文化

2016.03.08

最近、韓国メディアは作家2人の死去を一斉に伝え、彼らを追悼した。その2人とはウンベルト・エーコとハーパー・リー。書店は追悼コーナーを設け、読者たちは彼らの作品に再注目した。

2月22日付の東亜日報に「『薔薇の名前』を残して…時代的知性が眠る」というタイトルで掲載されたウンベルト・エーコの訃報

2月22日付の東亜日報に「『薔薇の名前』を残して…時代的知性が眠る」というタイトルで掲載されたウンベルト・エーコの訃報



ウンベルト・エーコは韓国で最も人気の高い海外作家の一人。小説、エッセイはもちろん学術書籍に至るほとんどの著書が翻訳・出版された。それでだけでなく、エーコの主要著書を集めた25冊の「マニアコレクション」もある。2012年に行われた韓国メディアとのインタビューではエーコ自身も「韓国は私が書いたすべての本を翻訳した数少ない、例外的な国」と話したことがある。

韓国での名声を裏付けるかのように、主要メディアではこぞってエーコの訃報を取り上げた。「偉大なメンター、熱情的作家を失った」「深く、広い知性の大きな響き」など、今の時代における最も有名な識者の1人だったエーコの人文学の世界にフォーカスを当てたり、「中世を愛した『現代のルネサンスマン』」など、彼がツイッターに残した文章やインタビューを振り返ったりもした。今年6月には遺作の長編小説『ヌメロ・ゼロ(Numero Zero)』が韓国で発刊される予定だというニュースも一緒に伝えられた。

同じ日に死去したエーコとハーパー・リーを一緒に扱った2月22日付京郷新聞の記事「社会の現実と偏見に訴えかけた『良心の声』」

同じ日に死去したエーコとハーパー・リーを一緒に扱った2月22日付京郷新聞の記事「社会の現実と偏見に訴えかけた『良心の声』」



エーコと同じ日に死去した『アラバマ物語』の著者、ハーパー・リーの訃報も主要日刊紙に欠かさず載せられた。 「米人種差別から見られる人間の偏見を戒める」「黒人差別を超え…良心の声を発する」などのタイトルで掲載された彼女の訃報では、20世紀の古典となった『アラバマ物語』の影響力、波及力についてもれなく触れていた。

ハーパー・リーの小説『アラバマ物語』は韓国でも広く読まれる。1960年代に『子供たちは知っている』というタイトルで出版した日本語重訳版が絶版され、1990年代以降は原題に従った翻訳版が『物まね鳥殺し(앵무새 죽이기)』というタイトルで発刊された。2003年以降で30万部が販売された。昨年の7月には50余年ぶりの新作『見張り人(原題:Go Set a Watchman)』も韓国で発刊され、ベストセラーになった。

一部の記事では、世界恐慌に苦しむアメリカの1930年代を背景に人種差別や経済格差などの偏見に囚われてはならないというメッセージを投げかける『アラバマ物語』は、経済格差・性別・地域などの葛藤が内在する今の韓国社会に示唆するものがあると書いた。

コリアネット チャン・ヨジョン記者
icchang@korea.kr