文化

2014.03.14

「美しいものは醜く、醜いものは美しい」

これは、英国の大文豪ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)の悲劇「マクベス」に出てくる台詞だ。この作品では、「善と悪」や「美しさと醜さ」など、相対立する価値が複雑に絡み合っている。社会が巨大化・複雑化するほど人生の真の意味について考え、人と深く語り合うようになる。そうした人間の複雑な葛藤と多様な感性を、シェイクスピアほど巧みに表現した作家がいるだろうか。

シェイクスピア生誕450周年を迎え、彼の作品を基にした演劇やオペラ、映画、ミュージカルなどが韓国で相次いで上演されている。優れた洞察力で時代と空間を超える彼の作品は、多くの人の共感を呼んでいる。彼の作品に見られる善と悪、欲望と欲望のぶつかり合いは、今もなお続いている。

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(맨 위부터) 국립극단이 선보이는 ‘멕베스’의 한 장면, ‘템페스트’의 포스터, ‘베니스의 상인’을 현대적으로 재해석한 ‘노래하는 샤일록’ (사진: 국립극단)

国立劇団が上演するシェイクスピア原作の3作品。(上)「マクベス」のワンシーン、(中央)「テンペスト」のポスター、(下)「ヴェニスの商人」を現代風にアレンジした「歌うシャイロック」(写真提供:国立劇団)



国立劇団は今月、ソウルの明洞芸術劇場でシェイクスピアの4大悲劇の中で最も強烈で誌的な作品といわれる「マクベス」を、4月には国立劇場のタルオルム劇場で「歌うシャイロック」を、5月には同じ会場で「テンペスト」をそれぞれ上演する。「歌うシャイロック」は原作の「ヴェニスの商人」の原型を保ちつつもモノクロジックを抜け出してシャイロックをアレンジしたコミディで、「テンペスト」は兄弟間の裏切りと復讐、偶然の出会いと恋愛を描いた後期の傑作だ。また、5月末には明洞芸術劇場で公演「ジュリアス・シーザー」を予定している。同作品は、ローマの政治家シーザーを描いた演劇で、「ブルータス、お前もか」の台詞でよく知られている。

オペラも上演される。国立オペラ団は、ジュゼッペ・ヴェルディ(Giuseppe Verdi)作曲のオペラ「オテロ」とシャルル・グノー(Charles-François Gounod)作曲の「ロミオとジュリエット」をそれぞれ10月と11月にソウルの「芸術の殿堂」で上演する。「ロミオとジュリエット」は悲劇のラブストーリーと優雅で叙情的な音楽が絶妙に調和した作品で、「オテロ」は原作を再構成したストーリーと壮大なスケールの音楽で構成された荘厳な悲劇だ。また、シェークスピアの原作を脚色したミュージカルも上演される。「ハムレット」の女主人公「オフィーリア」の視点から再構成したミュージカル「オフィーリア」が、5月に世宗文化会館のMシアターで上演される予定だ。

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국립오페라단이 선보이는 오페라 ‘로미오와 줄리엣’(위)과 ‘오텔로’(아래)의 한 장면 (사진: 국립오페라단)

国立オペラ団が上演するオペラ「ロミオとジュリエット」(上)と「オテロ」(下)のワンシーン(写真提供:国立オペラ団)



海外招待公演も開かれる。国立劇場が招待した英国のブリストル・オールドヴィック劇場(Bristol Old Vic Theatre)の演劇「真夏の夜の夢」が、4月にタルオルム劇場で上演される。英国で昨年初演されたこの作品は、ロンドンの日刊紙「ガーディオン」から「魔法にかかったような神秘的な作品」と評価された。今年2月にロンドンのバービカン・センター(Barbican Centre)での公演を皮切りにワールドツアーに突入し、韓国でファイナルを迎える予定だ。

映画では、バズ・ラーマン(Baz Luhrmann)氏が監督を務め、レオナルド・ディカプリオ(Leonard DiCaprio)とクレア・デインズ(Clair Danes)が主演した「ロミオとジュリエット」(1996)が27日に韓国で再公開される。同作品は、原作のあらすじと台詞はそのままで時代設定を現代に変えられているのが特徴だ。両家は地域で勢力を二分し、長年にわたって抗争を繰り返してきた財閥に置き換えられ、ロックミュージックが加えられた青春映画に様変わりした。フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli)監督とオリヴィア・ハッセー(Olivia Hussey)主演の甘く切ないメロディで有名な1968年作の「ロミオとジュリエット」とは全く違う雰囲気だ。

재개봉되는 영화 ‘로미오와 줄리엣’의 포스터 (사진: 프레인 글로벌)

再公開される映画「ロミオとジュリエット」のポスター(写真提供:プレイン・グローバル)



このように、シェイクスピアの作品は、演劇や映画、ミュージカル、オペラなどの舞台でまだまだ健在だ。世界で彼の作品が上演されない日はないといえるほど、彼の作品は様々なアレンジが加えられて舞台で上演されている。シェィクスピアの作品が相次いで上演されるもう一つの理由は、彼の作品が演劇のお手本といわれるほど、作品に内在する葛藤を解消していくストーリー構成とキャラクターの描写が完璧だからだ。

「ハムレット」を脚色して今年初めに上演された演劇「二人の兵士の物語」を演出したソク・ソンイェさんは、「シェイクスピアの作品は、見れば見るほど新しいものを発見する」と話す。2月に西江大学のメリーホール大劇場で上演された「ロミオとジュリエット」を現代風のアレンジで演出したヤン・ジョンウンさんは、「シェイクスピアは、演劇に携わる人の魂と心臓」と評した。国立劇団の「マクベス」を演出したイ・ビョンフンさんは、「シェイクスピアの戯曲は演劇のバイブルだ。不確実な時代を生きる現代人は、得体の知れないシステムの罠に陥って破滅する。目に見える世界と内的な真実は必ずしも一致しないことを悟らせようとしている」と説明した。

国立劇団の芸術監督のキム・ユンチョルさんは、「シェイクスピアの作品は、彼の死去から400年となる2016年まで世界の演劇界の話題になりそうだ。向こう3年間、シェイクスピアの主要レパートリーを継続的に上演する」と話している。キム監督は、「シェイクスピアの演劇は、5世紀前の作品であるにもかかわらず、どの国でも現代の演劇としてその国の背景に合わせることができるというメリットを持っている。現代芸術が形にする人生の神秘さや曖昧さ、絶望に陥った不条理な状況まで描かれているため、シェークスピアの演劇は現代人も共感できる魅力を持っている。死去から400年となる2016年は、もっと大々的にシェイクスピアの作品を上演する計画」と話した。

コリアネット イム・ジェオン記者
jun2@korea.kr