韓国社会において、動物を取り巻く環境が大きく変わり始めている。ペット飼育世帯の急増に伴い、動物福祉への関心も高まり、政策や日常生活の現場では今、新たな動きが広がっている。
シリーズ「動物と共に生きる」では、動物の法的地位をめぐる議論から、自然環境を活かした保護飼育区域「サンクチュアリ」の最前線、さらに地方自治体が打ち出す動物フレンドリー施策など、人間と動物の関係をめぐる社会の変化を追う。
ペット公共診療センターで、犬を診療する医療スタッフ=京畿道・金浦市、キムポ市ペット公共診療センター
[キム・ヘリン]
地方自治体の動物福祉政策が、人とペットの暮らしを大きく変えつつある。
農林畜産食品部の第3次動物福祉総合計画によると、2024年現在のペット飼育世帯の割合は28.6%に達した。こうした変化を背景に、全国約100の自治体がペットを「家族」と位置づけ、主要な政策課題に掲げている。その支援領域は、診療や教育にとどまらず、観光や空間整備へと拡大している。
金浦市は、この動きの先頭に立つ自治体の一つである。2024年7月に全国で初めて開設されたペット公共診療センターでは、 開設から1年6か月で延べ2551匹の診療を行った。利用者満足度は92点と極めて高く、登録頭数は655匹に達した。これは市内のマイクロチップ登録数の約22%を占める規模だ。さらに同市は、全国の自治体で初めて、福祉局家族文化課内に「ペット文化チーム」を新設した。
写真は、海岸で海水浴を楽しむ人々と一緒に過ごす犬たち=江陵、連合ニュース
広域自治体の中では、忠清南道の取り組みが際立っている。「動物と未来フォーラム」が昨年12に発表した動物福祉指数(条例整備、専門人員、予算比率などの総合評価)において、同道は全国1位を獲得した。動物福祉予算が全体予算の0.1%を超える広域自治体は、全国でも忠清南道と江原特別自治道のみだ。忠清南道は、迷い動物の譲渡支援や行方不明届、給餌情報を一元化した統合サービスを運用。さらに、不妊手術の助成やペット同伴可能な公園整備も進めている。
支援の在り方は、従来の枠を超えて多様化している。巨済(コジェ)市は2023年、明砂(ミョンサ)海水浴場に全国の自治体で初となる「ペット専用海水浴場」を開設した。抱川(ポチョン)市は、専用のドッグランや散策路を完備した「ペット同伴キャンプ場」を運営している。順天(スンチョン)市は、伝統市場やコミュニティバス、教育プログラムを統合した「動物に優しいまちづくり」を進めており、さらに韓国鉄道公社と連携し、愛犬との同乗が可能な専用列車の運行を実現するなど、先進的な試みが続いている。
江原特別自治道ペット支援センターの内部=2025年11月6日、江原特別自治道
自治体は施設整備と並行し、飼い主の意識向上を目的とした教育施策にも力を入れている。ソウル市は2018年より「ペット市民学校」を運営し、社会化訓練や散歩マナー、行動矯正といった実践的なプログラムを提供している。毎年約2000人の市民が受講し、適正な飼育方法を学んでいる。ソウル・江北(カンブク)区は2021年から、専門トレーナーが家庭を訪問し、個別に行動矯正を支援するプログラムを実施している。
こうした自治体の取り組みは、今や動物と人間が共に暮らす日常の風景に深く浸透している。推進スピードに地域差はあるものの、ペットとの共生という方向性は揺るぎない。人と動物が真に共生できる社会の実現に向けた歩みは、各地で着実に広がりつつある。
kimhyelin211@korea.kr