社会

2026.04.14

韓国社会において、動物を取り巻く環境が大きく変わり始めている。ペット飼育世帯の急増に伴い、動物福祉への関心も高まり、政策や日常生活の現場では今、新たな動きが広がっている。


シリーズ「動物と共に生きる」では、動物の法的地位をめぐる議論から、自然環境を活かした保護飼育区域「サンクチュアリ」の最前線、さらに地方自治体が打ち出す動物フレンドリー施策など、人間と動物の関係をめぐる社会の変化を追う。


江原道(カンウォンド)・麟蹄(インジェ)群にあるサンクチュアリ「月昇る居場所」に保護されている牛=動物解放の波

江原道(カンウォンド)・麟蹄(インジェ)群にあるサンクチュアリ「月昇る居場所」に保護されている牛=動物解放の波


[キム・へリン]
[映像=プロジェクト・ムーンベアのユーチューブチャンネル]

「サンクチュアリ(Sanctuary)」は、救出された動物が終生を安らかに過ごすための保護施設を指す。営利目的の展示や繁殖を一切排除し、 動物福祉を第一に考えているため、一般の保護施設や動物園とは大きく異なる。

1986年にアメリカで「ファームサンクチュアリ(Farm Sanctuary)」が設立されたことは、サンクチュアリ運動の起爆剤となった。これを契機に、動物保護の動きが世界へ広がり、2007年には、国際標準化を目的に世界動物保護区連盟(GFAS)が発足した。現在、世界では、約200のサンクチュアリが運営されている。スペインやオーストリアなど、一部の国では、畜産動物のサンクチュアリが独自の法的枠組みによって認可されている。

韓国は、まだ初期段階にあり、民間の主導で牛や豚、クマなどを保護するサンクチュアリが開設され始めている。今年から「野生生物保護及び管理に関する法律(野生生物法)」が施行されることを受け、政府も本格的な対応に乗り出した。この法律は、飼育クマの所有と熊胆(ゆうたん)の採取を全面的に禁じるものである。

全羅南道(チョルラナムド)・求礼(クレ)群の施設に保護されているクマ(左)と施設の内部(右)=気候エネルギー環境部

全羅南道(チョルラナムド)・求礼(クレ)群の施設に保護されているクマ(左)と施設の内部(右)=気候エネルギー環境部


気候エネルギー環境部は、最大49頭のクマを保護できる施設を全羅南道(チョルラナムド)・求礼(クレ)群・馬山(マサン)面に整備した。この施設は、昨年9月30日に開設され、現在21頭の クマが保護されている。忠清南道(チュンチョンナムド)・舒川(ソチョン)郡でも、新たに70頭規模の施設建設が進められているが、浸水被害の影響で工期が遅延。完成は2027年下半期までずれ込む見通しとなった。



飼育クマの保護団体「プロジェクト・ムーンベア(Project Moonbear)」をはじめとする民間セクターでは、法改正に先駆け、農家から飼育クマを買い取り救出するといった迅速な動きが見られた。2021年には、江原道(カンウォンド)・華川(ファチョン)にあるクマ農場を引き継ぎ、保護活動を始めた。屋外放飼場を段階的に拡充し、動物が生活する環境を改善している。檻の中に一生閉じ込められていた13頭のツキノワグマは、今や野生本来の習性を十分に発揮できる環境を満喫している。

忠清北道(チュンチョンブクド)・陰城(ウムソン)郡の「ミニファームサンクチュアリ」に保護されているヤギと豚=動物権行動KARA

忠清北道(チュンチョンブクド)・陰城(ウムソン)郡の「ミニファームサンクチュアリ」に保護されているヤギと豚=動物権行動KARA


市民団体の「動物解放の波」は、2021年8月に仁川(インチョン)広域市・桂陽(ケヤン)区の無許可の牛舎から、屠畜寸前だった5頭の雄のホルスタインを救出した。この牛たちを保護するため、昨年10月、江原道・麟蹄(インジェ)郡にサンクチュアリ「月昇る居場所」を開設した。現在は、活動家の家族が常駐し、牛の世話をしている。

2020年4月に開設された「夜明けのサンクチュアリ」は、国内初のサンクチュアリだ。工場式の養豚場と実験室から救出された豚たちが共に暮らしている。2022年には、動物保護団体「動物権行動KARA」が、京畿(キョンギ)道に「ミニファームサンクチュアリ」を設置し、犬の繁殖場や屠畜場などから救出された豚やヤギ、鶏などを保護している。現在は、忠清北道(チュンチョンブクド)・陰城(ウムソン)郡にある自然牧場へと移し、命を大切にする取り組みを実践している。

昨年11月にソウル・西大門(ソデムン)区の延世(ヨンセ)大学で開かれた「サンクチュアリを考えるフォーラム」の様子=動物解放の波

昨年11月にソウル・西大門(ソデムン)区の延世(ヨンセ)大学で開かれた「サンクチュアリを考えるフォーラム」の様子=動物解放の波


制度化に向けた議論も盛んに行われている。昨年11月に延世(ヨンセ)大学で開かれた「2025サンクチュアリを考えるフォーラム」では、法的地位の確立や認定制度の導入、敷地利用の特例措置、税制優遇の必要性などが集中的に論じられた。同月、国会でも野生動物法と動物保護法を改正を視野に、「安息の地」としての概念をいかに法体系へ組み込むかをめぐり、白熱した討論が交わされた。

韓国における 「サンクチュアリ」は、施設の拡充と法的根拠の整備という重い課題を抱えながらも、ようやくその一歩を踏み出したばかりだ。

kimhyelin211@korea.kr