[文・写真=田尾秀子]
博物館のロビーには、大きなオンギ(甕)のオブジェが飾られています
全羅南道の光州には友人がいることもあり、度々訪れる機会がありました。とは言え、友人に会うためなので特にどこへ行くでもなく食事をしたり、カフェに行ったり、まるで私までそこで暮らしているかのように過ごしていました。
しかし、それではせっかく来たのだから何か発見をしたいと思い、友人にとっても初めての場所だった「南道郷土料理博物館」を一緒に訪れました。
■ 南道郷土料理博物館について
この博物館は、南道(ナムド=全羅南道)の味と伝統を守り伝えるために設立されました。
そこでは、郷土料理の保存・研究だけでなく、伝統料理講座も開かれており、誰もが南道の食文化を体験できる場となっています。また、食を通して南道の歴史も学べます。
■ 南道の味わいと食文化について
韓国・全羅南道(チョルラナムド)は、海・山・平野が広がる自然豊かな土地です。そんな自然に恵まれた土地では、新鮮な海産物、山菜、穀物が揃うこともあり、昔から韓国料理の宝庫と呼ばれています。
■ 南道料理の特徴
夏は暑く湿気が多いため、昔から新安の特産物である塩や、唐辛子、塩辛で食材を保存し、それらをふんだんに使用した、味わい深い料理が特徴です。
また、見た目の美しさを大切にし、味と彩りを楽しむ料理文化が発展しました。
地域ごとの郷土料理が一目でわかります
■ 地域ごとの郷土料理
全羅南道には地域ごとに豊かな郷土料理が受け継がれてきました。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。
・中南部エリア : 光州 ーキムチ、肉のジョン、オリタン(アヒルの鍋料理)、チュモッパッ(おにぎり)
潭陽ー竹筒ご飯、トッカルビ(韓国式ハンバーグ)
羅州ーコムタン
宝城ー緑茶トッカルビ(緑茶入り韓国式ハンバーグ)
和順ー黒山羊料理
康津ー回春湯(滋養スープ)
長興ーアサリの刺身
霊岩ームツゴロウのスープ
・西南エリア : 務安ーセバルナクチ(手長ダコ)
康津ーウナギ焼き
木浦ーホンオフェ(熟成ガンギエイの刺身)
新安ーメセンイ(カプサ青ノリ)のスープ
珍島ークギジャインジョルミ(クコの実餅)、ウコン料理
莞島ーアワビ粥
また、光州には忘れてはならない郷土料理があります。それは「光州チュモッパッ(おにぎり)」です。
光州チュモッパッは “平和と絆のあらわれ ”
■ 光州チュモッパッ(おにぎり)について
1980年の5・18民主化運動の際、市民が塩とごまを混ぜたご飯を食べやすいように拳の形に握り、海苔で包んだものを市民軍に差し出したことから生まれたおにぎりです。それは市民が互いに励まし合い、分け合った “ 平和と絆のあらわれ ” とも言われています。
おにぎりは、現在は健康的な具材や、光州の特産品を活かした光州ならではのソウルフードとして親しまれています。
私は正直なところ、チュモッパッ(주먹밥)を「おにぎり」としか捉えていませんでした。光州の人たちにとってのチュモッパッは、重要な歴史を伝えるという深い意味が込められた食文化であることを、今回初めて知りました。旅先で出会う一皿が、その土地の物語を静かに語りかけてくれているようにも思いました。
友人が暮らす光州という街に対して、私はこれまで、どこか重たい印象を抱いていました。けれど、チュモッパッに込められた意味を知り、人々の温かな気持ちに触れたことで、この街で、また違う一面を探してみたくなりました。
*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。
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