映画「国際市場」が年末の韓国社会を温かくしている。
1950年代から1980年代までの韓国社会を背景としているこの映画は、17日に公開し、24日の時点で観客動員数230万人を突破し、興行成績1位となった。当時の生活ぶりや時代的背景をリアルに表現しているのが人気の秘訣と分析されている。
この映画はフィクションだが、時代の背景は事実を元にしており共感を得ている。映画は1950年12月、韓国戦争の真っ最中だったフンナム(興南)撤退から始まる。中共軍の攻勢に押され、連合軍はハムギョンナムド(咸鏡南道)ハムン(咸興)から大規模な撤退を余儀なくされる。共産政権治下から逃れ韓国行きを選択した主人公の家族は、フンナム(興南)埠頭からの脱出を図る。
数万人の脱出難民が米軍の軍艦に乗ろうとして離れ離れになる。主人公も船に上る過程で父親と末の妹と別れることになる。
何も持たず身一つで朝鮮半島の南の端、プサン(釜山)に定着した主人公の家族は、国際市場でいろいろな仕事をすることになる。1960年代、主人公は母親と兄弟を扶養するため、鉱山労働者としてドイツに渡る。契約期間の3年間、一生懸命働き、大金を稼いで帰国する。ドイツで生活中に看護師として現地で働いていた女主人公と出会い、夫婦の縁を結ぶ。そして我が家を手に入れ、家族の稼ぎ手として暮らしの基盤を築き上げる。
弟の学校の授業料を工面するためドイツ派遣鉱夫の道を選んだトクスが同じくドイツに出稼ぎに来ていた看護師、ヨンジャに出会う場面。2人は夫婦の縁を結ぶことになる。
ドイツ派遣鉱夫とドイツ派遣看護師は、互いに交流しながら寂しさを紛らせ、かなりの数が夫婦となった。
ドイツ派遣鉱夫として働くトクスは、鉱山事故で危険な目にも会う。
実際、ドイツは当時の韓国の若者にとって羨望の対象だった。20代前半の多くの韓国人男女が鉱山労働者または看護師・看護助手として働くためにドイツに向かった。韓国派独協会によると、1963年12月21日から1970年代後半まで、鉱山労働者7936人と看護師・看護助手1万1057人がドイツの鉱山と病院でそれぞれ働いた。
ところが、1970年代初め、トクスは弟の結婚資金を工面するため、ベトナム戦争の物資運搬労働者として就職しベトナムに向かう。そして、足に銃傷を負い、一生残る障害を負う。その後、帰国し、国際市場で輸入製品を売る小売商人として働きながら家族を養っていく。
実在の人物のストーリーではないものの、韓国戦争や、ドイツやベトナムでの就職は60代後半~70代の韓国人が経験した共通の出来事であり、観客の共感を得ている。
その後、1980年代に実際に行われた離散家族の再会は、この映画の最後を飾る。1950年にフンナム(興南)で別れた末の妹とKBSの放送番組で再会する姿は、当時の雰囲気をリアルに再現したと評価されている。
映画を作ったユン・ジェギュン監督は、「大変でつらくてし烈な時代を、本当に一生懸命生きてきた私たちの父の世代へのオマージュと言える映画」と、制作の意図を語る。個人の家族史ではあるものの、戦争、外国での就労、離散家族の再会へとつながる韓国の現代史を描いたこの映画は、今後も観客を引き付け続けるだろう。
韓国の日刊紙は映画「国際市場」の人気ぶりを集中報道した。
映画「国際市場」のポスター
コリアネット ウィ・テクァン、ユン・ソジョン記者
whan23@korea.kr
写真提供:「国際市場」フェイスブック、ネイバー(Naver)映画