11日、コリアネットとのインタビューに応じているパトリシオ・エステバン・トロヤ・スアレス(Patricio Esteban Troya Suárez)駐韓エクアドル大使
[キム・ヘリン]
[写真=イ・ジョンウ]
1976年7月、韓国からポニー5台が初輸出された。ポニーは、現代(ヒョンデ)自動車初の独自生産モデルだ。その輸出先は、南米のエクアドル。当時の取引は、、エクアドル産バナナと韓国製の自動車を交換するバーター(物物交換)方式で行われた。翌年には、大宇(テウ)建設がエクアドルの首都、キトで主要道路の舗装工事を受注。ラテンアメリカにおける韓国初のインフラ事業契約を勝ち取ることとなった。
半世紀の時を経て、両国の関係は新たな転機を迎えた。その契機となったのが、昨年9月に正式署名された「戦略的経済補完協定(SECA)」だ。
パトリシオ・エステバン・トロヤ・スアレス(Patricio Esteban Troya Suárez)駐韓エクアドル大使は11日、ソウル・鍾路(チョンノ)区にある駐韓エクアドル大使館でインタビューに応じ、両国の過去と未来を展望した。ドイツ、米国、カタール、イタリアでの駐在を経て、2024年10月に韓国へ赴任した同氏は、数十年のキャリアを誇るベテラン外交官である。その豊富な実務経験に裏打ちされた洞察(インサイト)は鋭い。韓国とエクアドルの関係について、「競合分野がほとんど存在しない、完全に相互補完的なもの」と定義した。
SECAは、単なる貿易の枠組みにとどまらず、投資から産業協力までを網羅する協定だ。現在、両国では批准手続きが順調に進められている。スアレス大使は、この手続きがエクアドルでは4~5月、韓国では7~9月までに完了することへの期待感を示した。
SECAが発効すれば、両国の貿易構造は劇的な変化を遂げる見通しだ。2024年時点の両国の貿易額は8億9400万ドルに達しており、エクアドルにとって韓国は第15位の貿易相手国である。現在、エクアドルは、主にエビやカカオ、バナナ、生花などを韓国に輸出している。協定発効により韓国向け輸出は、約27%増えると試算されている。試算されている。現在、エクアドルの自動車市場における最大の輸入国は、自由貿易協定(FTA)を締結済みの中国だ。SECA発効後、現代自動車と起亜(キア)自動車も、同じ条件の下で競合可能となるため、市場シェアの拡大が見込まれる。LG・サムスンなど、電子・テック企業のさらなる成長の可能性も大きくなる。エクアドルは、チリ・ペル・コロンビアに続き、韓国と経済協力協定を結ぶ南米で4番目の国家となる。
SECAによる波及効果は、貿易にとどまらず、エネルギー分野にまで及ぶ。エクアドルは、国内電力の80%以上を水力発電に頼っている。環境に優しいという利点はあるものの、近年の気候変動に伴う降水量の不安定化により、電力供給の脆弱性が露呈しているのが実情だ。大使は、「原子力技術の導入について、既に韓国との協議が始まっており、ガラパゴス諸島には、韓国企業が参加した風力発電所が稼働している」と説明した。さらに、主要都市のキトやグアヤキルにおける太陽光発電所、およびごみ焼却発電施設の建設についても、韓国企業と協議中であることを示唆した。「エクアドルは、金や銅といった鉱物資源も豊富である」とした上で、資源開発分野における韓国企業の積極的な参画を強く呼びかけた。
1976年7月、エクアドルのグアヤキル港で「ポニー」の積み下ろし作業が行われている=現代自動車
両国の関係は、自動車輸出よりも数十年前にまで遡る。韓国戦争当時、エクアドルは、国連安全保障理事会の非常任理事国だった。韓国を支持する決議に賛成票を投じ、500トンの食糧と医薬品を提供。「これこそが両国の絆の原点である」と大使は振り返る。その後、両国は1962年に正式な国交を樹立し、それから14年を経て、エクアドルは韓国製自動車の歴史的な初輸出国となったのである。
話の途中、大使は席から立ち上がり、ポニーのミニアチュアを持ってきた。「現代自動車はかつて、輸出20周年を記念して、当時エクアドルで実際に運行されていた車両を探して持ち帰るため、現地に調査員を派遣した」と説明。この出来事を両国の交流の象徴として挙げた。エクアドルで、20年間にわたりタクシーとして使用され、走行距離150万kmを刻んだポニーは、現在、現代自動車蔚山(ウルサン)工場の「ヘリテージホール」に展示されている。
韓国とエクアドルの文化的なつながりは、経済協力よりもさらに深く、意外な形ではじまっていた。大使は、「ジンソプ(Jinsop)」という芸名で知られる韓国系アメリカ人の歌手の存在に触れた。「1970年代に、彼の曲がエクアドルのポップチャート上位に入り、大きく注目された。彼は現地の女性と結婚して帰化までしている。当時子供だった私にとっても、その人気は鮮烈な記憶として残っている」と回想した。現在の「K-POP」ブームに先駆けること数十年。すでに韓国人アーティストが、エクアドルの大衆音楽シーンの中心にいたのだ。
韓国とエクアドルの協力の在り方について説明しているスアレス大使
昨年、クリスマス連休に帰国したスアレス大使は、エクアドル国内に押し寄せる劇的な変化を目の当たりにした。首都キトの大型ショッピングモールには韓国の飲食店やコスメショップが軒を連ね、スーパーの陳列棚にはキムチや韓国ラーメンが並んでいた。K-POPの大会では、10代のエクアドルの少女らが、韓国のガールズグループさながらの歌とダンスを披露していた。「文化には、常に力が宿っており、スポーツや音楽、観光は全てつながっている。それらが原動力となってこそ、互いをより深く理解できる」と彼は話す。
観光交流を広げるため、両国の旅行会社をつなぐ取り組みも行われている。韓国の旅行者に紹介したい自国の魅力について、大使は次のように述べた。「エクアドルにはガラパゴス諸島、アンデスの火山地帯、アマゾン密林、そして太平洋海岸に至るまで、まったく異なる4つの自然環境が共存している。生物多様性において世界世界トップ5に入る、類まれな国である」と述べた。
来年、両国は国交樹立65周年という大きな節目を迎える。この記念すべき年をどのように祝いたいか尋ねると、スアレス大使は、しばらく考えてから答えた。「SECA批准が両国で完了し、韓国の大統領や首相によるエクアドル訪問が実現することを切に願っている」。
インタビューの最後に、大使は笑みを浮かべて食文化の話題に触れた。エクアドルのエビを使った伝統料理「セビーチェ」とキムチ、、韓国のビールが意外とよくマッチするとし、「いつかソウルにもエクアドル料理店ができたら」と話した。そして、「大使館の門戸は常に開かれている。エクアドルを知ろうとする韓国の友人たちを、我々はいつでも歓迎する準備ができている」と付け加えた。
kimhyelin211@korea.kr