韓国文化院





2024年 韓国文学翻訳コンテスト
受賞者発表
 
大阪韓国文化院と韓国出版文化産業振興院は、翻訳を通じて韓国文学の魅力を知っていただくために、韓国語学習者の皆様を対象とする「2024年 韓国文学翻訳コンテスト」を開催いたしました。

日本全国からたくさんのご応募をいただき、誠にありがとうございました。
厳選な審査の結果、最優秀賞、優秀賞、奨励賞が決定いたしましたのでここに発表いたします。
受賞された皆様、おめでとうございます!

受賞された方は、12月1日(日)13時から行われる「表彰式」にご参加いただけますようお願いいたします。


◆受賞者
最優秀賞
朝井 美恵(大阪府)

優秀賞
浦野 香代(埼玉県)
北澤 慶(東京都)

奨励賞
中井 優子(熊本県)
松渕 優子(東京都)
宮本 理子(大阪府)

※個人情報は全て未公開のうえ審査を行いました。審査結果に関するお問合せはご遠慮いただきますよう、お願い申し上げます。


◆入賞者の皆様へ
11月22日(金)に個別に案内メールをお送りいたしました。
表彰式への参加可否などを必ずご返信いただけますようお願い申し上げます。


◆表彰式
〇日時:2024年12月1日(日)13時~14時(12:40より開場)
〇会場:大阪韓国文化院 1F ミリネギャラリー
   ※〒530-0044 大阪市北区東天満1-1-15
〇内容:審査員の講評、各賞(最優秀賞・優秀賞・奨励賞)表彰


◆審査員
カン・バンファ(翻訳家)
趙倫子
翻訳家
古川綾子
翻訳家


◆審査評
【総評】 趙倫子翻訳家
今回、この翻訳コンクールには主催者側が想定したよりもはるかに多くの応募がありました。2000年頃からの韓流ブームは20年以上の時を経て、「学習者」という枠を越え、主体的に韓国語を「楽しむ」人びとを生みだしてきました。その楽しみ方の一つに「韓国文学を読み、日本語に翻訳する」ということも間違いなく含まれているのでしょう。
応募作たちは、原文に忠実な訳、個性的な訳、冒険的な訳、実にさまざまでした。どれが正解というわけではありません。作者が意図する作品の世界観、文字に現れていない全体の雰囲気をどこまで正確にとらえられているか、などを評価しました。男子大学生の一人称はどうするのか、この主人公ならば、この思いがけない状況でどのように話すのだろうか、泣くのだろうか、あるいは子供を愛したいのにうまくいかない母親がわが子に、また、思うように自分を愛してくれなかった自身の母親にはどんな風に話しかけるのだろうか。これらは一例ですが、そのような細かなことの積み重ねで作品の雰囲気は作りあげられていきます。短い作品の中で、登場人物のキャラクターを構築することは難しいことです。そのようなことから、該当部分以外のところもよく読んだうえで訳出されているのか、あるいはそうでないのかというところも評価のポイントとなりました。
応募者の韓国語歴はさまざまでしょうが、最終的に審査に残った応募作品はどれも水準の高いものでした。その中から、全編にわたってよく読み込まれているであろうことがわかり、なおかつ日本語に訳出するときの創意工夫が感じ取れるものを入賞作品としました。今回残念ながら入賞を逃したみなさんも、以上に述べたようなことを心の隅に置いていただき、より一層、楽しんで翻訳に挑戦していただきたいと思います。
2024年は、ハン・ガン氏がノーベル文学賞を受賞し、これからさらに韓国文学への注目は高まるでしょう。この翻訳コンクールがこの先も回を重ね、さらに韓国文学を楽しむ人びとが増えればと思います。


【個別評】 カン・バンファ(翻訳家)
最優秀賞朝井 美恵 様
まず、大賞作品である「깊은 밤들」をとてもよく読み込まれているなと思いました。作品を理解し、登場人物の心情に寄り添う姿勢は、翻訳家にとってなにより大切なものではないでしょうか。原文の細かいニュアンスを訳文に生かそう、曖昧な表現をやりすぎない程度に意訳しようと苦心された痕跡が諸処に見えました。辞書だけに頼らないボキャブラリーの豊富さも決め手だったと思います。そして、読みやすさ。読み手のことを考えると、読みやすさは文学翻訳においてとても重要なポイントです。選ばれるべくして選ばれた最優秀賞です。おめでとうございます。

優秀賞
浦野 香代 様
「정적」の訳文の一人称は、登場人物や設定、展開などを考えると、やはり「僕(ぼく)」または「俺(おれ)」が当てはまりやすいかと思われます。「ぼく」を一人称にして、可読性の高いフランクな雰囲気の訳出をしてくれました。地の文に積極的に会話体を入れ込んでいるのも、その理由のひとつになっています。また、原文の過去形を、日本の小説のスタイルに合わせて適所で現在形にすることで、リズムがよくなり、読み手を引きこむ力を生んでいます。原文に対する想像力が及ばず惜しい部分もありますが、ふんだんな長所を持った翻訳作品です。

優秀賞
北澤 慶 様
「깊은 밤들」は非常に没入感の高い作品となっており、訳文にも同じことが求められるかと思います。最後の一文も、訳者が作品をどう読んだかによって訳が分かれる箇所です。訳者として、話者の複雑な心の動きを丁寧に追いながら、基本に忠実ながらも可読性の高い訳文を抽出してくれました。まわりくどさや無駄のない日本語も高いポイントになっています。原文を読み切れていない部分や意図的でない抜けも見られますが、全体的に完成度の高い翻訳作品となっています。

奨励賞
中井 優子 様
「정적」を、読みやすく、読み手にやさしく翻訳してくれました。固有名詞を自然な形で本文に入れ込む工夫に拍手を送りたいと思います。本作はSF的な要素を科学的な面から理解し、訳文に反映させなければならず、その面で惜しい部分はありますが、悩み、工夫した痕跡のある誠実な翻訳です。

奨励賞
松渕 優子 様
こちらも作風に合わせたくだけた表現を多用することで、「정적」の翻訳において差別化をはかっていた翻訳です。必要な個所に注釈をつけることで、翻訳の基本姿勢を見せてくれています。こなれた表現が多い反面、直訳調も諸処に目立ったのが惜しい点です。

奨励賞
宮本 理子 様
作品の空気感に浸って絶妙な日本語を駆使して「깊은 밤들」を翻訳してくれました。ところどころに意訳を用いて作品の緊張感を高める工夫が際立っています。ただ、意訳は著者の意図を正しく理解したときのみに有効なので、本来の意味を狭めてしまっている箇所もあるのが惜しい点です。


◆審査基準
- 原作の理解・翻訳の充実
- 可読性
- 表現の独創性



◆賞


 

内容

人数

最優秀賞

賞状・副賞 (10万円相当のギフト券)

1名

優秀賞

賞状・副賞 (5万円相当のギフト券)

2名

奨励賞

賞状・副賞 (SAMSUNG Galaxy Tab)

3名



◆お問い合わせ
駐大阪韓国文化院 
〔TEL〕 06-6585-0585
〔E-Mail〕 korean@k-culture.jp