博物館は、国の歴史や文化が生き残っており、過去・現在・未来が共存する場所だ。また、国の文化水準を確認できる場所でもある。KOREA.netは、全国各地にある国立博物館の中から6カ所を選定し、絶対に見逃してはいけない代表所蔵品を紹介する記事を連載する。今回は、慶尚南道・晋州市・晋州城にある国立晋州(チンジュ)博物館を訪問した。国立晋州博物館は韓国では唯一、壬辰倭乱に特化した博物館だ。壬辰倭乱の背景、過程、結果について詳しく知ることができる。
壬辰倭乱室に展示された板屋船(左)と亀甲船(右)の模型=チェ・ジヌ
[晋州=テレシア・マーガレット、チェ・ジヌ]
1. 朝鮮を代表する火薬兵器「中碗口」
この「中碗口」(右から2番目の遺物)は直径27.1センチ、長さ64.0センチで、飛撃震天雷などの弾丸を撃つ火砲だ=チェ・ジヌ
壬辰倭乱は1592年、日本が朝鮮を侵略し、1598年まで7年間続いた戦争だ。2度の侵略のうち、1597年の第2次侵略を「丁酉再乱」と呼ぶこともある。壬辰倭乱は朝鮮・日本・明の3国が参戦し、各国の社会・経済・文化などに多くの影響を及ぼした。壬辰倭乱室で特に注目を集めたのは、武器だった。
当時使われた火砲が展示されており、その中でも特に目を引いたのは「中碗口」。朝鮮前期から後期にかけて、城を攻撃する際や、反対に守る際にも使われた。国立晋州博物館で見られる「中碗口」は慶尚南(キョンサンナム)道・河東(ハドン)郡・鼎蓋(ジョンゲ)山城から出土した。
「碗口」は朝鮮時代に作られた火砲の一つで、大きさによって大・中・小・特小の4種類がある。「中碗口」は2番目に大きい。「碗口」は一般的な円筒形の大砲とは異なり、銃筒の前に弾丸を装填する器形が付いているのが特徴だ。有効射程距離は約400~500メートルだ。この「碗口」には1590年に尚州(サンジュ)浦でイ・ムルグムという人が鋳造したと刻まれている。火砲の製作にも実名制を導入したのだ。
チェ・ユミ学芸研究員は「中碗口が朝鮮前期から後期まで長く使われたが、実物はたった2点しかない」として「その中でも国立晋州博物館にある『中碗口』には、製作年度と製作者が分かる銘文があるので特に重要だ」と話した。
2. 慶尚南道の優れた仏教美術がうかがえる国宝「山清泛鶴里三層石塔」
慶尚南道・地域の仏教美術を代表する「山清泛鶴里三層石塔」は、国立晋州博物館の建物の隣にある野外展示場にそびえ立っている=チェ・ジヌ
国立晋州博物館の建物の隣にある野外展示場にそびえ立っている石塔がある。慶尚南道地域の仏教美術がうかがえる「山清泛鶴里三層石塔」だ。高さが4.42メートルもあり、遠くから見ても迫力がある。屋根部分の反りは、隅部で強くなっており、引き締まったものになっている。慶尚南道地域の仏教美術が優秀であることがよく分かる。
塔は2段の基壇の上に3層の塔身を載せた一般的な形だ。典型的な統一新羅の様式である。残念ながら、頂上の装飾と下層基壇の蓋石の下の部分は残っていない。韓国では唯一、閃長岩で製作された。
塔は基壇と塔身の一層目の石に8部神衆と菩薩像が派手に彫刻されている。「装飾塔」とも呼ばれる理由だ。装飾が派手である分、荘重で素朴な魅力はやや控えめだ。にもかかわらず、統一新羅後期の石塔の特徴が詳しくうかがえる優秀な作品として評価されている。
1階の塔身石の西側の菩薩像の様子。右手には蓮の花を持ち、左手は胸の前に置いた。指を曲げているのが特徴だ=チェ・ジヌ
上層基壇の一面には2つずつ計8つの神将像が彫刻されている。神将像が武力で仏法を守ってくれる神であるからだろうか。石塔に彫刻された神将像は鎧を着て武器を持っている。
チェ・ユミ学芸研究員は「一層目の塔身の四面には、供養する菩薩像がそれぞれ彫刻されているが、正面の菩薩像だけは前を向いている」として「神将像と菩薩像の組み合わせはかなり独特だ。9世紀の統一新羅の石塔様式の重要な指標であり、当時の優れた彫刻技術や仏教美術をうかがうことができる」と説明した。
3. 死者の魂を運ぶ「陶器 車輪飾の角杯」
「陶器 車輪飾の角杯」は高さ21.6センチ、長さ23.3センチ、台径11.5センチだ。下の部分が広く、上に行くほど狭くなる丸い台の上に角の形をした杯がのっている= 国立晋州博物館
この角杯は5世紀頃、阿羅伽倻地域(慶尚南道・咸安郡の一帯)で製作された。当時、新羅(シンラ)と伽耶(カヤ)では車、家、動物、靴などの形をした象形土器が多く作られた。象形土器は主に墓から出土されるので、死者と関連があると推定される。
土器は祭儀を行う際に、酒などを回し飲みするために作られた器であり、死者の魂を死後の世界に運ぶという意味があったと思われる。他の土器とは異なり、車輪やワラビの形で飾ってあるのが特徴だ。伽耶人の葬式に関する文化がうかがえるという点で、重要な遺物である。
# 国立晋州博物館をより楽しめるコツ
国立晋州博物館が多様なコンテンツを制作した。観覧客が展示されている遺物だけでなく、壬辰倭乱をより理解しやすくするためだ。
- 実感体験館は外国人はもちろん観覧客ならだれでも、現場や博物館のホームページ(https://jinju.museum.go.kr/, 韓国語、英語、中国語、日本語)から予約して利用できる。 この体験館では、韓国初のCタイプ充電式「勝字銃筒」を活用した拡張現実(XR)コンテンツを楽しむことができる。朝鮮の総統に変身し、閑山(ハンサン)島大捷と晋州大捷に参戦することで、壬辰倭乱に対する理解を深めることができる。
- 国立晋州博物館の公式ユーチューブチャンネルを通じて「火力造船連載映像」(https://www.youtube.com/playlist?list=PL1qQ3tmkDHhQM1I5QdKobPWG1aV0i6HeJ)など、壬辰倭乱に関するオンラインコンテンツが楽しめる。国立晋州博物館は「火力造船連載映像」の英語、中国語などの字幕を製作中であり、今後も外国人視聴者のための映像を引き続き作っていく予定だ。
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