ソウル市瑞草洞にある韓国芸術総合学校のレッスン室。韓国人の生徒5~6人と一緒にバレエのレッスンを受ける2人の西洋人がいた。イタリア人でローマ出身のイラリア・マルトゥッチ(Ilaria Martucci)さん(20)と米国人のステファニー・シェンバーガー(Stephanie Schenberger)さん(17)だ。2人は同校舞踊院のキム・ソニ教授の指導を受けながら、蝶のようにレッスン室を縦横無尽に舞っていた。キム教授は英語と韓国語、そしてバレエ用語を駆使し、生徒たちの手の位置や姿勢などを細かく指導していた。
2011年に初めて韓国を訪れたマルトゥッチさんが同校でバレエを習うのは今年で5回目だ。2010年のプレミオ・ローマ・コンクール(Premio Roma Dance Competition)で韓国人ダンサーたちの美しい踊りを見てあまりにも感動し、韓国芸術総合学校への入学を決心した。同年のプレミオ・ローマ・コンクールでは、韓国の男女のダンサーがシニア部門とジュニア部門でそれぞれ金賞を受賞した。マルトゥッチさんは、「これほど優秀なバレリーナを見たことがなかった。キム教授にレッスンを受けさせてほしいとお願いし、韓国でバレエを習うことになった」と話す。
キム教授(中央)が12日、ソウルの芸術の殿堂近隣にある韓国芸術総合学校で、マルトゥッチさん(左)とシェンバーガーさん(右から2人目)を指導している
キム教授は、「韓国で韓国人の生徒たちと一緒に何度かレッスンを受けたマルトゥッチさんが、長期的に習いたいというので受け入れた。また、作品を見てほしいというので、その指導もしてあげた」という。そして、「マルトゥッチさんは身体的条件に恵まれている。韓国で継続的にバレエを習うことを望んでいる」と話す。
2011年にキム教授の指導を受け始めたマルトゥッチさんは、翌年のシチリア・バロック国際コンクール(Sicilia Barocca International Dance Competition)で銀賞を受賞した。
まだ高校生のシェンバーガーさんは、韓国駐在米国大使館で武官を務める父親と一緒に韓国に来た。米国ではワシントン・バレエ団でバレエを習っていたが、当時ワシントンバレエ団で数人の生徒を指導していたキム教授にそのとき初めて出会った。韓国に来てすぐキム教授に連絡した彼女は、昨年夏からずっとキム教授の指導を受けている。
このように、バレエを習いに韓国を訪れる西洋人ダンサーが出てきたのこの数年のことで、韓国人ダンサーが世界のバレエコンクールやバレエ団で活躍しているからだ。
キム教授(右から2人目)がマルトゥッチさんの姿勢を矯正している
韓国人ダンサーたちが本格的に国際舞台に登場し始めたのは約5年前からで、ロシアのマリインスキー・バレエ団のキム・ギミンさんやフランスのパリ・オペラ座バレエ団のパク・セウンさん、米ワシントン・バレエ団のハン・ソヘさんとチェ・ジヨンさんら、多くの韓国人ダンサーが海外の有名バレエ団で主役を務めている。特に、男性のキム・ギミンさんは、バレエ発祥国であるロシアのマリインスキー・バレエ団に2011年に入団し、わずか1カ月で主役に抜擢され、これまで公演に100回以上出演した。今年6月にニューヨークのメトロポリタン・オペラハウスで開かれる公演「アメリカン・バレエ・シアター(ABT)」にも客員主役ダンサーとして招かれている。彼らは皆、韓国で教育を受けたバレリーナとバレリーノだ。
キム教授は、「韓国のバレエ教育は世界でもトップレベルだ。今や韓国人のバレリーナとバレリーノは、世界のどの国に行っても全く引けをとらない」と語る。
韓国芸術総合学校でバレエのレッスンを受ける生徒たち
韓国芸術総合学校でバレエを習うマルトゥッチさんとシェンバーガーさんに、韓国でバレエを習おうと思った背景について話を聞いた。
イタリア人のマルトゥッチさんは、プレミオ・ローマ・バレエコンクールに参加した韓国人バレリーナたちの優れた技量に感動し、韓国でバレエを習うことを決心したという
‐欧米ではなく、韓国でバレエを習おうと思った理由は。
2010年のプレミオ・ローマ・バレエコンクールで韓国人バレリーナたちの踊りを見た。これほど優秀なバレリーナを見たことがなかった。彼女たちのは素晴らしいテクニックを持っていた。彼女たちと親しくなって話を聞いたら、ほとんどが韓国芸術総合学校の生徒たちだった。その後、キム・ソニ教授に出会い、自分もキム教授から指導を受けることになった。
初めて韓国に来たのは2011年で、韓国訪問は今回で5回目だ。韓国芸術総合学校は世界最高レベルだ。同校でバレエを習うことができてとても嬉しい。
‐初めてバレエに接したきっかけは。また、バレリーナになろうと思ったのはいつ。 バレエを始めたのは6~7歳の頃だ。当時、他の女の子たちがみなバレエの授業を受けていたので、私もバレエを習った。そのときはバレリーナになりたいとは思っていなかったが、ずっと習い続けているうちにバレリーナになりたいと思うようになった。
‐韓国芸術総合学校でバレエを習って感じたことは。キム教授は、全ての生徒に関心を持ち、情熱的に指導する。その姿にとても感動した。
ずっと以前から同校でバレエを習いたいと思っていた。15歳のときからだ。韓国でバレエを習わせてほしいと母にせがんだ。
同校に初めて足を踏み入れたとき、胸がドキドキした。毎日が挑戦の連続で、自分の限界を超えようと努力している。新しいことを学ぶことができ、毎日とても楽しい。一日の日課が終わると、体は疲れていても、心では幸せを感じている。母とSkypeでビデオ通話すると、疲れているようだけど幸せそうだといわれる。同校でバレエを習うのは私の夢だった。日々幸せを感じている。
韓国芸術総合学校のキム教授の指導を受ける生徒たち
‐韓国のバレエと欧州のバレエの違いは。大きな違いはないと思う。優秀なダンサーなら誰でもわかる。同校では教授が生徒全員をしっかり指導している。とても細かいところにまで気を配っている。イタリアではそんなに細かいところにまで気を配ってはいないようだ。バレエを学ぶなら、韓国で、同校で学んだほうが良い。
‐韓国での暮らしはどうか。あなたの目に映る韓国人、韓国社会の姿とは。正直に話してほしい。韓国での生活はとても慌しく時間が過ぎていく。何もかも「パリパリ(「早く早く」の意)」だ。身の回りのことを全て自分でしたことがなかったので少し苦労している。延世大学から同校まで通学するのに、一日のうち約4時間バスや地下鉄などで過ごしている。大変なこともあるが、問題ない。
個人的な経験から、韓国人はとても親切だと思う。反面、イタリア人は無礼なところがある。
韓国芸術総合学校には特別な友人がおり、困ったときにいつも力になってくれる。ある日、道に迷ったら、近くにいた人が私を目的地まで連れて行ってくれた。イタリアでは考えられないことだ。
噂には聞いていたが、韓国社会は競争が激しい。競争には良い面もある。互いに学び、成長できるからだ。優秀な人を見習うことができる。ある友人が、韓国社会はとても競争が激しいといっていた。それがストレスになるときもある。
‐あなたが目指すバレリーナとは。 自分の感情を十分に表現できるバレリーナになりたい。ダンサーにとって最も重要なことだ。舞台で自分が感じた感情を観客にも感じてほしい。
韓国芸術総合学校でバレエを学ぶシェンバーガーさん
‐欧米ではなく、韓国でバレエを学ぼうと思った理由は。
正直言って、世界の中でバレエを習うのに一番良い国は韓国だ。生徒たちも世界トップレベルだ。とても驚いた。それを支えているのが韓国芸術総合学校だ。
ワシントンDCでキム・ソニ教授に出会った。キム教授がワシントン・バレエ団で指導しているとき、ちょうど私がワシントン・バレエ団でバレエを学んでいた。
キム教授の指導方式は、他の指導者とは大きく違った。キム教授は、素晴らしい生徒を何人も育ててきた。だから、私もキム教授の指導を受けに韓国に来た。韓国に来て、母と一緒にキム教授に連絡し、指導してほしいとお願いした。
‐ 初めてバレエに接したきっかけは。また、バレリーナになろうと思ったのはいつ。 6歳のときバレエを習い始めた。姉たちが習っていたので、私も習うことにした。バレエについて真剣に考えるようになったのは12歳のときだ。当時は、ハワイに住んでいた。指導者たちは、あなたならできるからバレリーナを目指しなさいと激励してくれた。
‐韓国芸術総合学校でバレエを学んで感じたことは。 2014年の夏からキム教授の指導を受けているが、一言で表現すれば「恐怖」だった。韓国人バレリーナは全員がトップレベルで、韓国芸術学校の生徒たちは特にそうだった。韓国トップレベルのバレエを学ぶ生徒たちだ。そこで学びながら多くのインスピレーションを受けた。新世界を見たような感覚だった。
韓国芸術総合学校でバレエを学ぶ生徒たち
‐韓国のバレエと欧州のバレエとの違いは。 韓国のバレエは、米国のバレエとは全く違う。キム教授は、全く違うスタイルを強調し、ディテールを重視する。韓国のバレエは、米国のバレー団や他のバレリーナよりも体系が整っている。全く違う。教育が違うからだと思う。
‐韓国での暮らしはどうか。あなたの目に映る韓国人、韓国社会とは。正直に話してほしい。 韓国社会は米国とは全く違う。今は都市生活を満喫している。したいこともたくさんあるし、行ってみたいと思う場所もたくさんある。米国にいたときに住んでいた場所とは比べ物にならない。
‐あなたが目指すバレリーナとは。踊ることが好きなので、情熱的に踊るバレリーナになりたい。完璧に踊ることよりも、踊りに対する愛情を表現することのほうが重要だと重要だと思う。
記事:コリアネット イム・ジェオン記者
写真:コリアネット チョン・ハン記者
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