張海春(チャン・へチュン)
世界キムチ研究所所長
「キムチ」が世界中の人々から健康に良い食品として注目されている。
キムチは2001年、国際食品規格委員会(CODEX)で国際標準規格が認められ、2006年、米国の健康専門誌「ヘルス(Health Magazine)」で「世界5大健康食品」に選ばれた。2013年には、キムチを作って分け合う「キムジャン文化」がユネスコの人類無形文化遺産に登録され、世界の注目を集めるきっかけとなった。
コロナ禍以後には、キムチが免疫力を高めるヘルシー食品という認識が形成された。さらにK-POP、韓国ドラマなど韓流ブームの中で韓国料理に対する関心が高まり、キムチは代表的なK-フードとしての地位を確立した。
キムチのこのようなグローバルな人気を証明するかのように、昨年の輸出対象国数は史上最多
の93カ国だった。特に「健康食」、「ヴィーガン料理」という認識のもと、北米と欧州地域での人気はうなぎ登りだ。
キムチは「発酵の科学」、つまりに乳酸菌による発酵食品である。白菜、大根、キュウリなどの野菜と唐辛子粉、ニンニク、ショウガ、塩辛など様々な副材料を混ぜて発酵させる。発酵することでキムチ独特の旨味や風味が生まれ、豊富な栄養素と乳酸菌を摂取できる体に良い食品である。
11月22日は「キムチの日」。11月22日になった由来は、キムチの材料一つ一つ(11)が合わさり、22種類(22)以上の効能を生むという意味だ。キムチ産業の振興、キムジャン文化の継承と発展、キムチの栄養的価値と重要性を広めるために制定された法定記念日だ。
2021年、米国・カリフォルニア州が、海外で初めて「キムチの日」を制定した。政府出資研究機関である「世界キムチ研究所」が、長年行ってきたキムチの研究・歴史・文化などの専門資料を提供したことにより国家記念日として定められた。その後、米ニューヨーク州、ワシントンが次いで「キムチの日」を制定し、連邦議会も毎年11月22日を「キムチの日」に制定した。また、イギリスのキングストン区、ブラジルのサンパウロ市、そしてアルゼンチンでも「キムチの日」を国家記念日に制定した。
海外で「キムチの日」が制定されたことは、キムチのグローバル化において新しい変化をもたらす契機になった。「キムチの日」が制定されたハワイ州には「キムチ博物館」が開館し、英国国王のチャールズ3世は、キングストン区のニューモルデンにあるコリアンタウンを訪れた際に、誕生日祝いとしてキムチをプレゼントされた。
遠い異国で生活していた韓国人にとってキムチは、故郷を懐かしく思い出しながら食べた悲しい記憶を持つ食べ物でもあった。しかしキムチは、韓国人と現地の人を一つの共同体としてまとめる役割を果たし、それによりキムチの位置づけは大きく変わった。
過去、人々にとってのキムチが「1度食べたことがあるかないか」という食べ物であったとすれば、現在のキムチは「科学的にも認められた、健康に良い食べ物」であり、「好んで食べ、自分でも作ってみたい」と考えるほど、人々のキムチに対する意識が肯定的に変化してきている。
今後、世界中でより多くの人に、キムチを食べてもらいたいのであれば、伝統的なキムチ作りの方法にこだわらないことだ。例えば、外国人にも簡単に作れるレシピの紹介や、その国の料理との組み合わせなどを提案するといった工夫が必要だ。そうすることで、外国の食文化と結びつき、その土地に合ったキムチやキムチ料理が生まれる。キムチを通して、互いの国を越え、国家間の食文化の融合を促し、さらなる発展が期待できるだろう。。
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張海春所長は2021年8月から世界キムチ研究所を率いている。