旅行に欠かせない楽しみの一つが、その土地ならではの食べ物を味わうことだ。郷土料理と呼ばれるその地域独自の料理は、地域の特色によって千差万別だ。他の地域では味わえない料理で、季節によっても違う。
韓国人でだけでなく外国人旅行客にも人気の観光地「済州島」は、島という地域的特徴と火山岩地質という特色から、陸地ではなかなか見ることも味わうことも難しい多様な料理がある。稲作ができない火山岩地質の不毛の環境の中で、済州島の人々は代替作物と豊富な水産物で済州島ならではの食文化を築いてきた。
韓国の他の地域と同様に、済州島にも季節ごとに旬の食べ物がある。12~3月は漢拏峰、5~6月はアラとウニ、6~8月はヤリイカ、11~2月はブリが済州島の旬の食べ物だ。食材が豊富になる秋が過ぎ、冬が訪れる11月下旬も済州島は多様な旬の食べ物と郷土料理で旅行客の食欲をそそる。
済州島の沖合いで海女が海産物を獲っている。海女たちが獲った魚介類と海藻類は、済州島内でも最高級品とされている
済州島といえば真っ先に思い浮かぶのが「海女」だ。海女たちが採取する様々な海産物は、新鮮さを超え、リアルな味覚を伝える。海女たちが採取する海産物の中でも、済州島でしか味わえないのがトコブシだ。見た目も食感もアワビに似ているトコブシは、アワビよりもやや小さく、苦味があるのが特徴だ。刺身や蒸し物、焼き物、鍋物など調理法も多様なトコブシは、済州島内の飲食店でも、あるかどうか事前に確かめなければならないほど貴重な食材だ。
済州島の方言で「餅貝」と呼ばれるトコブシは、独特の食感でグルメたちに人気だ。写真は「焼きトコブシ」
済州島を代表する料理の一つ「ウニとワカメのスープ」は、済州島を訪れる旅行客に最も人気の朝食メニューだ
トコブシとともに海女が届けてくれる済州島の味は、ウニとワカメのスープと、貝とアワビの料理だ。済州島でぜひ味わいたい料理に挙げられるウニとワカメのスープは、潮の香りをいっぱいに含んだワカメにウニ特有のあっさりして甘い風味が加わり、他におかずがなくても茶碗1杯あっさりと平らげてしまう。
済州島のアワビ粥と貝粥は、食材のリアルな食感がそのまま生かされている
一般的に粥料理は食材の食感を味わえないものだが、済州島の粥料理は違う。どんぶりに入ったお粥の中に浮かぶ大ぶりのアワビと貝の身の食感は、お粥を食べていることを忘れさせる。
済州島の銀タチウオは、タチウオの中でも最高級品に挙げられ、高級なものは卸売店で一匹50万ウォンを優に超えることもある
海女が採取した魚介類で煮込んだ済州島のヘムルタンは、それぞれの食材特有の風味と香りが詰まっており、それらが調和したスープは絶品だ
済州島で味わえる海鮮料理の中で、味覚だけでなく視覚的にも楽しい料理は、タチウオとヘムルタン(海鮮鍋)だ。決して小さくない飲食店のテーブルに収まらないほど長い済州島の銀タチウオの焼き物は、あっさりした風味に甘さすら感じる。一緒に出されるヘムルタンは、色とりどりの海産物が鍋の中に隙間が見えないほどぎっしり詰まっている。済州島のテッポウエビやアワビ、貝、カニ、タコなど、20種余りの海産物がそれぞれの風味と香りを味わわせてくれる。様々な海産物を味わった後にインスタントラーメンの麵をスープに入れると、お腹はいっぱいでも箸がとまらない。
済州島の豚の焼肉は、油気が少なく、あっさりしてもちもちした食感で、グルメたちの間では済州島に行ったら必ず食べるべき料理に挙げられている
海女に象徴される海鮮料理とともに、済州島でぜひ食べたい料理が馬肉と豚肉の料理だ。古くから韓国には「人は漢陽(ソウル)に、馬は済州島に送る」という言葉がある。それほど済州島は馬の飼育に適した条件が揃っている。馬肉は済州島のグルメに挙げられるだけあって、価格はやや高めだ。しかし、豚肉は価格が手頃で、済州島を訪れるグルメたちが必ず口にする料理だ。確かに、済州島の豚肉料理は特別ではない。しかし、肉自体は一般の豚肉と明らかに違う。肉質がしっかりしていて油気が少ない。他の豚肉よりも、脂身がもちもちしていて口を楽しませてくれる。
あっさりした風味の済州島コギククスは、ククス横丁ができるほど、済州島を訪れる旅行客に人気だ
済州島で焼肉と並んで豚肉の深い風味を味わえる料理が「済州島コギククス」だ。麵に豚肉の肉汁を入れ、チャーシューを添えた「済州島コギククス」は、あっさりしていて豚肉特有のしつこさがない。約100年前から食べられているとされる「済州島コギククス」は、結婚式の披露宴で振る舞われる料理で、済州島では「チャンチグクス」とも呼ばれる。済州市のククス横丁には「済州島コギグクス」専門店が密集しており、24時間営業するところも多く、深夜の夜食として楽しむのも良い。
済州観光公社のソさんが、済州島の旅と食べ物の特徴について説明している
済州観光公社のソ・ヨンホさんは、「済州島のほとんどの飲食店では食事を済ませた客にみかんをサービスであげるほど、済州島の人々は人情が厚い。“清浄な島”済州島で採取・収獲された食材でつくった済州島の料理は、種類が豊富で、最高に美味しい」と話す。そして、「季節ごとの旬の食べ物と、それをテーマとしたイベントに合わせて済州島を訪れれば、より楽しい旅行になるはず」とアドバイスする。
記事・写真:コリアネット チョン・ハン記者
hanjeon@korea.kr