青瓦台(チョンワデ)の迎賓館で開かれた新年記者会見で取材陣の質問に答える李在明大統領=1月21日、ソウル、大韓民国 青瓦台
ヤン・ムジン(北韓大学院大学校 碩座教授)
2026年4月27日は、、歴史的な「4・27板門店(パンムンジョム)宣言」の採択から8周年を迎える日である。2018年春、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が軍事境界線を挟んで握手を交わした光景は、韓半島に平和が定着する可能性を世界に力強く印象付けた。当時、両首脳は韓半島においてこれ以上の戦争は起きないと言明し、南北関係の全面的な発展と平和体制の構築を厳粛に宣言した。しかし、その希望に満ち溢れた春の記憶が長く続くことはなく、それ以降、南北関係は再び冬の時代へと逆戻りした。
8年が経過した現在、世界のみならず韓半島をめぐる情勢も様変わりしている。世界の地政学的な秩序は、かつてないほど複雑かつ厳しさを増している。ウクライナ戦争の長期化に加え、中東での戦争は一カ月以上続いており、ホルムズ海峡の封鎖に伴う原油高や物価高は、国民生活を直撃している。
ここから我々が得るべき教訓とは何か。それは、言うまでもなく「平和の重要性」である。かつてベトナム戦争への参戦経験を持つベトナム人作家は、「最悪の平和でも、最善の戦争よりマシだ」という言葉を残している。世界が絶え間ない戦争や対立に直面する中、この戦争体験者による切実な叫びは、私たちが「平和」という価値をいかに捉えるべきかを、改めて問いかけている。
昨年6月に発足した李在明(イ・ジェミョン)政権は、「4・27精神」を継承・発展させてきた。「最も確実な安保は、戦う必要のない平和な状態を築くこと」という方針の下、平和を最高の価値に据え、南北が共存共栄する平和共存の政策を発展させてきた。また、前政権下で「強対強」一辺倒に傾いた南北関係を和解と協力の方向へと戻すための大胆かつ先制的な措置を講じてきた。その中心には、挑発や緊張拡大を抑えつつ、対話の余地を模索していく「実用的・二重的(ツートラック)」アプローチがある。
しかし、8年前と現在の南北関係は大きく異なる。2018年の「平昌(ピョンチャン)冬季オリンピック」を契機に生まれた平和ムードの中での「シンガポールにおける米朝首脳会談」とは対照的に、翌年の「ハノイでの米朝首脳会談」が物別れに終わり、北朝鮮は、南北対話の扉を閉ざした。その後、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権による強硬一辺倒の対北朝鮮政策は、金正恩体制が「敵対的二国家」政策へと舵を切る要因となった。北朝鮮は、韓国との関係を断絶し、核戦力の強化を図る一方で、ロシアや中国など、社会主義国との連携を深めてきた。
重要なのは、北朝鮮が打ち出した「二国家論」に、南北対話の可能性を「完全に」閉ざす目的があるのかという点である。かつての東ドイツでは、1974年の憲法改正によって「ドイツ民族」に関する記述をすべて削除し、事実上の「二民族二国家論」を採用した。しかし、その一方で西ドイツとの対話や交流の窓口は閉ざさず、結果として「ドイツ統一」は全く予期せぬ平和的な方法で実現した。「閉ざされた扉も、いつかは開く」という教訓は、繰り返し証明されてきたのである。
この厳しい現実の中、李在明政権はいかにして南北対話の糸口を見出していくべきだろうか。そのためには、短期的な成果に執着することなく、長期的に信頼を構築していく戦略が欠かせない。
第一に、韓半島における軍事的緊張の緩和が挙げられる。南北間の偶発的衝突を防止するため、軍同士の最低限の対話チャンネルを復元することが喫緊の課題だ。また、「9・19軍事合意」を復元し、北朝鮮に対して信頼構築への意志を示すことも重要である。
第二に、人道主義に基づく協力を対話の呼び水として活用すべきだ。災害対策や感染症の予防、保健医療協力、さらには共有河川の共同利用などは、政治的な状況と切り離して独自に推進できる分野である。国際的な制裁下においても人道支援は認められており、これらを足がかりとして対話の機会を模索していくことが求められる。
第三に、多国間外交を活用した迂回的アプローチを並行して進めるべきである。北朝鮮が韓国との二国間対話を拒否している現状において、米国・中国・ロシアといった周辺国を通じて間接的にメッセージを伝え、対話の環境を醸成する平和外交が重要となる。韓米関係や韓中関係などを基盤に、南北対話と米朝交渉が相互に作用する構造を構築することが解決のカギを握る。
第四に、民間交流や市民社会による取り組みを積極的に後押しすることである。学術・文化・スポーツ分野における南北交流や宗教団体・非政府組織(NGO)が中心となる民間レベルの接触は、現時点で容易ではないと見られる。しかし、将来の進展を見据え「種をまく」ような地道な取り組みは、今後も継続していくべきである。
第五に、韓国国内における対立の解消と、対北朝鮮政策に関する社会的コンセンサスの形成が必要だ。超党派の対話機構や官民の協力プラットフォームを構築し、対北朝鮮政策の持続可能性を高めていかなければならない。平和への意志は、平和共存政策を進めるにあたって、揺るぎない礎となるだろう。
「4・27板門店宣言」は、韓半島のすべての人々が、戦争のない平和を希求するという、普遍的な願望の表れであった。その切なる思いは、8年が過ぎた現在も色あせるどころか、より一層切実なものとなっている。北朝鮮がいかに敵対的な「二国家」政策を推進しようとも、南北が「韓半島」で暮らしているという地政学的な事実、数千年にわたり共有されてきた歴史や文化遺産、同じ言葉を話すという「民族のアイデンティティ」は不変である。当面の状況に挫折してはならない。たとえ対話の扉が閉ざされているとしても、対話を模索し続けることこそが、「4・27板門店宣言」から8周年を迎えた今、我々に課された宿題といえるだろう。
北韓大学院大学校のヤン・ムジン碩座教授は、長らく南北関係・北朝鮮政治を研究してきた専門家であり、現在、統一部の平和統一顧問会議の顧問、民主平和統一諮問会議の企画調整分科委員長を務めている。