社会

2026.03.05

韓国社会において、動物をめぐる環境が大きく変わり始めている。ペット飼育世帯の急増に伴い、動物福祉への関心も高まり、政策や生活の現場でも新たな動きが広がっている。

シリーズ「動物と共に生きる」では、動物の法的地位をめぐる議論から、自然環境を活かした保護飼育区域「サンクチュアリ」の最前線、さらに地方自治体が打ち出す動物フレンドリー施策など、人間と動物の関係をめぐる社会の変化を追う。

20以上の市民社会団体で結成された「動物は物ではない」連帯の活動家らが、国会正門前で、係留中の「動物の非物化」を盛り込んだ民法改正案の早期成立を求めている=2023年5月30日、ソウル、「動物は物ではない」連帯

20以上の市民社会団体で結成された「動物は物ではない」連帯の活動家らが、国会正門前で、係留中の「動物の非物化」を盛り込んだ民法改正案の早期成立を求めている=2023年5月30日、ソウル、「動物は物ではない」連帯


[キム・へリン]

動物は長らく、法制度上「物」として扱われてきた。現行民法第98条は、物を「形のあるものや電気など管理可能な自然エネルギー」と定義している。この規定に基づき、動物も売買や処分の対象と位置づけられてきた。

しかし近年、政策の視点が大きく変わりつつある。「動物をいかに利用するか」という従来の視点から、「いかに尊重し、適切に扱うか」という共生の姿勢へと、その軸足が確実に移り始めている。

民法改正をめぐる議論は、2021年に法務部が「動物は物ではない」との条項を盛り込んだ改正案を立法予告したことで本格化した。第21代国会では任期満了に伴い廃案となったものの、 続く第22代国会でも同趣旨の法案が提出され、法制司法委員会で審査が続いている。

現時点では、動物を法的権利の主体として認める段階には至っていない。 しかし、立法化への模索が繰り返されている事実そのものが、政策の方向性が明確に転換したことを物語っている。 

国会本会議で「犬の食用目的の飼育・と殺・流通などの終息に関する特別法案」が可決された=2024年1月9日、聯合ニュース

国会本会議で「犬の食用目的の飼育・と殺・流通などの終息に関する特別法案」が可決された=2024年1月9日、聯合ニュース


法的地位をめぐる議論が続く一方で、特定の分野ではすでに具体的な制度改革が進んでいる。その象徴ともいえるのが、「犬の食用問題」だ。

2024年1月に国会で成立した「犬の食用目的の飼育・と畜・流通などの終息に関する特別法」は、2027年2月より食用を目的とした犬の飼育やと畜、流通を全面的に禁じる内容となっている。

農林畜産食品部によると、昨年2月9日時点で、全国の犬飼育農場1537カ所のうち40%にあたる623カ所がすでに廃業している。

展示動物をめぐる制度も、抜本的な見直しが図られた。2022年には「動物園および水族館の管理に関する法律」の全面改正案が国会で成立した。従来の「登録制」から、より厳格な基準を求める「許可制」へと移行し、2023年12月に施行された。

同月には、クジラ目(Cetaceans)が「観覧目的での保有禁止種」に指定され、水族館への新規搬入が原則として認められなくなった。あわせて、動物園以外の施設での野生動物の展示が禁じられたほか、動物園への新規導入も研究・教育目的に限定された。

さらに、動物への騎乗体験といった過度な負担を与える行為も全面的に禁止され、動物福祉の基準は一段と強化されることとなった。

大田コンベンションセンターで開かれた「大徳研究開発特区50周年記念・技術事業化博覧会」で、来場者が展示されたヒト臓器オルガノイドを見学している。オルガノイドとは、幹細胞などから作製された、実際の臓器に似た三次元の細胞構造体で、動物実験に代わる次世代の試験法の一つとして注目されている=2023年10月20日、大田広域市・儒城区、聯合ニュース

大田コンベンションセンターで開かれた「大徳研究開発特区50周年記念・技術事業化博覧会」で、来場者が展示されたヒト臓器オルガノイドを見学している。オルガノイドとは、幹細胞などから作製された、実際の臓器に似た三次元の細胞構造体で、動物実験に代わる次世代の試験法の一つとして注目されている=2023年10月20日、大田広域市・儒城区、聯合ニュース


動物実験の分野では、一律禁止ではなく、代替技術への投資と倫理管理の徹底を並行して進める方針がとられている。

産業通商資源部、科学技術情報通信部、保健福祉部は昨年6月、「先端バイオ医薬品の非臨床有効性評価技術および製品開発事業成果拡散協議体」を共同で発足させた。微小生理システム(MPS)をはじめとする、動物試験に代わる代替試験法の技術開発支援に力を入れている。

また、農林畜産食品部は今年1月、研究者が動物に不必要な苦痛を与えない実験計画を立案できるよう、「動物実験計画書作成ガイド」を策定・配布した。技術支援と並行し、現場における倫理意識の向上を促す狙いがある。

民法第98条の条文自体はいまも変わっていない。しかし、その条文を取り巻く社会環境は、すでに様変わりしている。

動物をめぐる政策のあり方もまた、「いかに利用するか」というかつての視点から、「いかに共に生きるか」という共生の理念へと、確実にその軸足を移しつつある。

kimhyelin211@korea.kr