名誉記者団

2026.03.04

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[文・写真=坪井由美子]

大好きな韓国の郷土料理が生まれた場所を訪ね、その土地の文化を感じながら味わってみたい!と思い、地方をめぐる旅に出ました。各地で出会ったグルメやスポット、人々との交流を綴ります。第1回目は韓国第2の都市、釜山からスタート。伝統のマッコリ造りや激辛鍋に挑戦します。

(今回は飛行機ではなく、初めて船で渡韓しました。大阪発のワンナイトクルーズの様子は、前回の記事でご紹介しましたのでぜひご覧ください。)

フェリーが釜山に到着したのは、午前10時過ぎ。この日はお昼過ぎにマッコリ造り体験の予約をしてあったので間に合うか心配だったのですが、釜山港は釜山駅のすぐ近くだったので助かりました。宿に荷物を預け、さっそく出発します。

地元に住む若い友人、チュランさんと釜山駅で合流し、地下鉄とバスを乗り継いで金井山城(クムジョンサンソン)へ。バスは市街地を抜けて金井山の中へと入り、くねくねした山道をどんどんのぼっていきます。

急カーブが続く山道をバスで揺られながら金井山城村へ

急カーブが続く山道をバスで揺られながら金井山城村へ


到着した金井山城村は、さっきまでの喧騒が嘘のようにのどかな場所で、空気がおいしく感じられました。小川には、金井山の綺麗な湧き水が流れています。

釜山で一番高い金井山には、韓国最大の山城や嶺南地方の三大寺院のひとつである梵魚寺があり、ハイキングの名所としても知られています。K(軽)登山部としてはそちらも大いに気になるところですが、今回の目的はなんといってもマッコリ。韓国民族酒第1号に指定されている「金井山城マッコリ」へと直行します。

韓国で唯一、郷土民族酒に指定されている金井山城マッコリ

韓国で唯一、郷土民族酒に指定されている金井山城マッコリ


金井山城マッコリは、足で麹をふむ伝統的な製法が守られている唯一の醸造所で、オーナーはマッコリ部門で唯一の韓国食品名人に認定されているという、いわばマッコリの聖地。ここで今回、念願のマッコリ造りを体験します。

担当の方に案内されて、まずは博物館へ。古くからマッコリ造りに使われてきた道具が写真や資料とともに展示されていて、この地域の歴史が紹介されていました。

博物館でマッコリ造りの道具を見学

博物館でマッコリ造りの道具を見学


隣接する体験館では、金井山城マッコリの歩みを紹介するビデオを鑑賞。マッコリ造りには、長い長い、波乱万丈の歴史があったことを知りました。

ビデオには日本語の字幕が用意されていたので、この地域の歴史がよく理解できました

ビデオには日本語の字幕が用意されていたので、この地域の歴史がよく理解できました


朝鮮王朝の時代、金井山城村は農業に向いていない土地だったため、人々は麹造りで生計を立てていたそうです。そんなとき、金井山城が築かれることになり、各地から集まった建設作業員たちにマッコリがふるまわれるようになりました。この頃のマッコリは、肉体労働の後の疲れと渇きをいやす飲み物であり、農作業中の空腹をみたす食糧でもあったようです。

山城が完成後、故郷に戻った人々はその味が忘れられず、おいしいマッコリの噂が全国に広まっていきました。酒税法により麹の取り締まりがあった厳しい時代にも、麹造りに従事していた女性たちが、こどもを置いてでも麹を持って逃げて、命がけで麹を守ってきたといいます。

そうやって大切に守られてきた伝統の麹造りは何百年も受け継がれ、今もここでは、足踏み製法にこだわってマッコリ醸造が続けられています。踏めば踏むほど弾力のある麴になり、麹菌とデンプンの量を増やす効果があるのだとか。通常、マッコリに使われる麹は1種類ですが、金井山城マッコリでは、麦を原料に白麹、黒麹、黄麹の3種類の麹を使用するのが特徴。色んな麹を入れることで、奥深い味わいのマッコリになるそうです。

できあがった麹(ヌルク)は麹部屋で発酵させます。室内は常に高温に維持され、練炭で温度調節。少しのぞかせていただいたのですが、ピザのような形の麹が整然と並ぶ様子は圧巻でした。

平べったく成形されたヌルクが整然と並ぶ麹部屋

平べったく成形されたヌルクが整然と並ぶ麹部屋


発酵が終わった麹は日に当てて乾燥させ、蒸した米と金井山の湧き水と一緒に樽に入れて温めると、お酒の発酵が始まります。一週間ほど発酵させた後、ろ過してマッコリの完成です。材料は麦、米、水とシンプルながら、膨大な労力と時間、愛情をかけてマッコリが造られていることに感服しました。

さて、いよいよマッコリ造り体験の時間です。といっても、短時間でマッコリを造ることはできませんので、今回はマッコリの材料を混ぜる工程と、最後のろ過の工程を体験します。通常は発酵に数日~1週間ほどかかりますが、ろ過体験のために、あらかじめ発酵が完了したものが用意されていました。

米と麹をよく揉みほぐします

米と麹をよく揉みほぐします


ボウルに米と麹を混ぜて揉みます。ここでしっかり揉みほぐすことで、甘みや旨みのあるマッコリになるそうです。

水を混ぜて容器に移します

水を混ぜて容器に移します


金井山の綺麗な地下水を混ぜて容器に移し、数日から1週間ほど発酵させます。

次はろ過の工程です。用意されていた発酵が完了したマッコリを使います。

発酵が完了したマッコリ

発酵が完了したマッコリ


マッコリをザルで絞ってろ過します

マッコリをザルで絞ってろ過します


発酵が完了したマッコリを、ザルに押し付けるようにしっかりと絞ってろ過します。

しぼりたての生マッコリで乾杯!

しぼりたての生マッコリで乾杯!


できあがったばかりの生マッコリは、驚くほどフレッシュでこくがあり、まろやかな口当たり。ヨーグルトのようなフルーティな酸味と甘みが調和して、穀物の香ばしさも感じられます。とろりとしたマッコリのなかに、この地の歴史と文化、人々の思いがとけこんでいるかのような、なんとも奥深く、濃厚な味わいでした。

空腹の状態で飲んだので、ほろ酔いですっかり良い気分に。本日のメインイベントを無事終えてほっとすると、急激におなかが減ってきました。この地域には、金井山城マッコリの相棒として定番の、山羊の焼肉や東莱式ねぎチヂミといった名物料理があります。そちらも魅力的でしたが、私が釜山でぜひとも食べたかったのが、ナッコプセ。チュランさんおすすめのお店が中心街にあるということで、下山することにしました。

ナッコプセとは、ナクチ(手長だこ)、コプチャン(牛ホルモン)、セウ(エビ)が入った釜山発祥の辛い鍋料理。釜山随一の繁華街、西面にあるナッコプセ専門店に入ると、店中においしそうな匂いが充満していて、ますます食欲が刺激されました。

ぷりぷりの海鮮とホルモンのコンビネーションが絶妙のナッコプセ

ぷりぷりの海鮮とホルモンのコンビネーションが絶妙のナッコプセ


隣のテーブルで真っ赤にぐつぐつ煮えているナッコプセを見てちょっと怯んだ私は、「辛さ控えめ」でオーダーしたのですが……お店の人がテーブルで調理してくれたナッコプセをごはんにのせて一口食べた瞬間、全身から汗が吹き出るほどの辛さに驚愕!

ごはんにおかずと混ぜてビビンバ風にいただくのがナッコプセの流儀

ごはんにおかずと混ぜてビビンバ風にいただくのがナッコプセの流儀


しびれるほどパンチが強いのだけれど、辛みのなかに海鮮とホルモンの深い旨味も感じられて、癖になりそうな味わいです。「辛い!」「おいしい!」を繰り返しながら、夢中でいただきました。

倉庫や工場をリノベしたカフェが集まる田浦カフェ通り

倉庫や工場をリノベしたカフェが集まる田浦カフェ通り


燃えるようなお腹と口を癒すため、食後は田浦(チョンポ)カフェ通りへ。2017年にニューヨークタイムズで「今年行くべき場所」に選ばれたこのエリアには、古い建物をリノベーションした個性的なカフェやショップが集まっていて、歩いているだけでもわくわくします。

地元の女子学生たちで賑わうおしゃれなカフェでいただいたのは、同店のシグネチャーメニューのアインシュペナー。もともとはオーストリア発祥の、コーヒーに生クリームをのせた飲み物ですが、近年なぜか韓国でブームとなっていて、独自に進化しているようです。甘いクリームとエスプレッソの苦みを同時に味わえるアインシュペナーは、ナッコプセを食べた後にぴったりのドリンクでした。

温かい気持ちをいただき感動

温かい気持ちをいただき感動


何より嬉しかったのが、レシートに日本語で「ありがとうございます」と手書きのメッセージが添えられていたこと。じいんとして、思わず目頭が熱くなりました。

歴史あるマッコリからトレンドのカフェまで、新旧のグルメを満喫し、お腹も心もほかほかになった一日。初日にして、釜山が大好きになりました。

明日はどんな出会いが待っているのでしょう。

次回の記事に続きます。

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

hjkoh@korea.kr