名誉記者団

2020.07.14

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韓国ドラマ『梨泰院クラス』公式ポスター


[茨城=登久美子(日本)]
[写真=JTBC公式ホームページ]

「酒の味はどうだ?」
「…甘いです」
「(笑いながら)それは今日一日が印象的だったということだ」

これはドラマ『梨泰院クラス』の第1話で出てくる主人公パク・セロイとセロイの父親との会話。転校したばかりの高校を理不尽な理由で退学させられ、その後に父親と居酒屋に入って初めて二人で酒を酌み交わした際のやりとりです。

この酒が甘い、という表現。日本で酒が甘いと言うと、カクテルや酎ハイなどに含まれる糖分を感じて「甘い」というそのままの意味になってしまうため今ひとつピンと来ないのですが、韓国で酒が甘いは「人生は辛くて苦いので、それに比べたら酒は甘い」という意味だそうです。そして酒と言うのは焼酎のこと。何か事を成し遂げたとき、疲れたとき、または良いことがあったとき、口にする焼酎は「甘い」と言うことでしょうか。

梨泰院クラスは、韓国のケーブルテレビ局JTBCにて今年1月から3月まで放送されたテレビドラマです。放送開始と同時に視聴率は右肩上がり、最高視聴率16.5%を記録したのは最終回で、JTBC史上第3位の高視聴率を記録しました。現在日本で視聴可能なNetflixでも常にダウンロードランキングで『愛の不時着』と共にトップ10以内を維持するほどの人気を誇っています。


左から主人公であるパク・セロイ役のパク・ソジュンとチョ・イソ役のキム・ダミ

左から主人公であるパク・セロイ役のパク・ソジュンとチョ・イソ役のキム・ダミ


中心的なキャストは、主人公でタンバムの社長パク・セロイがパク・ソジュン、タンバムのマネージャーでIQ160のソシオパスであるチョ・イソがキム・ダミ、パク・セロイと高校の同級生で初恋の相手オ・スアがクォン・ナラ、そしてパク・セロイの宿敵、巨大飲食店チェーンであるチャンガグループの御曹司であるチャン・グンウォンをアン・ボヒョンがそれぞれ演じています。

ストーリーはピリリとスパイシー。グンウォンが起こした交通事故によって父親を亡くしたセロイは怒りに身を任せてグンウォンに暴力を振るい少年院行きとなる。少年院を出たセロイは梨泰院で居酒屋「タンバム(意味:甘い夜)」を開業、様々な事情を持つ仲間達と共に再起を目指しチャンガグループに立ち向かって行く、という復讐劇です。

私が梨泰院クラスでオススメしたい点は、なんと言っても数多くの名台詞です。セロイが様々な事情を持つ仲間達に向かって信念に基づいた言葉を投げていくのですが、そのセリフがキラキラと輝いていて胸に響きます。例えば第12話。対戦形式の料理番組にタンバムの店員であるヒョニが出場します。実はヒョニはトランスジェンダーであり、プライベートでは女性として生活しています。しかし、出場直前になってトランスジェンダーであることを意図的に流布された挙げ句、好奇の目にさらされることに。世間の偏見にヒョニは傷つき、テレビ局の廊下で泣きます。そんな時、セロイがヒョニにこう言います。

「お前がお前であることに、他人を納得させる必要はない」


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セロイとヒョニのシーン


このセリフも胸に響きました。他人を納得させようとすることでさらに傷つくぐらいなら、納得していただかなくて結構。悩むだけ時間の無駄。そんな強いメッセージを感じます。
この後ヒョニは意を決して番組に出場。そんなヒョニを、セロイを始めタンバムのスタッフ全員が信じて見守ります。

セロイが信念を貫いて前に進んでいく姿、そしてそのセロイを信じて後を追う仲間達を見るのはまさに痛快です。こんな上司のもとで仕事をしてみたい気分に駆られることも。梅雨のジメジメした空気、ちょっとした心配事なども梨泰院クラスを観るとすっきりした気分になります。そんなすっきりした気分で酒を飲めば、第1話目でセロイが発した「酒の甘さ」を感じることができるのではないでしょうか。甘い夜(タンバム)も更けていきます。


最終回でセロイと仲間達


2020年7月現在、梨泰院クラスは動画配信サービスNetflixで観ることができます。なお、7月13日(月)~19日(日)までの一週間、私が出演するラジオ番組『旅するK-POP』は梨泰院クラス特集です。梨泰院クラスの内容や見どころなどについて語っておりますので是非お聞き下さい。なお番組の詳細、放送局ごとの放送時間はカンナユリのブログ(https://kannayuri.hatenablog.com/)をご覧下さい。お楽しみに。


*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

eykim86@korea.kr