超え、両首脳が率直かつ誠実な対話を重ねる中で、個人的な信頼関係が築かれたことを物語っている。
李大統領はまず、経済・産業・民生の各分野において、両国が「ウィンウィン」の互恵的協力を最大化するよう提案した。李在明政権が掲げる国益重視の実用外交は、中国の「求同存異」および「実事求是」の外交路線と調和し、共通の接点を生み出した。その結果、中国の技術発展に伴い、両国の経済関係が従来の垂直的な分業から競争的な協力関係へと変化していることを認めたうえで、人工知能(AI)などの先端産業分野において、水平的な協力関係を新たに構築することでも合意した。
昨年11月の首脳会談では7件の覚書が締結されたが、今回の会談では14件に大幅に増加した。さらに、韓国にある中国の「石獅子像」文化遺産を中国に寄贈する証書も含め、合計で15件の署名が行われた。特に、産業通商部と中国商務部間の定例協議体の運用、両国産業団地間の投資活性化、「デジタル技術協力MOU」などが締結され、産業分野ごとの協力が進む見通しである。
共同声明などの発表や、韓半島の非核化や南北対話に向けて、中国が努力するという具体的な発言はなかった。中朝関係を考慮せざるを得ない中国が、明確な立場を表明することは当初から期待しにくかったと、李大統領は説明している。それでも李大統領は、北朝鮮の核問題を含め、韓半島の平和に向けた仲裁の役割を習主席に要請した。これに対し習主席は、これまでの韓国の努力を評価したうえで、「忍耐心を持つ必要がある」と応じた。具体的な発言内容は公開されなかったが、両国が今後も創造的な方策を模索していくことで一致した点は、前向きに評価できる。
中国は、南北や米朝対話の友好的な環境を整え、その実現を支援するなど、建設的な役割を果たす余地が大きくなった。
李大統領は、長期的には韓半島の非核化を堅持する一方、短期的には北朝鮮の核活動の一時中断と、それに伴う補償や代価の支払いによる妥協が現実的である、という暫定的な結論に至ったとみられる。中国もまた、李大統領の真正性を北朝鮮側に伝える意向を示した。
「限韓令」の完全な解消には時間を要するとみられるが、第一段階として囲碁やサッカーの交流を拡大し、ドラマや映画の上映は今後の議論で決定するなど、漸進的・段階的な開放が期待される。西海(ソヘ・黄海)の不法構造物についても、李大統領の提案を受け、中間線の確定に向けた次官会議が年内に開催される見込みである。
実用外交の真価
何より今回の会談の真価は、両首脳が厚い信頼を築いたことを超え、関係の全面的復元に合意した点にある。特に、両国内の嫌悪感情を克服する意志は、実質的な協力基盤を固める重要な動力になるとみられる。
李大統領は、主要国益を中心に相互尊重する原則に基づき関係を管理する観点から、「一つの中国」原則の尊重を表明し、韓国の原子力推進潜水艦確保の必要性を強調した。さらに、両国海軍の共同救助訓練も提案した。
これにより、韓米同盟を対外戦略の基調としつつ、周辺国との協力も堅持するという戦略的自律性が示された。
両国首脳は、外敵に対抗して共同闘争した歴史を共有していることに共感した。
その一方で、李大統領は日本を不必要に刺激しない節制された外交表現でバランスを取った。
他国との摩擦を最小限に抑えつつ、互恵的な協力を重視するという李大統領の実用外交の基調「みんなで平和に、共に繁栄しよう」は、奈良県での高市首相との首脳会談や対北朝鮮政策においても、引き続きその真価を発揮すると期待される。
洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)元国立外交院長は、1997年より世宗(セジョン)研究所で、北朝鮮の核問題、南北関係、韓米同盟、韓ロ関係、韓半島の和平体制の構築など、韓国の国家安全保障および国家戦略に関する研究に従事してきた。また、国政企画委員会の外交安保分科長も歴任している。