ひと

2025.12.26



[ソウル=ソ・エヨン、シャルル・オドゥアン]
[写真=イ・ジョンウ]
[映像=パク・デジン]

3月にフランスのロン=ティボー国際コンクールで優勝とともに聴衆賞・評論家賞・パリ特別賞を総なめした18歳のピアニスト、キム・セヒョン。6月26日にソウル・鍾路(チョンノ)区の世宗(セジョン)文化会館サークルホールで開かれた受賞後初の記者懇談会において、彼はピアノの前に座るやいなや観客を引き付けた。はにかむような10代の表情を見せたかと思うと、繊細な打鍵と安定したペダリング、ルバートが会場を穏やかな響きで満たした。

しかし、傑出したテクニックで感嘆を誘う演奏は、キム・セヒョンにとって優先事項ではない。彼は「観客に強く印象づけようと自分を出す演奏よりも、自分を捨てて音楽に仕える気持ちで演奏したほうが理想的な演奏に近づける」と語った。

その一方で「1000人、2000人の観客をあっと言わせる演奏よりも、1人、2人を変える演奏をすることの方が個人的には有意義だと思う」とし、「一人一人に演奏者としての私の話を伝えるような演奏がしたい」と述べた。

単なる謙遜の言葉ではない。彼の芸術観を端的に表した言葉だ。自分を飾ったり誇張したりせず、ありのままの感情表現とトーンで真摯に接する姿勢は、洗練された技巧よりも真実味のある音に重きを置いた選択によるものなのだろう。

コンクールで優勝して以来、キム・セヒョンの舞台は華々しく広がった。5月8日に開催された欧州戦勝記念日の平和音楽会にピアニストとして唯一招待され、パリの凱旋門前でショパンの「ノクターン」を演奏した。7月14日のフランス革命記念日にはエッフェル塔前のシャン・ド・マルス公園でソロ演奏を行い、同23日には欧州最大規模を誇るピアノの祭典の一つ「ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティバル」のメインステージに立った。

「大きな賞と身に余る関心をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。演奏する機会がたくさん与えられて自分自身を振り返るきっかけとなり、責任の重みも感じました」優勝後に感想を聞かれたキム・セヒョンはこう答えた。

フランスのロン=ティボー国際コンクールで優勝した18歳のピアニスト、キム・セヒョンが6月26日、ソウル・鍾路区の世宗文化会館サークルホールで開かれた受賞後初の記者懇談会でピアノを弾いている。キム・セヒョンはこの日、会場でガブリエル・フォーレとシャルル・トレネの3曲を記者に披露した。

フランスのロン=ティボー国際コンクールで優勝した18歳のピアニスト、キム・セヒョンが6月26日、ソウル・鍾路区の世宗文化会館サークルホールで開かれた受賞後初の記者懇談会でピアノを弾いている。キム・セヒョンはこの日、会場でガブリエル・フォーレとシャルル・トレネの3曲を記者に披露した。


世界的なクラシックレーベルであるワーナークラシックスのアラン・ランスロン社長は、記者懇談会に送られた映像で「キム・セヒョンの才能、独創性、その若さでの成熟した姿が印象深かった」とし、「来年末までにアルバムをレコーディングして発売する予定」と述べた。

国内外を飛び回る多忙な公演スケジュールをこなしながらも、キム・セヒョンは現在、ニューイングランド音楽院のピアノ演奏修士課程とハーバード大学の英文学学士課程を同時に履修している。芸術とテキストの枠を超えて音楽をより広く深く理解しようとする意志からなのだろう。

普通の10代らしい生活を送れないことに悔いはないのだろうか?彼は「失った分だけ音楽が満たしてくれるので、むしろ感謝している」とし、「もちろん10代の時にしかできないことをしてみたい気持ちもあるが、(演奏者として)犠牲にせざるをえない」と語った。

他のコンクールには出場せず演奏活動に専念するというキム・セヒョンは「ありのままの姿を見せることが大切だと思う」とし、「飾らずに今この瞬間、自分がいる場所で奏でる音楽を届けたい」と願いを明かした。

キム・セヒョンが6月26日、ソウル・鍾路区の世宗文化会館サークルホールで開かれた記者懇談会で記者の質問に答えている。

キム・セヒョンが6月26日、ソウル・鍾路区の世宗文化会館サークルホールで開かれた記者懇談会で記者の質問に答えている。


ロン=ティボー国際コンクールは、1943年にピアニストのマグリット・ロン(1874~1966)とバイオリニストのジャック・ティボー(1880~1953)が創設した世界的な権威あるコンクールだ。16歳から33歳までの若手音楽家を対象に、ピアノ・バイオリン・声楽部門でそれぞれ賞が授与される。

今年のコンクールでキム・セヒョンは審査員満場一致により優勝を勝ち取った。第2位が該当者なしとなった理由について、審査員団は第1位のキム・セヒョンと他の出場者とのレベル差が大きかったためと説明した。

xuaiy@korea.kr