文化

2014.05.20

朝鮮第22代王、正祖(1752~1800)が主人公の映画「逆鱗」が4月30日に公開された。「逆鱗」は、龍のあごの下の鱗に触れると龍が激怒するという伝説から生まれた言葉で、王の怒りを意味する。

映画振興委員会は19日、「逆鱗」の5月18日時点の累積観客数が364万8367人に上ったと発表した。公開に先立ち、メディアと専門家を対象にした試写会が開かれた。メディア各社の評価は厳しいものだった。

「映画の手法に慣れていないテレビドラマの監督」「良いものばかり集めたが…合わせたら飽きる“整形美人”」「多くのことを描こうとしすぎて描ききれていない…」

18세기 조선 제22대왕 정조를 주인공으로 한 영화 ‘역린’. (사진 롯데엔테테인먼트)

18世紀の朝鮮第22第王、正租が主人公の映画「逆鱗」(写真提供:ロッテ・エンターテインメント)


公開が始まると、メディアの酷評とは裏腹に、観客の反応は絶賛の嵐だった。「俳優たちの演技は驚きの連続だった。特に、『中庸』第23章は心の奥深くに響くものがあった」「しっかりとしたストーリーだけでなく、映像の美しさで終始目を楽しませてくれた」「俳優たちの演技も、映像美も、ストーリーも、どれひとつとっても非の打ちどころのない作品」「どうして涙が止まらないんだろう?感動した」「これまで知らなかった正祖の魅力が感じられた。とても楽しかった」と称賛の声が相次いだ。

特に、台詞に登場する東洋古典『中庸(Doctrine of the Mean)』第23章(chapter23)は、大きな感動を呼んでいる。

「どんな些細なことも気を抜かずに最善を尽くすことが大事だ。些細なことに最善を尽くせば、真心を込めるようになる。真心を尽くせば表ににじみ出て、表ににじみ出たら表に現れ、表に現れれば性格が明るくなり、性格が明るくなれば人に感動を与えるようになり、人に感動を与えれば自分自身が変わり、自分自身が変われば成長する。だから、唯一真心を尽くす人だけがこの世の中を変えることができる」(其次致曲 曲能有誠 誠則形 形則著 著則明 明則動 動則變 變則化 唯天下至誠 爲能化 Next to the above is he who cultivates to the utmost the shoots of goodness in him. From those he can attain to the possession of sincerity. This sincerity becomes apparent. From being apparent, it becomes manifest. From being manifest, it becomes brilliant. Brilliant, it affects others. Affecting others, they are changed by it. Changed by it, they are transformed. It is only he who is possessed of the most complete sincerity that can exist under heaven, who can transform. (Doctrine of the Mean, chapter 23)

正祖がドラマや映画に頻繁に登場するのは、王位に就く過程そのものが劇的だったからだ。彼の父親の思悼世子は、肥大化した官僚勢力に立ち向かおうとして処刑された。王位に就くまでは、むしろ臣下たちの顔色をうかがい、振る舞いに注意しなければならないという立場だった。なんとか王位に就いた正祖は、官僚勢力の腐敗とはびこる不正を一掃し、国民の声に耳を傾ける民本主義政策を展開する。彼が統治していた時期の朝鮮は、世界文化遺産である華城が建てられ、数多くの書籍が編纂されるなど、繁栄を謳歌した。20世紀末~21世紀の韓国社会で、「改革」は避けては通れない動きと認識され、改革派の君主である正祖に注目が集まった。

「逆鱗」は、正祖が即位してから1年となる1777年7月28日の一日が描かれている。正祖がいつものように書庫兼寝殿の尊賢閣で本を読でいると、屋根の上から得体の知れない物音が聞こえてくる。これを怪しいと思った正祖は臣下を呼んで調べさせる。そうしたら刺客が屋根の上に忍び込んだという事実が明るみになり、これに関わった全ての人は罰せられる。これは、刺客が王の寝殿の奥深くまで忍び込んだ事件として朝鮮史上、最も致命的な暗殺事件と伝えられている。謀反に遭い、米びつに閉じ込められたまま死去した思悼世子の息子として王位に就いた正祖。彼がさらされた政治的状況と暗殺の危険を端的に見せたこの事件に、作家のチェ・ソンヒョンさんは強く魅力を感じた。この日の事件に秘められた様々な人の運命をモチーフにし、スリルあふれる24時間を描いたストーリー「逆鱗」を完成させたのだ。

暗殺の危機にさらされながらも強靭さと品格を失わなかった若き王「正祖」を演じたヒョンビンは、初めて史劇に挑戦した。彼は、正祖に関する本を読み、剣術や弓術、乗馬などアクション演技にも挑むなど完全にキャラクターになりきり、イ・ジェギュ監督はじめ現場のスタッフたちを「正祖そのもの」とうならせた。一番近くで正祖に仕え、王の書庫を管理する宦官は、キャラクターになりきる演技でスクリーンを圧倒するチョン・ジェヨンが演じた。正祖を暗殺する命を受ける朝鮮最高の「殺し屋」を演じたのは、「建築学概論」と「観相」で存在感を発揮したチョ・ジョンソクだ。また、「殺し屋」を育てる暗殺団の首謀者「クァンベク」はチョ・ジェヒョン、宮廷最高の野心家「貞純王后」は悪役演技に初めて挑戦したハン・ジミン、息子の正祖を守ろうと孤軍奮闘する「恵慶宮洪氏」は多数の映画とドラマに出演し、全盛期を迎えているキム・ソンリョン、謀反を暴こうと懸命に努める禁衛営隊長「ホン・グギョン」は「新しき世界」のパク・ソンウン、 秘密を抱えて宮廷に入った洗濯係「ウォレ」は「誰の娘でもないヘウォン」のチョン・ウンチェと、名前を聞いただけで強烈な存在感を感じさせる俳優が勢揃いした。

「逆鱗」は、話題のドラマ「ベートーベン・ウィルス」と「キング~Two Hearts」を演出したイ・ジェギュ監督の初の映画作品だ。イ監督は、ロケーションから衣装まで現場の細かい部分まで自ら指揮した。静的な雰囲気の中でもスリルが感じられるようイメージを演出し、重々しいストーリーにスリルあふれるアクションと独特の繊細な感性が加えられているという評価だ。

コリアネット ウィ・テックァン記者、イ・スンア記者
whan23@korea.kr

上映時間:135分、制作:チョイスカット・ピクチャーズ、パパズ・フィルム
配給社:㈱ロッテ・エンターテインメント

정조역 현빈.

正祖役のヒョンビン


환관역 정재영.

宦官役のチョン・ジェヨン


암살자역 조정석.

殺し屋役のチョ・ジョンソク


정순왕후역 한지민.

貞純王后役のハン・ジミン


정조의 모후 혜경궁홍씨역, 김성령.

正祖の母后、恵慶宮洪氏役のキム・ソンリョン


암살단 주모자역 조재현.

暗殺団の首謀者役のチョ・ジェヒョン


정조의 호위대장역 박성웅.

正祖の護衛隊長役のパク・ソンウン