Q. 他にも多くのスポーツがあるのに、敢えてヨットを選んだわけは。 A. 幼少の頃から探検が好きだった。楽で平凡な旅行よりも冒険的な活動に好奇心を大きく揺さぶられたからだ。特に、水が好きで、スクーバダイビングだけでなく、漢江横断や、中国の揚子江を探査したこともある。2010~11年にはクロアチアを出発して2万キロを航海し、昨年はカリブ海を出発して2万6千キロを航海する挑戦にも成功した。海は私に未知の世界への憧れを与えてくれる。自分自身で道をつくっていくというのが何ともいえない魅力だ。
Q. 無寄航でヨットの世界横断に挑戦しようと思ったきっかけは。 A. 約13年前に日本に出張にいったとき、たまたま無寄航のヨット航海に挑戦した日本人に関する本を読んだ。その瞬間、「これなら私にもできそう」と思った。その当時は働き盛りの年齢で、ヨットに接するのは初めてだったので学ぶべきことが多くあった。でも、心の中では、いつかこの夢を叶えたいと思っていた。本格的に準備を始めたのは昨年10月頃。約1年かけて準備したことになる。
2014年4月、キム船長が大西洋と太平洋が合流するホーン岬を航海している
Q. 南太平洋から南米チリ最南端のホーン岬を通過する南極海を最も厳しい区間に挙げているが。 A. この区間は、かつてスペインとポルトガルの航海家らが発見したルートで、風が強くて波が荒く、「海洋のエベレスト」と呼ばれている。交信チームから気象情報を聞き、それを分析して瞬時の判断で航路を決定する。寒さと荒波に耐えられるよう訓練している。
Q. 険しく孤独な戦いに敢えて挑戦するのはなぜ。 A. 私自身冒険が好きだというのが最大の理由だが、これをきっかけに韓国でヨットへの関心が高まってほしい。どの分野でも最初に道を切り開く人が必ずいる。韓国のヨット界の可能性は無限だが、それに対する関心と知識がないのは残念だ。私の冒険が誰かの心の中に熱い火をつけることを期待したい。
大海原を自由に航海するキムさん
Q. ヨット名を「アラパニ」、韓国語で「海のカタツムリ」と名づけたわけは。 A. カタツムリは、動きはのろいが遠くまで動く生物体だ。ゆっくりだが、遠く、どこにでも行くことができる。それが私の航海の目的にマッチしていると思った。早まる気持ちを抑え、ゆっくり世界を航海したい。
Q. 8カ月という長丁場の航海を目前に控えている。意気込みを一言。 A. 200日以内に戻ってくることが目標だ。とても険しい道のりだが、これからの海洋冒険活動の第一歩を踏み出したに過ぎないと思う。囲碁でいえば最初の一手のようなものだ。これからどんどん発展するであろう韓国のヨット界に貢献したい。