社会

2020.08.14

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ゲーム「ウェンズデー」のシーン=ゲームブリッジ提供



[ソウル=イ・ギョンミ]

「もし過去に戻れるなら、友人たちを救いたい」
旧日本軍の慰安婦(性奴隷)被害者で、平和運動家として活動した故金福童(キム・ボクドン)さんは生前、このような話をしたという。

叶わなかった金さんの願いが、「ゲーム」で実現することになった。太平洋戦争当時、日本軍が犯した戦争犯罪を取り上げたゲーム「ウェンズデー(The Wednesday)」である。

このゲームは、1991年8月14日に慰安婦被害者の金学順(キム・ハクスン)さんが、慰安婦被害のことを初めて世の中に知らせて以来、毎週水曜日に行われている「日本軍による性奴隷制問題解決のための水曜集会」にちなんで、「ウェンズデー(水曜日)」というタイトルが付けられた。

プレーヤーは主人公の「スニ」になって、現在と過去を行き来しながら手がかりを探し、それを基にして友達を救出する内容。スニは、朝鮮だけでなく、中国・インドネシア・オランダなど、いろんな国の慰安婦被害者に会ったり、731部隊による人体実験や南京大虐殺・強制徴用・連合軍捕虜に対する虐待など、日本軍による様々な戦争犯罪を目撃する。

これまで慰安婦被害問題は、ドラマや小説、映画などでは題材として取り上げられてきたが、ゲームというジャンルの題材になるのは、韓国では初めてのことだ。

ウェンズデーの制作会社の都敏碩(ド・ミンソク)代表は、「10代後半~30代前半の若い世代、特に外国人の中には、慰安婦について知らない人が多い」とし、「慰安婦問題を知らせるため、若者に親しみやすいゲームとして作りたかった」と話した。都代表は、歴史的事実に、何らかの形で次の世代が接し続け、長く記憶に残るコンテンツが増えてこそ、問題解決にも拍車がかかる」と説明した。

ゲームのシナリオを担当する黄裕晶(ファン・ユジョン)作家も、慰安婦被害を広く知らせることの重要性を言及した。黄作家は、「ナチスのハーケンクロイツを使用しないのは、それを使用してはいけない理由を知っているからで、旭日旗を単なるファッションアイテムのように使用するのは、旭日旗が多くの人々に与えた苦しみについて、韓国の歴史について知らないからである」と話した。慰安婦というのは、韓国だけの問題ではなく、中国・オランダ・オーストラリアの女性までも被害を受けた残酷な戦争犯罪であるため、海外に知らせるために、このゲームを作ったと説明した。

一人でも多くの人々にこのゲームを知ってもらうため、ゲームの難易度を調整し、対象年齢も下げるため取り組んでいる。また、英語・中国語・日本語・ドイツ語・フランス語・オランダ語の6言語の翻訳版も提供する予定だ。

ウェンズデーは、韓国コンテンツ振興院の「2019機能性ゲーム制作支援事業」に選ばれ、その可能性が認められた。今年の初めには、クラウドファンディングを実施し、目標金額の3倍以上の資金を集め、このゲームに対する支持を確保した。

ところが、慰安婦被害というものは、決して軽い問題ではないため、ゲームという娯楽の題材として使われることに対する懸念の声もある。

制作会社は、「ゲームは、映画やウェブ漫画のような他のコンテンツとは異なり、自らが主人公になって、問題を認識して集中できるという点から、学習効果が高い」とし、ゲームが持つ良い効果に注目してほしいと呼びかけた。

海外では、歴史的事実を題材にしたゲームが成功し、実際の社会変化をもたらしたことがある。

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争をモチーフとし,戦争の残酷さが感じられるポーランド発のゲーム「ディス・ウォー・オブ・マイン(This War of Mine)」。このゲームは、100億ウォン(約9億ウォン)以上の売上を上げ、その収益の一部を戦争孤児を支援する団体に寄付した。その結果、数百人の児童を救うという実質的な成果をあげた。

また、台湾発のゲーム「返校 Detention」は、1960年代の独裁政権の下、社会の暗い雰囲気を表現したゲーム。このゲームを通じて、洋の東西を問わず、各国の利用者が台湾文化と歴史に興味を持つきっかけとなった。

ウェンズデーの制作会社は、史料を詳細に考証し、今後発生する収益の一部を慰安婦被害者のために使うと約束するなど、ゲームに対し生じるであろう非難を最小限にするために、様々な努力をしている。



去年8月14日、少女像に触れている慰安婦被害者の李容洙さん=キム・シュンジュ撮影



当初、「旧日本軍による慰安婦被害者をたたえる日」である8月14日にリリースする予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、リリース計画に支障が出た。さらに、今年3月1日の前後に、日本のある掲示板に紹介され、議論の対象になったこともある。このような不安を払拭するため、11月にリリースすることにした。

都代表は最後に、ウェンズデーが若者にとって、慰安婦問題を解決するてめの道に向かう、もう一つの「進入路」になればと話した。ゲームをプレーした後、気になることがあれば検索したり、また、その内容を多くの人々とシェアすることで、広く知られることを希望した。

慰安婦被害の事実が全世界に伝えられ、29年が過ぎた。日本政府は、いまだに慰安婦被害者に公式謝罪をしていない。問題は、まだ解決していない。

km137426@korea.kr