文化

2015.03.16

旅の醍醐味は見知らぬ場所で出会う風景と人だ。どんなに小さな町でも、それぞれ個性と特徴があるものだ。チョンラ(全羅)北道イムシル(任実)郡を形成する数多くの町も、それぞれ「物語」を持っている。豊かな自然の中で懸命に暮らしを営む人々の姿は、旅行者に刺激を与える。

전라북도 임실군 구담마을 정자에서 내려다 본 전경.

あずま屋から見下ろす全羅北道任実郡クダム村の風景


「こんな山奥の何もない村に何しに来たの?」

梅花クダム村敬老堂に集まった老婆たちの言葉だ。「とても小さな村なので、誰が何をしているのか全てわかる。泥棒なんかしたらすぐ捕まる」と説明する。確かに、高台に上れば村が一望できる。樹齢数十年と思われる巨大な木々や村の前を悠々と流れる川。豊かな自然に囲まれた中で素朴に暮らす村民の暮らしを間近で見ることができる。

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구담마을에서 자란 매실로 빚은 매실장아찌와 매실차.

クダム村で栽培された梅を使用した梅茶(上)と梅干(下)


しかし、春になると、そんな村が一変する。クダム村は、村全体が真っ白な梅の花畑になる。農業には適していない斜面の多い丘陵地という地域的特性を考慮し、村民は梅の木を植え、梅栽培で生計を立ててきた。クダム村で生まれ育った老婆たちがつくった梅干と梅茶は、この村の特産品の一つだ。甘酸っぱい風味は、一度口にしたら病みつきになりそうだ。春になると、真っ白な花に覆われた村全体が蟾津江と調和して鮮やかな景観を描く。この時期は、画板を持った多くの美術愛好家が訪れ、1~2日この風景を堪能する。

전라북도 임실군 진뫼마을. 섬진강변을 따라 조성된 자전거 길에서 여행객들이 겨울 끝자락을 즐기고 있다.

全羅北道任実郡チンメ村の蟾津江沿いに設置された自転車レーン。訪れた人々が去り行く冬を名残惜しんでいる


クダム村のあずま屋から一望できる蟾津江沿いを肌で感じたいなら、トクチ(徳峙)面のチンメ村がおすすめだ。蟾津江沿いの一方には自転車レーンが設置され、自然の道がなくなって残念に思っている人のために反対側には自然そのままのトレッキングコースが整備されている。川沿いをゆっくり歩きながら静かに流れる川の音に耳を傾けるのも良いし、涼しい川風を浴びながら自転車に乗るのも良い。少しでものんびり走ったり乗り方を誤ったりすると、すぐ後から警音器の音が聞こえてくる都心の自転車レーンとは違い、周りを気にすることなく川の流れる音と風の音にだけ集中することができる。

それほど離れていないサムゲ(三渓)面には、韓国の教育熱の高さを実感できる「パクサ(博士)ゴル村」がある。教育を受けられること自体が大きな幸運だった時期に160人以上の村民が博士号を取得したことを誇りとして名づけられた地名だ。もともとの地名は、「心を洗う」と意味の「セシム(洗心)村」で、村の前を流れる洗心川から名づけられた。豊かな自然と調和すれば心が洗われ、勉学に精進できそうだ。

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전라북도 임실군 박사골 마을의 특산품 삼계쌀엿(위)과 오이.

全羅北道任実郡博士ゴル村の特産品「三渓米飴」(上)ときゅうり(中央、下)


農村体験のために博士ゴル村を訪れる観光客もいる。アロニアの実でヨーグルトを作ったり、サツマイモや栗、梨などの栽培に参加したりすることができる。一番人気のプログラムは、昔ながらの方式で作る「三渓米飴」で、水飴ではなく純粋な造清(人工蜂蜜)だけを使用し、べとつかず歯につかないのが特徴だ。飴の中には穴がたくさんあり、そのおかげでさくっとした食感と香ばしい風味を味わうことができる。高地帯で栽培された水分含量の多い新鮮なきゅうりも三渓面の特産品だ。年中きゅうりが栽培される任実三渓営農組合の農場は、黄色いきゅうりの花が咲いていない日はない。芽が出て栽培するまで10日ほどかかる。丸々に太ったきゅうりからは「力強さ」が感じられる。

記事:コリアネット イ・スンア記者
写真:コリアネット チョン・ハン記者
slee27@korea.kr