文化

2016.05.13

鯛は春の季節に食欲をそそる魚で、他の魚より日持ちし味が淡白であるため昔から高級料理に使われた。とくに「魚頭一味(魚は頭の部分が一番美味しいという意味の四字熟語)」という言葉が鯛の頭から由来されるほど最高の味を誇る。

鯛麺はその名前から麺料理と思われがちだが、実は鍋料理の一種。鯛の切り身を焼いたチヂミに牛肉と様々な野菜をバランスよく盛ったものに、沸騰したダシをかけて素麺や春雨を入れその場で茹でて食べる宮廷料理だ。朝鮮時代の宮廷で酒肴膳や宴会のお膳にのぼった。鯛麺は味はもちろん、色の材料が調和し見栄えが良いため食べる者の五感を楽しませる。

韓国料理の材料と食事マナー、食べ物の由来などについて書いた料理書籍『朝鮮料理学(1940、ホン・ソンピョ著)』によると、鯛麺は「芸妓との風流より美味しく美しい料理」といい、「勝妓楽湯」または「勝佳妓湯」とも呼ばれる。鯛麺にこのような名前を付けたのは朝鮮前期の文臣、許琮(ホ・ジョン、1434∼1494)である。朝鮮第9代王の成宗(ソンジョン、1457∼1494)時代、外敵が咸鏡道(ハムギョンド、中国との国境に接していた)周辺を随時侵していたため、国王は許琮に義州営門を設置し軍隊を統率することを命じた。許琮が軍隊を率いて外敵の侵入を防ぐと、住民たちは感動し誠意を込めた料理を作り献上したのだが、それが鯛麺だった。許琮はそれに「勝妓楽湯」という名前を付けた。

鯛麺は味が上品で手間がかかるため最高の宮廷料理と呼ばれる。今でも黄海道・海州の珍味として伝わっている

鯛麺は味が上品で手間がかかるため最高の宮廷料理と呼ばれる。今でも黄海道・海州の珍味として伝わっている



**材料と分量
鯛 500g(1尾)、塩 0.8g(小さじ1/5)、白コショウ 0.1g
ダシ: 牛肉(胸肉) 150g、水 1.2kg(6カップ)
下味①: 薄口醤油 3g(小さじ½)、ごま油 1g(小さじ¼)
牛肉(外もも肉) 60g
タレ②:薄口醤油 6g(小さじ1)、長ネギ 4.5g(みじん切り、小さじ1)、にんにく 2.8g(みじん切り、小さじ½)、コショウ 0.1g、ごま油 1g(小さじ¼)
肉団子: 牛肉(みじん切り、外もも肉) 20g、豆腐 10g
タレ③ : 醤油 2g(小さじ⅓)、長ネギ 2.3g(みじん切り、小さじ½)、にんにく 1.4g(みじん切り、小さじ¼)、コショウ 0.1g、ごま油 2g(小さじ½)
シイタケ 10g(2個)、イワタケ 1g、キクラゲ 2g
シュンギク 20g、赤唐辛子 20g(1個)、春雨 40g
クルミ 10g(2個)、ぎんなん 8g(4個)、松の実 3.5g(小さじ1)
卵 180g(3個)、セリ 15g、小麦粉 21g(大さじ3)、油 26g(大さじ2)
ダシ 800g(4カップ)、 薄口醤油 9g(大さじ½)、塩 4g(小さじ1)

鯛はうろこを引いて内臓を取り除いてからきれいに洗って身をおろす

鯛はうろこを引いて内臓を取り除いてからきれいに洗って身をおろす



** 材料の下準備
1. 鯛はうろこを引きヒレを切り取り、内臓を取り除いてからきれいに洗う。身をおろして横4cm縦5cm程度に薄く切って、塩と白コショウをかけ10分ほど置いてから綿布で血を拭き取る。
2. ダシ用の牛肉は綿布で血を拭き取る。牛肉(外もも肉)は綿布で血を拭き取り、横4cm、幅・厚さ0.3cm程度に千切りしてから、タレ②をかけて味付けをする。
3. みじん切りした牛肉は綿布で血を拭き取り、豆腐は綿布で包んで水気を切ってから細かく潰す(9g)。それをみじん切りした牛肉と一緒にタレ③をかけて味付けをしてから直径1.5cm程度の肉団子を作る。
4. シイタケとイワタケ・キクラゲは水で1時間ほどもどす。シイタケは石づきをとって水気を拭き取り横2cm、縦 4~5cmの大きさに切る。イワタケはこすり洗いしてから中央の突起をとって水気を拭き取ってから細かく切って卵白を入れてかき混ぜる。キクラゲは下処理をして1枚ずつ離しておく。
5. シュンギクはした処理してからきれいに洗い、赤唐辛子は洗ってから縦に半分に切って横2cm、縦4~5cmの大きさに切る。春雨は1時間ほど水でふやかす。
6. クルミはお湯でふやかし薄皮を剥く。ぎんなんは温めたフライパンに油をひいて中火で2分ほど炒ってから殻を剥く。松の実は三角帽をとって綿布で拭く。
7. 卵は黄身と白身をそれぞれ薄焼きにする。イワタケの薄焼き・セリのチヂミはシイタケと同じ大きさに切る。

** 作り方
1. 鍋にダシ用の牛肉と水を入れて強火にかけ、沸騰したら中火にして30分ほど茹でる。ダシは冷やして綿布にかけ、牛肉はすくって横2cm、縦1.5cm、厚さ0.3cm程度に切って片肉にしてから下味①をかけて味付けをする。
2. 牛肉の肉団子は小麦粉をまぶして卵水にくぐらせ、温めたフライパンに油を引いてから中火で転がしながら3分ほど焼く。
3. 鯛の切り身は小麦粉をまぶして卵水にくぐらせ、温めたフライパンに油を引いてから中火で表は2分、裏は2分ほど焼く。
4. 鍋に片肉と味付けした牛肉・春雨を敷いて、その上に鯛の頭と骨をのせる。そこに鯛チヂミ、卵とイワタケの薄焼き・野菜・ナッツの色を合わせてバランスよく盛ってからダシを入れて強火にかけ、沸騰したら薄口の醤油と塩で味付けをし、もう一度沸騰したらシュンギクを乗せて火を消す。

鍋に片肉、味付けした肉、春雨敷いて鯛チヂミと薄焼き、野菜、ナッツを乗せ、ダシをかけて強火で加熱する

鍋に片肉、味付けした肉、春雨を敷いて鯛チヂミと薄焼き、野菜、ナッツを乗せ、ダシをかけて強火で加熱する



コリアネット ユン・ソジョン記者
写真:韓国伝統飲食研究所
資料:美しい韓国料理100選
翻訳:イム・ユジン
arete@korea.kr