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2026.05.15

イ・ギョンへ院長は「障害者権利保障法は、社会の新たな基準を示すとともに、既存の枠組みを変えていく指針となる法律だ」とし、法制定の意義を強調した=4月29日、ソウル・永登浦区

イ・ギョンへ院長は「障害者権利保障法は、社会の新たな基準を示すとともに、既存の枠組みを変えていく指針となる法律だ」とし、法制定の意義を強調した=4月29日、ソウル・永登浦区


[ソウル=ユン・ソジョン、イ・ジイェ]
[写真=イ・ジョンウ]

うれしくて自分でも気づかないうちに鼻歌を口ずさんでいた。

イ・ギョンヘ韓国障害者開発院長は、「障害者権利保障法(権利保障法)」が先月23日に国会本会議で可決された瞬間を、こう振り返った。

同日午後4時ごろ、国会で採決の様子を見守っていたイ院長は、「25年にわたり障がい者政策に携わってきた立場からすると、権利保障法の制定によって韓国の障がい者政策の大きな枠組みがようやく整うと感じた」とし、「込み上げる喜びを抑えられなかった」と振り返った。

権利保障法の成立は、2007年に法制定の議論が始まってから19年を要した。2002年に制定に向けた動きが始まり、2007年に成立した「障がい者差別禁止法(差別禁止法)」と比較しても、成立までに約4倍の歳月を費やしたことになる。

イ院長は、「権利保障法」について、「障がい者を支援や保護の対象ではなく、権利の主体として位置づけるものだ」と説明した。その上で、「社会の新たな基準を提示し、これまでの枠組みを変えていく指針になる」と強調した。

以下は、先月29日にソウル・永登浦(ヨンドゥンポ)区の韓国障がい人開発院イロムセンターで行ったイ院長との一問一答。

「障がい者権利保障法(権利保障法)」がついに国会本会議を通過した。障がい者団体が長年この法律の制定を待ち望んできた理由と、今後の障がい者政策における意義について伺いたい。

障害の国際体制が「配慮と保護」から「自立と統合」へ転換して、 すでに20年余りが経過した。 2006年の国連総会で採択された「国連障害者権利条約(権利条約、UN CRPD)」は、障害を社会問題として捉えている。障害はもはや個人で克服・適応すべき問題ではなく、国家が障壁(バリア)を取り除く責任を負うべきであることを意味する。 

つまり、障害はもはや個人が克服・適応・受容すべきものではなく、社会の側が障壁(バリア)を取り除く責任を負うべきだという考え方である。

「障がい者福祉法」(1981年制定)や「障がい者差別禁止法」にも、障がい者の基本権は明記されている。しかし、韓国社会では依然として障がい者を「配慮の対象」とみなす傾向が根強かった。こうした現実を受け、障がい者の権利をより積極的に保障するための法律制定の必要性が継続的に浮上している。政権交代のたびに、国政課題として提案されてきたが、社会的合意は容易ではなかった。

「権利保障法」は、障がい者を施しや保護の対象ではなく、「権利の主体」として位置づける法律である。これは社会に新たな基準を提示し、既存の枠組みを刷新する座標となる。

この法律は、障害者の尊厳権、平等権、自立権、自己決定権といった基本法的理念を包括している。これまで散発的に運用されてきた制度や政策を全面的に再整備し、一貫性のある政策体系を確立する出発点となるだろう。

「権利保障法」の制定は、当事者の生活にどのような実質的変化をもたらすか。

生活の質は大きく向上すると考えられる。この法律は、障がい者の基本的権利を含むあらゆる権利を保障し、国家がその実現に責任を負うことを明記している。また、障がい者が直面する社会的・物理的・制度的な障壁を取り除くことが国家の義務であると明確にした意義は大きい。

重要な原則は「自己決定権」の尊重だ。従来の供給者中心のサービスから、当事者中心の仕組みへと転換される。当事者が制度に合わせるのではなく、個々のニーズに応じてサービスが設計されるべきなのだ。さらに、政策の立案から実施、評価、モニタリング、検証に至る一連の過程を法律に明記することで、制度の実効性を確保している。

韓国政府は全国の広域自治体(17の市・道)において、地域障害児支援センターの設置や発達リハビリテーションサービスの対象拡大など、障がい児向けのきめ細かな福祉の推進や障がい者雇用の拡大に向けた政策を進めている。「権利保障法」はその原動力となり得るだろうか。

障がい者関連事業やサービスの設計・内容・利用方法・提供方式は、現場の実情に即し、利用者を中心とした形で実施されることになる。政府は、発達障害へのケアに関する国家責任体制の整備や、障がい者に特化した雇用の拡大を強調している。

こうした個別化された福祉支援の原則は、「権利保障法」が掲げる権利中心の理念と軌を一にしている。法制定により、これら国政課題の実現はさらに加速すると確信している。

「権利保障法」の可決を受け、韓国障害人開発院の名称は「韓国障害人権利保障院」に変更され、役割は一層重要になった。

この法律は制定から2年後に施行される。施行から1年以内に、現在の「韓国障害人開発院」は「韓国障害人権利保障院(権利保障院)」へと転換される見通しで、機関の機能や役割も大幅に強化される。

同開発院はこれまで、障害政策を総括する公共機関として、政策の研究開発や職業リハビリテーション、障がい児および発達障がい者への支援など、国家政策事業を担ってきた。

今後は権利保障院に移行し、国家基本計画の策定支援や調査・統計の管理、各種サービスの提供、事業の評価・モニタリングなどの役割が追加される。また、障がい者関連の既存法制度やサービスの見直しに向けた研究にも注力する方針だ。

障がい者政策の充実に向け、今後どのような役割を重点的に果たすべきか。

障がい者を含むすべての国民が幸福で安全に暮らせる社会の実現を目標としている。民間の意見を政府に伝えるとともに、政府の政策を現場に正しく伝えるなど、「官民の橋渡し役」に徹したい。

何よりも重要な役割は、社会的な共感の形成である。障害の有無を超えて互いの多様性や違いを認め合い、尊重し合う社会を築くとともに、すべての権利を守るための社会的合意に基づく取り組みが求められる。そのための環境づくりに全力を尽くす。

韓国障害人開発院のマスコットを手にポーズをとるイ・ギョンヘ院長=4月29日、ソウル

韓国障害人開発院のマスコットを手にポーズをとるイ・ギョンヘ院長=4月29日、ソウル


イ・ギョンヘ院長


1980年、梨花女子大学外国語教育学科卒業。卒業を目前に病を患い、重度の視覚障害となる。療養中にフランスへ留学し、1993年にトゥールーズ第一大学大学院で現代フランス文学の博士課程を修了した。

2008年の国連障害者権利条約の締結時には、市民団体代表団の女性委員長として参加するなど、障害者政策の専門家として活動した。2023年には第5代韓国障害人開発院長に就任した。


arete@korea.kr