[写真=中永裕紀子]
私が韓国料理に興味を持ったのは、韓国の歴史ドラマからでした。王様が食べるいくつものおかずが並べられた御膳。庶民がごはん屋さんで食べるごはん。
特に、朝鮮時代の宮廷料理は、王様の体調に合わせて考え作られていて、漢方、薬膳を勉強している私にはとても興味深いものでした。
韓国の韓方、日本の漢方。どちらも中医学の陰陽五行思想がベースになっています。それを表している代表が、五味五性を取り入れた朝鮮時代の宮廷料理で、今は高級料理としてお祝いなどの特別な席で食べられる韓国料理「九節板(クジョルパン)」ではないかと思います。
日本にも「九節板」と同じようお祝いに食べられる料理があります。お正月の食卓を彩る「おせち料理」です。地方によって、少し内容は変わってきますが、重箱に五色五味を取り入れた食材を、詰込み、それぞれに効能と由来が伝わっています。
九節板は「九節板」と呼ばれる八角形の器の真ん中に、クレープのような薄い生地のミルジョンがおかれ、まわりに八種類の具を並べ、ミルジョンで具を巻き、辛しタレをつけて頂く目と口を同時に楽しませてくれるお料理です。現代では「九節板」の器がなくても、普通のお皿にその形を作り、おしゃれにアレンジされています。
「九節板」の名前には、深い意味が込められています。韓国人は古くから「九」が「全体」
「完全」「充満」を象徴すると考えてきました。例えば「九足」はすべての民、「九重天」を宇宙を意味します。このように九節板には「多様な食材が混ざり合い、融合する」という意味があります。
そして、この時の八種類の具の色が重要で、青、赤、黄、白、黒の五色を使うのは、陰陽五行思想の五味五色をバランスよくとることで、健康で過ごせるという考えからです。
星雲社「性味表大事典」によると、五色には多様な働きがあります。
<青>
肝の機能を助ける。解毒、疲労回復、デトックス。
ほうれん草、小松菜、春菊、きゅうりなど
<赤>
心の機能を助ける。補血、涼血、血をきれいにする。
赤唐辛子、パプリカ、トマト
<黄>
脾の機能を助ける。消化吸収、食欲増進
カボチャ、さつまいも、じゃがいも、松の実など
<白>
肺の機能を助ける。滋陰、潤肺。
大根・梨・玉ネギ、白葱
<黒>
腎の機能を助ける。アンチエイジング。
黒きくらげ、シイタケ
王様の食事を準備する「水刺間(スラッカン)」の「尚宮(サングン)」(朝鮮王朝の女官の称号)になったつもりで、季節や体調、見た目を考えて「九節板」を作ってみました。
<材料>
きゅうり 2/3本
人参 1/2本
じゃがいも 大1個
黒きくらげ 1袋
しいたけ 4枚
玉ねぎ 1/4個
パプリカ(赤) 1/8個
卵 1個
塩、ごま油、焼肉のたれ、くこ
<ミルジョン>
小麦粉 75g
卵白 1個分
水 150㏄
塩 少々
<からしタレ>
からし 小さじ1
砂糖 大さじ1
酢 大さじ1
<作り方>
① 野菜は千切りにする。
② フライパンに米油を熱し、きゅうりから順に炒め、塩をする。
③ 椎茸は焼いた後、焼肉のタレで味をつける。
④ 卵は、薄焼き卵にし、細切りにする。
⑤ ミルジョン:全ての材料を合わせてこし、30分冷蔵庫で寝かせる。フライパンに油をしき、生地を10cmの丸型に焼く。1時間程置くことでグルテンができ、やぶれにくくなる。
⑥ からしタレ:全ての材料を混ぜ合わせる。
⑦ 「九節板」又はお皿に具を色が重ならないように、配列を考えながら盛りつけ、ミルジョンの上に、「コミョン(料理の彩りの為にあしらう飾り)」にクコの実を盛り、からしタレを添える。ミルジョンに好きな具を巻いて、からしタレを漬けて頂く。
フライパン一つで作れるのに、見た目豪華で楽しい料理です。
野菜は、大きさを揃え、ひとつひとつ炒める事で、手間はかかりますが、それぞれの食材を食感の良い状態で仕上げる事ができます。
よもぎやくちなし、五味子、岩茸粉末で色を染めて、五色の生地を作ると、より華やかな九節板になります。
残った具をご飯にのせて、混ぜて食べたのが「ピビンパ」と言われていて、また楽しめます。皆さんも「尚宮」になったつもりで、作ってみてください。
*この記事は、日本のコリアネット名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
eykim86@korea.kr