名誉記者団

2026.03.25

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[文・写真=田尾秀子]

ソウル観光といえば、五大古宮や伝統市場などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、ソウルには私たちがまだ知らない、歴史を感じる貴重な場所が数多く残されています。

私はこれまで何度も韓国を訪れてきましたが、自分で行ってみたい場所を探すので、誰かに案内してもらう経験はありませんでした。そんな中、以前手に入れた一冊のパンフレットが目に留まりました。『文化観光解説士と歩く ソウル徒歩解説観光』。バリアフリーコースを含む37もの多彩なコースが用意されており、実はすべて無料で参加できるというのです。

私はその中から、通常の観光ではなかなか訪れる機会のない「陽川路(ヤンチョンロ)・謙斎(キョムジェ)鄭敾(チョン・ソン)」解説コースを選びました。

■ 陽川郷校(ヤンチョンヒャンギョ)

ソウルに唯一現存する陽川郷校。紅箭門の先に、朝鮮時代の学びの場が佇んでいます。

ソウルに唯一現存する陽川郷校。紅箭門の先に、朝鮮時代の学びの場が佇んでいます。


まず向かったのは、ソウルに現存する唯一の郷校、「陽川郷校」です。解説士の方に、「なぜこのコースを選んだのですか?」と尋ねられ、「まだ多くの人が知らないような、ソウルの深い歴史に触れたかったからです」と答えました。すると解説士の方は、このコースをご案内するのは久しぶりだと、少し驚いたように、でもどこか嬉しそうに微笑んでくださいました。

「郷校」とは、儒教を基礎とした公的な教育機関のこと。朝鮮時代の太宗12(1411)年に創建され、1981年に全面的に復元されました。門をくぐると、学生たちが勉学に励んだ「明倫堂(ミョンニュンダン)」があり、その両脇には寄宿舎が並んでいます。寄宿舎が二つあるのは、当時の身分制度によって分けられていたためだそうです。敷地は想像してたよりも小規模でしたが、ここで学んでいた学生たちはきっと優秀だったのだろうと、当時の光景に思いを馳せました。

■ 宮山(クンサン)地下トンネル歴史展示館

手作業で掘削された当時の跡が残る宮山地下トンネル。歴史の重みが肌に伝わってくる場所です。

手作業で掘削された当時の跡が残る宮山地下トンネル。歴史の重みが肌に伝わってくる場所です。


続いて訪れたのは「宮山地下トンネル歴史展示館」です。ここは太平洋戦争末期の日本統治下、近隣住民が労働力として強制動員され、手作業で掘削された歴史的遺構です。2008年に発見され、安全に整備された後の2018年にはトンネルの内部を眺められる展示館が造成されました。そして2022年には、その歴史的な価値から「ソウル未来遺産」にも選定されています。

私は、実際にこの暗く冷たいトンネルを目の当たりにし、来る日も来る日も、当時の人々がどのような思いで岩肌を掘り続けたのか――。出口の見えない過酷な日々に思いを馳せると、胸が締め付けられ、息が詰まるような思いに駆られました。

■ 小岳楼(ソアックル)

小岳楼から眺める漢江。曇り空が、案内板に描かれた水墨画の世界と不思議に重なりました。

小岳楼から眺める漢江。曇り空が、案内板に描かれた水墨画の世界と不思議に重なりました。


次に訪れたのは、漢江を一望できる「小岳楼」です。朝鮮時代後期を代表する画家、謙斎 鄭敾が、名画『木覓朝暾(モンミョク・チョドン)』を描いた場所としても知られています。私が訪れたときはあいにくの曇り空でしたが、写真に撮ってみると、不思議と当時の水墨画の世界を思い起こさせるような趣があり、かえってこの天気で良かったのではないかと感じました。

■ 謙斎 鄭敾記念館

謙斎 鄭敾の代表作『金剛全図』。見えない部分まで描き出す豊かな想像力に、当時の芸術の極みを感じます。

謙斎 鄭敾の代表作『金剛全図』。見えない部分まで描き出す豊かな想像力に、当時の芸術の極みを感じます。


最後に訪れたのは、『謙斎 鄭敾記念館』です。実は当初、私は名前が二つなので二人画家の記念館なのだと思い込んでいました。しかし実際にはそうではなく、「謙斎 」とは鄭敾という画家の雅号のことだったのです。鄭敾は「真景山水画」の開拓者として名高い画家ですが、実は本業は官僚。地方の行政を担う郡守(グンス)を務める傍ら、専門的な絵画制作を行う機関「図画署(トファソ)」に籍を置く画員としても活躍していました。

館内では、国宝でもある代表作『金剛全図』の複製を鑑賞できます。解説士の方の説明によると、ドローンなどない時代に 鄭敾は、地上から見える景色に自らの想像力を加え、空から見下ろしたようなこの壮大な構図を描き上げたのだそうです。その圧倒的な想像力に、ただただ驚かされました。

韓国の1000ウォン札の裏面に描かれた名画。身近なところにある、語り継がれるべき歴史のかけらです。

韓国の1000ウォン札の裏面に描かれた名画。身近なところにある、語り継がれるべき歴史のかけらです。


また、解説士の方から「韓国の1000ウォン札の裏面に描かれているのも、彼の作品ですよ」と教わり、記念館や美術館へ行かずとも名画を見られることに驚きました。私は普段じっくり眺める機会がなかったお札を、思わず隅から隅まで観察してしまいました。

■ 旅を終えて

今回、解説士の方にガイドをしていただいたおかげで、ソウルの中にもまだ訪れたことのない貴重な場所がたくさんあることに気づかされました。丁寧に案内してくださった解説士の方に、改めて感謝いたします。

今回のコースだけでなく、この「ソウル徒歩解説観光」には魅力的なプログラムが37も用意されています。まだ体験したことがない方に、ぜひ心からおすすめしたいプログラムです。

ソウル徒歩解説観光(Seoul Guided Walking Tour )

HP : dobo.visitseoul.net

*この記事は、日本のKOREA.net名誉記者団が書きました。彼らは、韓国に対して愛情を持って世界の人々に韓国の情報を発信しています。

innocence@korea.kr