国立現代美術館果川館30週年を記念する特別展「月は、満ち、欠ける」では現代美術代表作560点あまりを鑑賞できる。写真は展示場で真先に来場者を迎えてくれる白南準の『多多益善』(1988)と李升澤の『渋い綱』(2016)
1,003台のテレビで作られた巨大なビデオタワー『多多益善』(1988)が来場客を出迎える。この作品が展示されている空間は紙で編んだ1,500mの綱が一面に張り巡らされている。『多多益善』を再解釈した李升澤(イ・スンテク)の作品『渋い綱』(2016)だ。綱はユートピアとの繋がりを象徴する。両作品が綱でつながり、超自然的な気運を通じて「作家」と宇宙、現世と来世、1つの世界からもう1つの世界へと渡っていくかのようだ。
ここは国立現代美術館の果川(クァチョン)館で開かれる30週年記念特別展「月は、満ち、欠ける」の会場。
国立現代美術館は京畿道(キョンギド)果川館の開館30週年を迎え、作家約300人の作品560点を特別展「月は、満ち、欠ける」で公開した。絵画、彫刻、インスタレーション、メディア、パフォーマンス、写真、工芸、デザイン、建築、書芸などあらゆるジャンルが含まれる大規模な展示だ。展示会のタイトル「月は、満ち、欠ける」には美術作品も万物のように生成し、時間が経つにつれ消滅していくという意味が込められている。
この特別展は「解釈」「循環」「発見」という3つの大きなテーマで構成されている。第1章の「解釈」には「解釈‐拡張」と「解釈-関係」が含まれる。所蔵品を基に、異なる分野で活躍する作家、企画者、研究者がコラボし、作品を巡る多様なコミュニケーション方法を探ることを目的とする。来場客がそれぞれ比較しながら鑑賞できるように作品をペアで紹介し、作品の裏側と製作過程も公開された。代表作としては白南準(ペク・ナムジュン)の『多多益善』と李升澤の『渋い綱』、デイヴィッド・ホッキニー(David Hockney)の写真コラージュ『グランドキャニオンの南端』と黄仁基(ファン・インギ)の『夢遊-夢遊』などを挙げることができる。その他、インスタレーション作家のクリスチャン・ボルタンスキー(Christian Boltanski、仏)が日本軍慰安婦被害者への哀悼の意を込めて制作した『挺身隊』(1997)、ビニールで夢幻的な雰囲気を演出した朴琪元(パク・ギウォン)の『桃源郷』(2016)、空中浮遊している宇宙船を思わせるイ・ブル(LEE Bul)の『脆弱になる意向』(2015-2016)も注目する価値がある。
デイヴィッド・ホッキニーの写真コラージュ『グランドキャニオンの南端』(1982、左)と黄仁基『夢遊-夢遊』(2011)がペアで展示された1階の「関係」展
照明や木箱、黒い布などでできたクリスチャン・ボルタンスキーのインスタレーション作品『挺身隊』(1997)
ビニールで夢幻的な雰囲気を演出した朴琪元の『桃源郷』(2016)
第2章の「循環」は作品の誕生とその後の軌跡、作品の裏面を紹介する「循環-裏面」と「循環-以降」で構成される。朴寿根(パク・スグン)の『祖父と孫』(1960)は昔の懐かしい時代を思わせる。石けんでできた胸像をトイレに置き、手を洗う時に使ってもらうようにした申美璟(シン・ミギョン)の「トイレプロジェクト」などが目を引く。展示履歴を作家の自筆で作品の裏側に書いた朴栖甫(パク・ソボ)の『原形質1-62』、作品の下にレントゲンで撮った女性のヌード画像をつけた呉之湖(オ・ジホ)の油絵『風景』なども興味深い。
申美璟の『トイレプロジェクト』(2014-2016)。石けんで造った石膏像を実際トイレに置いて使えるようにした
第3章「発見」では所蔵品の中で長い間展示されなかった作品に再び注目した。ここでは1990年代後半に製作された高楽範(コ・ナクボム)の『ポートレイトミュージアム-身体から顔へ』(1997-1998)や話しながらブランコに乗る女性の映像を披露した金栄眞(キム・ヨンジン)の『ジャッキーのスウィング』(2006)などの作品に出会える。
高樂範の『ポートレイトミュージアム-身体から顔へ』(1997-1998)
お喋りしながらブランコに乗る女性の映像を披露する金栄眞の『ジャッキーのスウィング』(2006)
1969年、景福宮(キョンボックン)敷地内の旧朝鮮総督府博物館に開館した国立現代美術館はその後徳寿宮(トクスグン)に移され、1986年には現在の京畿道果川市に移転。果川館は美術館の全体所蔵品、計7,840点余りのうち7割を超える5,834点を収集し韓国美術における中心的な役割を果たしてきた。「月は、満ち、欠ける」展は来年2月12日まで続く。
展示に関するより詳しい情報は国立現代美術館のホームページで確認できる。
http://www.mmca.go.kr/ (韓・英・日・中)
コリアネット ユン・ソジョン記者
写真:国立現代美術館
翻訳:イ・ヨンジュ
arete@korea.kr
宇宙船を思わせるイ・ブルの作品『脆弱になる意向』(2015-2016)
昔の懐かしい思い出を呼び起こす朴寿根の『祖父と孫』(1960)
朴栖甫の『原型質1-62』(1962)