「国民が主人である国、共に幸せな大韓民国」を国政ビジョンに掲げる李在明(イ・ジェミョン)政権が、今年6月4日で発足1周年を迎える。コリアネットは、政権の1年間の主要成果を全5回にわたって取り上げる。第1回は、「国益中心の実用外交」と「平和共存・繁栄の韓半島政策」を推進してきた政府の外交・安保分野の歩みを振り返る。
中国を国賓訪問した李在明大統領(左)が中国・北京の人民大会堂で習近平国家主席と握手を交わす様子=1月5日、北京、李在明大統領のフェイスブック
[ユン・ソジョン]
世界へと向かう「実用外交」
「国民主権政府の国政運営の第一原則は、『何よりも『国民の暮らし』である。脱イデオロギー、脱陣営、脱政争の現実的な実用主義こそが、私たちの進むべき方向性だ」
李在明大統領は今年1月、青瓦台(チョンワデ)で行われた新年記者会見でこう宣言した。政権の政策基調は、李大統領の精力的な外交活動にも鮮明に表れている。昨年6月4日の就任からわずか3日後、カナダでの主要7カ国(G7)首脳会議に出席したことを皮切りに、計9回の海外歴訪を行った。
中国との関係修復は、李在明政権の外交成果の中で、極めて重要な意義を持つ。関係修復の転機となったのは、昨年10月31日から11月1日にかけて開催された「慶州(キョンジュ)APEC首脳会議」である。習近平国家主席が11年ぶりに韓国を国賓訪問し、韓中首脳会談が実現した。同会談で両首脳は、韓中関係の修復に向けた意思を表明。
これを機に、両国は70兆ウォン規模の「ウォン・人民元の通貨スワップ協定」を締結し、両国間の自由貿易協定(FTA)のサービス・投資分野における交渉加速化させた。さらに今年1月には、新年早々としては異例となる李大統領の国賓訪中が実現。国民の生活に直結する民生分野での水平的な互恵協力や、韓半島の平和問題、文化・コンテンツ交流の拡大などで合意に至った。
トランプ大統領と握手を交わす李在明大統領(左から2番目)=昨年8月25日、ワシントンD.C.、聯合ニュース
一方、米国との協力関係にも新たな転機が訪れた。李在明政権は、「アメリカファースト」を掲げる第2期トランプ政権に対し、経済と安保の両面で対等な実利を確保する大きな成果を挙げた。
慶州APEC首脳会議に合わせて開かれた韓米首脳会談で、韓国は原子力潜水艦の建造およびウランの濃縮に対する米国の支持を取り付け、北東アジアの安保における中核として、防衛能力を強化した。「グローバル責任国家」を標榜する韓国は、北朝鮮の核の脅威に対し、国内の一部にある核武装論を否定してきた。専門家によると、原子力潜水艦は唯一の「非核」軍事手段であり、強力な通常兵器による抑止力を最大化するための切り札となる。
当時、韓国は、韓米首脳会談で約3500億ドルの対米投資を行うことで合意した。また、投資に加え、保証も含まれる約1500億ドルの造船分野における協力プロジェクト「MASGA」を通じて、韓国製兵器の購買および米国国内での投資を連動させることで韓米同盟のさらなる強化と実利を同時に追求した。
李在明大統領が(右)法隆寺での親交行事で日本の高市早苗首相(左)と握手を交わす様子=1月14日(現地時間)、奈良県、大韓民国 青瓦台
韓日関係は、前例のないシャトル外交により急速に進展した。李大統領は、カナダでのG7首脳会談で日本の石破茂首相と初の首脳会談を行い、2番目の訪問国として米国ではなく日本を選んだ。歴代大統領が米国より先に日本を訪問したのは初の事例である。韓米同盟を優先するという従来の慣例にとらわれず、「国益」を前面に掲げた「実用主義」の象徴といえる。
韓日両国は、昨年8月に東京で開かれた韓日首脳会談で、1998年に発表された「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ(金大中・小渕宣言)」を全体として継承することで一致した。さらに、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぐという内容も含まれた。「光復80周年」かつ「韓日国交正常化60周年」を迎える中で収めた大きな成果といえる。これまで両国の首脳は、慶州APECや今年1月の李大統領による日本への訪問、今回の安東での対面など、計6回にわたって会談を実施した。現在、両国はエネルギーやサプライチェーン(供給網)分野でさらなる連携強化を図っている。
平和共存と繁栄の韓半島
李在明政権は、イデオロギー対立に縛られた旧来の路線を大胆に転換した。代わって、平和共存と実用的なリスク管理を軸に、韓半島政策を進めている。昨年の光復節の祝辞で李大統領は「最も確実な安全保障とは、戦う必要のない状態をつくることだ」と述べており、この発言には現政権が掲げる平和共存路線の核心が示されている。
冷え込んだ南北関係を和解と協力へと転換するため、踏み込んだ措置も講じた。政権発足直後の昨年6月12日には、対北朝鮮ビラ散布の抑制と拡声器放送の中止に踏み切り、南北間の信頼回復に向けた第一歩を踏み出した。
李大統領は昨年の光復節の祝辞で、「南北は互いの体制を尊重し認め合いながら、平和的統一を志向する特殊な関係にある」と述べ、「いかなる形の吸収統一も追求しない」と明言した。続く同年9月の国連総会演説では、「韓国ENDイニシアティブ」を掲げ、韓半島の冷戦構造の終結と国際平和への貢献を打ち出した。この「ENDイニシアティブ」は、交流(Exchange)、関係正常化(Normalization)、非核化(Denuclearization)の3本柱からなる。
国連本部総会で基調演説を行った李大統領=昨年9月23日(現地時間)、米ニューヨーク、韓国大統領室
対話再開に向けた動きも具体化している。李大統領は昨年12月、北朝鮮側に南北間の連絡チャンネルの復旧を提案し、「7年間途絶えている南北対話を再び動かすことこそ、平和共存に向けた新たな出発点になる」と強調した。今年1月の年頭記者会見では、「9・19軍事合意」の復元に意欲を示した。これを受け、統一部は2月、同合意に基づく飛行禁止区域の復元を先行的に進める方針を発表した。
こうした動きは、民間交流の再開にも広がっている。今月17日には、北朝鮮の女子サッカーチーム「ネゴヒャン(我が故郷)女子サッカーチーム」の選手ら39人が仁川国際空港から入国した。北朝鮮の選手団が韓国の地で試合を行うのは2018年以来、8年ぶりのことである。政府が掲げる「国民が共感できる互恵的な南北交流」という観点からも、決して小さくない意義を持つ。
仁川国際空港第1ターミナルに到着した「ネゴヒャン女子サッカーチーム」。北朝鮮チームは2025〜2026シーズンのアジアサッカー連盟女子チャンピオンズリーグ準決勝で水原FCウィメンと対戦した=17日、仁川、聯合ニュース
李大統領の実用外交路線は、海外メディアからも高く評価されている。米国の外交専門誌『ディプロマット』は3月6日付で「新しいタイプの大統領・李在明、韓国国民も支持」と題した記事を掲載した。その中で、李大統領の人気の要因として、確かな成果を挙げる行政能力や実用的な外交手腕、柔軟なコミュニケーション、さらには奉仕型のリーダーシップを挙げた。
同誌は、外交経験がなかった 李大統領が国益を最優先に掲げ、トランプ大統領との会談で原子力潜水艦の導入合意を引き出した点に注目した。そのうえで「李大統領は、前任者たちが数十年かけても達成できなかった突破口を開いた」と評価し、「米国第一主義を巧みに乗りこなす能力を証明した」と論じた。
外交専門誌『ディプロマット』は3月6日付記事で、李大統領について、「成果を上げる行政能力」「実用外交」「柔軟なコミュニケーション」「奉仕型リーダーシップ」を評価として挙げた=同誌ホームページからキャプチャー
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