BEXCOの本会議場で本会議を進行する第48回ユネスコ世界遺産委員会のイ・ビョンホン議長(右から3番目)=7月8日、釜山、ユネスコ
チェ・ジェホン
建国(コングク)大学 地理学科・同大学院の世界遺産学科教授、ICOMOS Korea委員長
2026年7月、釜山(プサン)は、人類が共に守るべき遺産について議論するため、世界が一堂に会する舞台となった。韓国が1988年に世界遺産条約に加盟して以来、初めて議長国として開催した「第48回ユネスコ世界遺産委員会」には、162カ国から3140人が集まった。閣僚級25人と国内外の報道関係者367人も参加した。その中でとりわけ注目を集めたのが、コモロのアザリ・アスマニ大統領の訪問だった。自国初の世界遺産登録を祝うために国家元首が委員会を訪れたのは、委員会の歴史上、アザリ大統領が初となる。これは、釜山での会議が単なる専門家会議の枠を超え、文化や自然遺産を通じて国家間の信頼と連帯を築く場へと発展したことを示している。
今回の会議では、33件の登録案件が審議された。審査を経て、文化遺産19件、自然遺産5件、複合遺産1件の計25件が新たに世界遺産リストに名を連ねた。「韓国の干潟」を含む2件の拡大登録と1件の登録基準変更も承認された。これにより、世界遺産の登録数は173カ国・1273件に増えた。特に、コモロ、サントメ・プリンシペ、南スーダンが初めて世界遺産を保有することになったのは、登録リストの地域的なバランスと文化的多様性を広げたという点で大きな意義を持つ。さらに、これらすべての決定が委員国間の意見対立なしに合意に至ったことは、「釜山」という場において、対話と相互理解を通じて共通の結論に到達できることを証明して見せた。
しかし、世界遺産委員会の役割は、新たな遺産を登録することだけではない。すでに世界遺産リストに記載された148件の保存状況を確認することも、今回の会議の重要な課題であった。気候変動や自然災害、都市開発、観光需要の拡大、さらには武力紛争に至るまで、現代の世界遺産が直面する脅威は、かつてないほど複雑かつ多層的だ。こうした中、スリナムの「パラマリボ歴史地区」、、ウクライナの「ケルソネソス・タウリカ」、レバノンの「ティール」などが危機遺産リストに新たに登録された。また、緊急手続きによって登録された南スーダン、レバノン、パレスチナの遺産も同リストに含まれた。一方で、諮問機関からの反対があったにもかかわらず、長年にわたり保全と管理に取り組んできたオーストリアの「ウィーン歴史地区」は、その努力が評価され、危機遺産リストから除外された。この二つの対照的な動きは、危機遺産制度が、危機に直面した遺産に対して国際社会の関心と支援を集める連帯の仕組みであることを改めて印象付けた。
釜山での会議が残した最も象徴的な成果は、本会議初日にコンセンサスによって採択された「世界遺産に関する釜山宣言」であろう。同宣言は、武力紛争や気候変動、開発圧力、デジタル転換といった課題は、もはや一国だけで解決できるものではないという共通認識に基づいている。そのため、世界遺産条約の5つの戦略目標である「信頼性」、「保全」、「能力構築」、「コミュニケーション」、「コミュニティ」に、新たに「協力(Collaboration)」を第6の戦略目標として加えることを提案した。さらに、文化遺産と自然遺産を一体的に保護すること、現場の管理者の能力向上、地域コミュニティや若者の参加促進、様々な歴史や記憶を尊重する包摂的な解釈の推進、AIをはじめとするデジタル技術の責任ある活用といった内容も盛り込まれた。「釜山宣言」は、「協力」を単なる理想で終わらせず、遺産を守り抜くための具体的な指針として提示したのである。
本会議と並び、会議を大きく盛り上げたのが関連イベントだった。計61件に及ぶイベントでは、小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国の能力構築、黄海干潟の国境を越えた保全、遺産の解釈と平和構築、気候変動への対応、近現代遺産の保存と活用、若者や地域コミュニティの参画など、多岐にわたるテーマについて活発な議論が交わされた。公式審議が各国の案件を協議する場であったのに対し、関連イベントは、専門家や国際機関、市民社会、現場の管理者らがそれぞれの経験や知見を持ち寄り、解決策を模索する場となった。29カ国31人が参加した「若者専門家フォーラム」と、45カ国74人が参加した「現場管理者フォーラム」における提言は本会議に提出され、若者の実質的な参画と、人を中心とした包摂的な遺産管理の重要性を提起した。これらは、世界遺産の未来は、政府や専門家だけではなく、現場の管理者や若者、そして地域住民が共に築いていくべきものだという「釜山宣言」の理念を具体的に示した。
会議は、専門家だけの場にとどまらず、市民が参加する文化外交の場としても機能した。35の機関が参加した「大韓民国館」には、10日間で約13万7000人が来場し、多彩な展示や体験プログラム、現地見学、無形遺産公演を通じて、韓国の文化と自然遺産の魅力を国内外の参加者らに広く発信した。また、「韓国の干潟(第2段階)」の拡大登録は、政府と地方自治体、専門家、地域社会が国際社会の勧告を着実に履行してきた協力の成果でもあった。麗水(ヨス)、高興(コフン)、務安(ムアン)、瑞山(ソサン)の干潟が新たに加わったことで、世界遺産としての生態学的な結び付きと完全性が一段と強化された。
10日間にわたって開催された「第48回世界遺産委員会」は、韓国がもはや世界遺産を保有し、保護する国にとどまらず、世界遺産制度の発展と国際的な連帯をけん引する責任あるパートナーになったことを印象づけた。今後の課題は、釜山宣言や会議で示された様々な提案を一過性の議論で終わらせず、継続的な政策や現場での取り組みへとつなげていくことである。釜山から発信された協力のメッセージが、気候危機や紛争によって脅かされる遺産、それらを現地で守り続ける人々、そして未来の世代のための具体的な行動へと広がっていくとき、釜山での会議は世界遺産条約の新たな節目として長く記憶されることになるだろう。
チェ・ジェホン教授は、建国大学地理学科および同大学院の世界遺産学科の教授であり、世界遺産研究所の所長を務めている。ソウル大学で学士号と修士号を取得した後、米・ミネソタ大学で地理学博士号を取得し、1995年より建国大学で都市地理学と世界遺産学の研究・教育に携わってきた。建国大学大学院の世界遺産学科の設立を主導し、南漢山城(ナムハンサンソン)と「山寺、韓国の山地僧院」の世界遺産登録にも貢献した。現在は、ICOMOS韓国委員会委員長およびICOMOS国際解釈広報委員会(ICIP)の副会長として、世界遺産の保全・管理、遺産影響評価、歴史的都市景観、包摂的な遺産解釈および平和構築に向けた国際協力活動に取り組んでいる。